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1ドル154円台の米ドル円…今週は「動くなら円高」といえる〈3つの要因〉【国際金融アナリストが考察】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月26日 6時15分

1ドル154円台の米ドル円…今週は「動くなら円高」といえる〈3つの要因〉【国際金融アナリストが考察】

(※画像はイメージです/PIXTA)

1ドル=154円台中心となり、方向感のない展開に終始した先週の「米ドル/円」。今週後半にはアメリカで感謝祭があるため、薄商いとなる可能性がある、とマネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏はいいます。新たな方向性として考えられる3つのテーマとともに、今週の米ドル/円の展開予測をみていきましょう。

11月26日~12月1日の「FX投資戦略」ポイント

・先週の米ドル/円は、154円台を中心に方向感ない展開に終始。

・今週は後半が米感謝祭で薄商い、小動き続く可能性あり。新たな方向性が出るテーマとして、1)日銀の12月追加利上げ観測、2)「トランプ・トレード」のポジション調整、3)ユーロ安・米ドル高が続くか、以上の3つについて考察してみる。

・基本的には米ドル上値重く、動くなら下落方向とのイメージで、今週の予想レンジは151.5~156円。

先週の振り返り=154円台中心の「方向感のない」展開に終始

先週の米ドル/円は、154円台中心の方向感のない展開に終始しました。ウクライナ情勢への懸念拡大や日銀の12月利上げの可能性などを手掛かりに、米ドル安・円高をトライするものの153円割れに至らず、一方でトランプ次期米大統領の選挙公約を織り込む取引、いわゆる「トランプ・トレード」継続を試す形で米ドル高・円安をトライしても156円を超えられず、結果的に新たな方向性を見出すことができなかったということではないでしょうか(図表1参照)。

ではこのような米ドル/円の方向感のない状況は今週変わるのか。後述するように、今週は週後半に米国のサンクスギビングデーなどが予定されていることから、とくに相場が大きく動きそうにならない限り、市場参加者も減る可能性があり、先週に増して小動きになる可能性もあるでしょう。

ということで、米ドル/円は小動きが続くのか、それとも新たな方向性が出るとしたら、その手掛かりは何か。1)日銀の12月追加利上げ観測、2)「トランプ・トレード」のポジション調整、3)ユーロ安・米ドル高が続くか、以上の3つのテーマについて考えてみます。

1)日銀の12月利上げ観測

最近にかけて、日米金利差の「米ドル優位・円劣位」は拡大が一巡、縮小気味になっています(図表2参照)。

これを主導しているのは、米金利の上昇以上に日本の金利上昇の勢いが強いということでしょう(図表3参照)。そんな最近にかけての日本の金利上昇を主導しているのは、短期金利のようです。

日本の金融政策を反映する2年債利回りは、先週にかけてこの間の高値を大きく上回ってきました。これは日銀の12月追加利上げを織り込む動きということでしょう。そしてそんな短期金利上昇に連れる形で、長期金利の10年債利回りも1%を大きく上回ってきました(図表4参照)。

以上のように、日銀追加利上げ観測を受けた日本の金利上昇による日米金利差の米ドル優位・円劣位縮小がさらに進むかどうかは、米ドル/円が一段安に向かう手掛かりの1つとして注目されるといえます。

米ドル/円の動きの手がかりとなる「テーマ」を検証

2)「トランプ・トレード」のポジション調整

トランプ氏の選挙公約を織り込む取引、「トランプ・トレード」は、為替市場においては米ドル買い・円売りポジション拡大をもたらしたとみられています。

ただそんな米ドル買い・円売りポジションは、米ドル高・円安に一巡感が出てきたことを受け、先週にかけて修正の兆しが出てきました。CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋による円ポジションは、売り越し(米ドル買い越し)が19日現在で4.6万枚となり、1週間前の6.4万枚から縮小しました(図表5参照)。

例年、年末にかけてその年のトレード収益を確定するためにポジションの手仕舞いが続く傾向があります。その意味では、このまま「トランプ・トレード」の米ドル買い・円売りポジションの手仕舞いが続くようであれば、米ドル高・円安余地は限られ、米ドル安・円高リスクの拡大が注目されそうです。

3)ユーロ安・米ドル高が続くか

ユーロ/米ドルは先週にかけて続落し、一時1.04米ドルを大きく割り込むなど2022年11月以来の水準まで下落しました。このような対ユーロでの米ドル高の動きがさらに続くようなら、それが対円にも波及、米ドル高・円安が再燃する要因になる可能性もあるでしょう。

ところで、このユーロ安・米ドル高の動きは、基本的には独米金利差の米ドル優位・ユーロ劣位の拡大に沿ったものです(図表6参照)。

そして、この金利差の「ユーロ劣位」の拡大を主導しているのは独金利の低下といえます(図表7参照)。独金利低下の背景は、12月のECB(欧州中央銀行)追加利下げ観測があります。

このようなECB利下げ観測を受けた独金利低下に伴う金利差の「ユーロ劣位」の拡大、それに連れる対ユーロでの米ドル高が続くかどうかは、米ドル高・円安再燃の観点からも注目されそうです。

今週の注目点=週後半は米感謝祭で薄商いも

今週は、28日が米国はサンクスギビングデー(感謝祭)。この日の経済指標の発表などはあるものの、年末に近いタイミングで、祝日と土曜日に挟まれ、個人消費が盛り上がりやすい翌日の「黒字の金曜日」といった意味の「ブラック・フライデー」に続くことで、とくに注目材料がなかった場合は、市場参加者が減ることで薄商い、すなわち小動きになる可能性があります。

そうではなくて、新たな方向感が出るなら、これまで見てきた3つのテーマに注目したいと思います。基本的には1)、2)は米ドル安要因、3)は米ドル高要因との位置付けになります。

個人的には、とくに1)、2)の影響に注目し、米ドル/円は上値が重く、新たな方向性が出るなら下落方向ではないかと考えているため、今週の予想レンジは151~156円で想定します。  

吉田 恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

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