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年金夫婦で「月28万円」もらえるはずが…同い年の夫を亡くした65歳・共働き妻、年金事務所の窓口で告げられた〈衝撃の遺族年金額〉に絶望「こんな仕打ち、ありますか?」【FPの助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月27日 11時15分

年金夫婦で「月28万円」もらえるはずが…同い年の夫を亡くした65歳・共働き妻、年金事務所の窓口で告げられた〈衝撃の遺族年金額〉に絶望「こんな仕打ち、ありますか?」【FPの助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

老後の生活のため、夫婦で70歳まで年金の繰下げ受給をすることを選択した60代の共働き夫婦、金田さん(仮名)。しかし、65歳を迎えた矢先、夫が逝去。悲しみのなか、年金事務所に訪れた妻は、今後受け取れる年金について、思いがけない事実を目の当たりにします。いったい何が起きたのでしょうか? ファイナンシャルプランナーの辻本剛士氏が、遺族年金において見落とされがちな「落とし穴」について解説します。

世帯年収600万円、共働きで生活を営んできた60代夫婦

金田まりさん(仮名・65歳)は夫の誠さん(仮名・65歳)と2人暮らしです。これまで夫婦共働きで生活しており、それぞれが家事や育児を協力し合って過ごしてきました。

夫の誠さんは35歳まで自動車メーカーの修理課で働いていましたが、上司との関係性が上手くいかず退職することになります。その後は個人事業主して独立し、自動車修理工場で働いていました。そんな誠さんの現在の年収は360万円です。

一方、妻のまりさんは、貿易会社の事務職として65歳まで働いてきました。年収は300万円です。個々での収入水準はそれほど高いものとはいえませんが、世帯年収としては十分な金額です。

老後生活を安定したものにするべく、年金の「繰下げ受給」を選択する

そんな金田さん夫婦は今年65歳を迎えることになり、年金の繰下げ受給を選択したのでした。

前回送られてきた「ねんきん定期便」によると、金田さん夫婦の年金見込み額は、まりさんが130万円(老齢基礎年金75万円・老齢厚生年金55万円)、一方の夫は110万円(老齢基礎年金75万円・老齢厚生年金35万円)です。

夫婦で月20万円程の年金を受給できることになりますが、老後生活を安心して送るに少し物足りないと金田さんは感じていたのでした。

また、夫は65歳以降も仕事量を減らしながら働く予定で、妻のほうも現在の職場で年収は250万円まで減額するものの、引き続き勤務できるとのことです。そのため、65歳以降も収入面ではそれほど問題がなさそうだったため、65歳からの年金を70歳まで繰り下げることを決意しました。

ねんきん定期便には、年金を繰り下げると1ヵ月ごとに0.7%将来の年金が増額し、70歳まで繰り下げると42%も年金が増えることが記載されています。つまり、現在の年金見込み額は夫婦月20万円であることから、70歳まで年金繰り下げると28万4,000円まで増額できる計算です。

毎月28万円の収入があれば、老後生活も困窮することなく暮らしていけそうだと金田さん夫婦は考えていました。金田さん夫婦は「もうしばらくの間仕事をがんばって、70歳からはのんびり暮らそう」と誓ったのでした。

繰下げ受給を選択したのも束の間、突然の悲劇が襲う

繰下げ受給を選択したのも束の間、金田さん夫婦に突然の悲劇が訪れます。70歳までお互いに仕事を頑張り、繰下げ受給を目指していた矢先、夫の誠さんが大動脈解離で急死してしまったのです。

つい昨日まで笑顔で会話を交わしていた夫が突然帰らぬ人となり、金田さんは深い悲しみに暮れ、放心状態に陥ります。それでも金田さんは何とか気持ちを奮い立たせ、葬儀を無事に執り行いました。しかし、その後も悲しみのなかで多くの手続きに追われる日々が続きます。

しばらくして、金田さんは相続手続きと並行して、年金事務所を訪れます。遺族年金の手続きや、今後自分が受け取れる年金額について相談するためでした。

年金事務所から告げられた「衝撃の事実」

金田さんは年金事務所に到着後、案内された相談コーナーの担当者に今後の年金受給額について確認します。

「このたび夫が亡くなり、これから遺族年金を受給することになると思います。遺族年金について、今後の具体的な受給額など詳しく教えていただきたいです」

すると、担当職員は答えにくそうな表情を浮かべながらこう告げます。「確認したところ、残念ですが金田さんには遺族年金は支給されません。まり様の具体的な年金受給額は老齢基礎年金が年間75万円、老齢厚生年金が年間55万円の合わせて年間130万円(月換算で約10万8,000円)となります」

金田さんは一瞬耳を疑いました。そして「一体どういうことでしょうか? 夫は長年きちんと年金を納めており、遺族年金を受け取れる条件は満たしているはずです」と反論します。

職員は丁寧に質問に答えます。「確かに金田さんは遺族年金を受け取れる権利はあります。しかし、遺族厚生年金と金田さまの老齢厚生年金の受給権がある場合、老齢厚生年金は全額支給となり、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額の支給が停止されるのです。この場合ですと、金田さんの老齢厚生年金の額が遺族厚生年金よりも多いため、遺族年金は支給されません」

さらに職員は続けます。「一方の遺族基礎年金については、原則、18歳未満の子がいる世帯が対象となるため、そもそも受給の対象外となります」

この事実を知った金田さんは「そんな……遺族年金が受け取れないなんて……」と戸惑いました。

遺族年金の受給権が発生すると繰下げ受給ができない

納得がいかない金田さんですが、現実を受け入れるしかないと思い直し、職員にこう尋ねました。「それでは、繰下げ受給をして年金額を増やすほうが得策ですね」

しかし、職員は慎重にこう答えます。「遺族厚生年金の受給権が発生すると、繰下げ受給を選択することはできなくなります。それがたとえ遺族厚生年金を受給できなかったとしてもです」

その言葉を聞いた金田さんは一瞬あっけにとられ、思わずつぶやきました。「信じられない……遺族年金も受け取れないうえに、繰下げ受給もできないなんて」

まるで八方塞がりのような状況に、金田さんは深くため息をつきます。そして、「これから私は月11万円で生活していかなければならないのね……。40年以上必死に働いてきて、老後にこんな仕打ちが待っているとは思わなかったわ……」と、絶望感に打ちひしがれたのです。

遺族年金の概要

遺族年金は配偶者などの遺族に支給される年金で、主に「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」に分かれます。以下でそれぞれの特徴をみていきます。

遺族基礎年金

遺族基礎年金は、遺族に18歳未満の子どもがいる場合に支給される年金です。遺族年金の受給額は子どもの人数によって異なり、2024年時点の受給額は以下のとおりです。

816,000円+子どもの加算額23万4,800円

子ども2人目:加算額23万4,800円

子ども3人目以降:加算額7万8,300円

例えば、夫が亡くなり18歳未満の子どもが2人いる妻の場合、基本額は81万6,000円、子ども1人目が23万4,800円、子ども2人目が23万4,800円で合計128万5,600円を受給できます。

遺族厚生年金

遺族厚生年金は、厚生年金加入者または加入していた人が亡くなった際に遺族に支給される年金です。

65歳以上で老齢厚生年金の受給権がある人が、配偶者の死亡によって遺族厚生年金を受け取る場合の計算方法は以下の通りです。

・死亡した配偶者の老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4

・「自身の老齢厚生年金の1/2」と「亡くなった配偶者の老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4の額の2/3」の合算額

上記の2つの金額を比較し、どちらか高いほうが遺族厚生年金の支給額となります。

今回の金田さん夫婦に当てはめてみると、夫の老齢厚生年金は33万円、妻の老齢厚生年金は55万円となり、計算式に当てはめてみます。

【死亡した配偶者の老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4】

35万円×3/4=26万2,500円

【「自身の老齢厚生年金の1/2」と「亡くなった配偶者の老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4の額の2/3」】

55万円×1/2+35万円3/4×2/3=45万円

26万2,500円<45万円

よって、45万円が遺族厚生年金の支給額となります。

しかし、実際に金田さんが受給できる遺族厚生年金は「45万円から、妻の老齢厚生年金額55万円を差し引いた金額」です。つまり、差し引きゼロとなるため、妻のまりさんは遺族厚生年金は受給できないことになります。

遺族年金は誰でも受給できる制度ではない

幸いにも、金田さんは65歳以降もこれまでの職場で正社員並みの収入を得ながら働き続けることが可能です。そのため、年金分を老後のために貯蓄する余裕があります。しかし、もしこれが65歳以降に働く場が確保できていない場合や、パートタイムなどで十分な収入が期待できなかった場合は、大変な状況に陥っていたかもしれません。

年金制度は非常に複雑で、配偶者が亡くなった際に「当然遺族年金がもらえる」と勘違いしている人も少なくありません。しかし、今回のように制度の仕組みによる「落とし穴」が存在します。

老後の生活に入る前に、一度ファイナンシャルプランナーなどお金の専門家に相談し、自分の年金制度について適切なアドバイスを受けることをおすすめします。

[参照] ・日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額) ・日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)

辻本 剛士 ファイナンシャルプランナー

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