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普通の葬儀にしておけばよかった…「年金月8万円」「貯金ゼロ」の享年78歳母を家族葬で弔った、シングルマザーの52歳娘。葬儀後に知った「まさかの真実」に涙したワケ【CFPの助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月28日 11時15分

普通の葬儀にしておけばよかった…「年金月8万円」「貯金ゼロ」の享年78歳母を家族葬で弔った、シングルマザーの52歳娘。葬儀後に知った「まさかの真実」に涙したワケ【CFPの助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

以前は、通夜と告別式を行う「一般葬」が主流でしたが、コロナ禍以降、選択する人が増えている「家族葬」。家族葬の明確な定義はありませんが、家族や親類、親しい友人などの少人数で執り行う葬儀であると認知されています。一般葬と比べて費用を抑えられる点も需要増の要因かもしれません。ところが、あとから訃報を知った人から「なぜ、知らせてくれなかったのか」と責められてしまうケースも少なからずあるといいます。現代の葬儀のあり方について、ファイナンシャルプランナーの山﨑裕佳子氏が事例をもとに解説します。

アフターコロナの葬儀の形

葬儀の形式に変化が生じているようです。葬儀は、主に一般葬、家族葬、一日葬、直葬と4つに分類できます。コロナ以前の葬儀は、通夜、告別式のある一般葬が主流でしたが、徐々に家族葬を選択する人が増えていき、コロナ禍ではその割合が逆転しました。以降、家族葬が主流となっています。

株式会社鎌倉新書「第6回お葬式に関する全国調査」によると直近では50%の人が「家族葬」を選択しています。次いで「一般葬」が30%、告別式のみ行う「一日葬」、葬儀を行わない「直葬・火葬式」と続きます。(調査対象:2022年3月~2024年3月に喪主を経験したことのある日本全国40歳以上の男女、有効回答数2,000件)

[図表1]は一般葬と家族葬の割合の推移を示しています。コロナ前までは、一般葬の割合が家族葬を上回っていました。ところが、人同士の接触を避けなければならなくなったコロナ禍で割合は完全に逆転し、その傾向は現在も続いています。

確かに、最近は著名人が亡くなった際にも一般葬ではなく、家族葬を選択することが増えているようです。

自分事として考えた場合でも、葬儀に参列する機会は減っていると感じる人も多いのではないでしょうか。

ケイコさん(仮名:54歳)が家族葬を選択した理由

和田ケイコさん(仮名:54歳)は昨年、母親のトシエさん(享年78歳)を亡くしました。

亡くなった日は、トシエさんの月1回の通院日でした。通院には毎回、ケイコさんが有給を取って付き添っていました。亡くなる前日も電話で翌日の時間について打ち合わせをしたばかりでした。ケイコさんが翌日予定通り実家に行くと、トシエさんが居間で倒れていたそうです。心臓発作という突然のお別れとなってしまいました。

母のトシエさんは、自身が50歳のときに夫と死別して以来一人暮らしをしていました。子どもは娘のケイコさんだけです。

夫が亡くなるまでは、夫婦で地元の商店街で精肉店を営んでいました。「コロッケが美味しい」と評判の人気店です。全盛期は多くのお客さんでにぎわっていたそうですが、近くに大型スーパーが建つと人の流れが変わってしまいました。商店街は徐々に活気が失われ、シャッターを閉めたままの店舗が目立つようになってしまったといいます。

先行きに不安を感じ始めたころ、トシエさんの夫が病に倒れてしまいます。数ヵ月の闘病の末、他界してしまいます。寂れつつある商店街でトシエさん一人で店を切り盛りすることは難しく、店を閉める決心をします。

精肉店を閉店したあと、トシエさんは近所のスーパーの総菜部門で働き始めます。しかし、持病の関節リウマチが悪化してしまったため、やむなく60歳で仕事を辞めることに。それ以後は月8万円の年金をもらいながら、店舗兼自宅で慎ましく暮らしてきました。

負債はありませんが、貯金といえるほどの蓄えもなかったようです。

母の葬儀は、必然的に一人っ子のケイコさんが取り仕切ることになります。

実は、ケイコさん、大学4年生と高校3年生の娘2人を持つ、シングルマザーです。ケイコさんの収入をあてにして浪費を続ける前夫には2年前に三行半を突きつけました。

2人の娘はケイコさんが引き取りました。ケイコさんは、短大卒業以来、正社員として働いており、現在の年収は約500万円です。しかし、住宅ローンがあり、娘たちの教育費などを考えると決して余裕のある生活ではありません。

母の死が突然であったため、ケイコさんは気持ちの整理もつかないまま葬儀の準備をしなければなりませんでした。また、葬儀の費用面も気がかりでした。

葬儀にかかる費用は、葬儀の規模が大きくなるほど高額になるのが一般的です。一般葬が最も高額になりやすく、次いで家族葬、一日葬、直葬と続きます。[図表2]

ケイコさんは生前の母の言葉を思い出しました。

「死んだ人間にお金をかけるのはもったいないよ。私の葬式は簡素でいい。戒名もいらないから……」というものでした。

そこでケイコさんは、参列者は自分と娘2人、ケイコさんが知っている母の友人3人、同じ商店街で懇意にしていた人が4~5人程度と見積もりました。実は、母には10年以上連絡を取っていない妹がいることを知っていましたが、母とは昔からウマが合わず、大人になってからは疎遠になっていたことを知っていたため、連絡先がわからないのをいいことに積極的に連絡を取ることをしなかったそうです。

突然のお別れとなり、葬儀の種類の違いなども知らなかったケイコさんですが、葬儀会社に相談した結果、参列者の人数や費用面を勘案して家族葬を執り行うことにしたそうです。

実際は、遠方に住んでいたり、介護施設に入居していたりで参列できない人もいたため、参列者は6人でした。

親の意向を踏まえ、葬儀は簡素にしたつもりだったが……

家族葬にかかった費用の60万円は、ケイコさんが定期預金を取り崩して負担しました。

同じく「第6回 お葬式に関する全国調査」のデータによると、葬儀費用の平均額は118.5万円ということですので、出費はかなり抑えられたといえるでしょう。しかし、今のケイコさんにとっては痛い出費であったことは間違いありません。一方で、母の最期を近親者のみで温かく見送ることができたことには安堵もしていました。

ところが、葬儀から半年が経った頃、母の友人経由で訃報を聞きつけた叔母から、突然、連絡が入ります。怒り心頭の様子です。

叔母:「姉さんが亡くなったって? なんで妹の私に知らせてくれないの?」

ケイコさん:「すみません。連絡先がわからなかったもので……」

叔母:「そんな言い訳ある? いくら折り合いが悪かったとはいえ、実の姉妹なのよ。最後くらい知らせるのが道理じゃないの?」

ケイコさんは連絡先を調べる努力を怠ったことを反省し、叔母に謝罪したそうですが、すぐには納得してもらえなかったといいます。

実際、人が亡くなると葬儀以外にもさまざまな手続きがあり、初めて経験することばかりであることから、すべてのことを完璧に行うのは難しいといえます。ケイコさんとしては、そのあたりの事情も汲んでほしいとも思いましたが、相手に通じる様子はありませんでした。

ケイコさんの後悔

ケイコさんの一つ目の後悔は、いくら疎遠になっていたとはいえ、叔母に連絡する方法を探すべきだったこと。そして、二つ目の後悔は、母が生前「葬儀保険」に加入していたことを知らなかったことです。それは、母の亡き後、実家の整理をしていた時に判明しました。母は自分の葬儀費用として100万円が支払われる保険に加入していたのです。葬儀費用は直接葬儀会社に支払われるという特約付きだったため、知っていればケイコさんの定期預金を取り崩す必要はありませんでした。

同時にエンディングノートも発見。そこには、自分が亡くなったあとに知らせてほしい人がリスト化されており、叔母の連絡先と、ケイコさんの知らない母の友人数名が記されていました。

「お母さん、葬式は簡単でいい、って言ってたのに、ちゃんとお金を準備してたんだね……。本当は家族葬じゃなくて、もっとたくさんの人に見送られたかったのかな……。悪いことしちゃったな。ごめんね……」と後悔の念に駆られ、涙するケイコさん。

後日、その友人に事後連絡という形で母の死を知らせたところ、やはり、「葬儀に参列したかった」といわれてしまったそうです。

情報を共有しておこう

今回、ケイコさんは母を家族葬で見送りました。それ自体に後悔はありませんが、叔母に連絡しなかったことでしこりが残ってしまいました。母は「エンディングノート」を残していましたが、娘のケイコさんがその事実を知らなかったため、母の意向に完全に沿うことができませんでした。葬儀保険のことも事前に知っていれば、費用の心配をすることなくスムーズに葬儀が行えたでしょう。

納得のできる葬儀とするためには普段から、親の思いや子の考えを共有しておくことがポイントとなりそうです。

葬儀は亡くなった人のためのものであると同時に、残された人たちのための儀式でもあるのです。

【参考】 ・「第6回 お葬式に関する全国調査」(株式会社鎌倉新書「いい葬儀」)

山﨑 裕佳子 ファイナンシャル・プランナー

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