丘の上にある“ぽつんと一軒家”の住人はどんな人?…「上層階に住む人」の特徴【土地家屋調査士の実体験】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年12月17日 11時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
たまーに見かける“ぽつんと一軒家”……近所付き合いも難しく町までも遠い、一見すると不便にも思えるその場所には、はたしてどんな人が住んでいるのでしょうか? 土地家屋調査士で心理カウンセラーの資格を持つ平田真義氏が「住環境と性格の意外な関係」について、実体験をもとに紹介します。同氏の著書『住んでる人の性格は家と土地が教えてくれる』(自由国民社)より詳しくみていきましょう。
崖の上に住む“絡みづらい”お隣さん
丘の上の一軒家というと、なんだかちょっとロマンを感じますが、その実態はどうなのでしょうか。
私は基本的に都内の仕事を中心に受けているのですが、その仕事は珍しく地方でのものでした。
登記簿や公図で依頼者さんの土地を事前に確認したのですが、そこは30坪ほどの住宅地。近隣も3軒ほどしかなかったので、「それほど大変ではなさそうだな」と高をくくっていたのです。
ところが、現地に行ってみてビックリ! 依頼者さんのお隣の3軒のうちの1軒がかなり特殊でした。依頼者の土地の裏手にそびえたつ小高い崖の上に、ぽつんと1軒だけ建っているのです。
崖と言っても、壁面が崩れないよう、擁壁というコンクリートの構造物で覆われています。
その丘の上の1軒を見上げながら、思わず「これでも隣地かあ……」とつぶやくとともに、悪い予感を覚えたのでした。
依頼者さんが同行してくださったので、崖の上の家以外の2軒のお隣さんは、問題なくご挨拶を終えることができました。
この調子で、次は崖の上の家にご挨拶をとなったとき、「では、私はこれで」と、依頼者さんがそそくさと退散してしまったのです。
独り取り残され、思わず「えーっ?」と動揺が口に出てしまいました。そして、「あの嫌な予感は、勘違いではなかったようだな」と思ったのです。
崖の上の家は、小高い丘のてっぺんに建っています。まずは坂道を数分歩いて崖の麓まで行かなければいけません。「この上に住んでいる人はどれだけ健脚なんだろう」などと思いながら、汗を拭き拭き、はるか上にそびえるかなり築年数が経っていそうなお宅を見上げます。
ようやく丘の上まで登りきり、インターフォンを押すと、お年を召した女性の声ですぐに返答がありました。家主である夫を呼ぶと言い、一度インターフォンは切れました。
しばらくして、70歳くらいの男性が窓から顔をのぞかせます。
「なんだよ、日曜日にいきなり訪ねて来て! 隣の測量? 俺ん家には関係ないだろ、ああん?」
不機嫌を丸出しにしたような言葉と態度に、思わず足がすくみます。
偏屈な住人が“上機嫌”になったまさかの事実
この仕事をしてきて、突然訪問したお隣さんにこういう対応をされることは珍しくないのですが、機嫌が悪い人を相手にしても、このまま追い出されては後々困ります。
勇気を奮い起こしてこう言いました。
「お休みのところ申し訳ありません。お宅と依頼者の〇〇様の土地とがこのように接しているので、どうしても立ち会っていただかないといけないのです」と境界線が接していることを、公図を見せながら必死に伝えました。
「面倒くせえなぁ!」
「はい、ご面倒をおかけしますが、後日、この丘の下までご足労いただきたいのです」
「なんだと? お前らがここまで上がって来いよ」
公図によれば、崖の麓から上はすべてがこの家の土地となっています。
そのことを伝え、土地の境界線が崖の下にあることを伝えると、お隣さんの態度が少し軟化しました。
「えっ、この擁壁も俺の土地なの?」
「はい、そうです」
「ふーん」
お隣さんは少し機嫌がよくなった模様。どうやら、崖が丸ごとご自身の土地だとはご存じなかったようです。
「そんなに大きな土地が自分のものだと知らないなんて有り得るのか?」と思われるかもしれませんが、実は同じところに長らくお住まいの家でも、境界をまったくご存じない方はたくさんいます。
お隣さん、気分をよくしたのか、境界の立会いをすることに納得してもらえました。
依頼者さんのもとに戻り、崖の上のお隣さんにも立会いをしてもらう了承を取りつけたこと、また、休日に訪れてしまったせいか、お叱りを受けたことをお伝えしました。ご近所付き合いに支障が出てはいけないので念のため事の次第を伝えたのですが、「ああ、あの人はそういう人なんですよ」と苦笑いしていました。
聞くところによると、崖の上の住人は偏屈で有名な方らしく、怒鳴り散らされたご近所さんは数知れずだそう。依頼者さんですら顔を合わせたくなくて、今回の挨拶にも同行しなかったのでした。
住むと性格が変わる?…“高いところ”に住む人の共通点
古今東西、権力者が住む建物は高台にあるイメージがありませんか。
高い場所のほうが守りやすく攻めにくいという、防衛上のメリットもあるのかもしれません。
それだけでなく、一般の人々の生活を見下ろすことで、自分が特別な存在であり、一般人とは住む世界が違うことを確認し、優越感を満たしたい気持ちもあったのかもしれません。
では、威張っている人が高いところに住むようになるのか、高いところに住んでいるから威張るようになるのか、どちらだと思いますか?
マイアミ大学の研究チームが発表した研究によると、建物の「上層階にいる人ほど、意識のなかで権力をもっている感覚が強くなる傾向」があるそうです(2018年5月25日産経新聞)。
今回の崖の上に住む男性が元から威張り屋だったのかはわかりません。
でも、私は、住環境が少なからず住んでいる人の性格に影響を与えているのではないかと思いました。
周りに家もなく、近所との交流も強制的に断たれ、いわば夫婦2人で孤立した状態です。
崖の上から降りて立会いに臨んでくれたときの男性は、まったく威張ったところもなく、素朴なお人柄を感じられました。
崖の上に住むのは見晴らしもよく、若くて健脚なうちはよいのではないかと思います。お年を召していくにつれて坂の上り下りは大変になり、自然と上り下りする回数も減って、近隣に住む人たちとだんだん疎遠になってしまうのではないかと、なんだか心配になってしまいます。
できれば、お身体の不自由がないお元気なうちに、「地上」に降りて生活してほしいと願ってやみません。
擁壁のある土地は危険!?
今回ご紹介したような崖の上にある物件は、擁壁の危険性も見逃せません。
傾斜地や崖地のような高低差のある宅地には擁壁が必ずありますが、擁壁の耐用年数はおおよそ20年から50年と言われています。
実際、2020年に擁壁の崩壊により近くを歩いていた学生が土砂に巻き込まれて亡くなる事故が発生しています。
擁壁の持ち主が自分のものであると把握していない場合があることも、今回のケースで知っていただけたと思います。ですから、適切に管理できているかは確認しようがありません。
いつか崩れることがあると考えると、擁壁を含んだ土地や、擁壁の真下など、すぐ近くにはできれば住まないほうがよさそうですね。
国土交通省のホームページには、「我が家の擁壁チェックシート(案)」というページが掲載されています。現在、擁壁のある土地に住んでいる場合や、擁壁近くに住んでいる場合は、ぜひ一度このページで擁壁のおおまかな危険度を確認することをおすすめします。
平田 真義 土地家屋調査士
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