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母さんが生きていた頃はよかったな…〈50歳独身息子〉と2人っきりになった〈74歳男性〉が思い出の詰まった「5LDKの我が家」を手放す決心をしたワケ【相続の専門家が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年12月3日 10時15分

母さんが生きていた頃はよかったな…〈50歳独身息子〉と2人っきりになった〈74歳男性〉が思い出の詰まった「5LDKの我が家」を手放す決心をしたワケ【相続の専門家が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

妻が亡くなって、50歳独身の息子と2人暮らしとなり、生活に不便を感じていた74歳の和彦さん。自宅も、和彦さんの両親、夫婦、子どもの6人で住んでいた時代に建て替えたもので、築40年は過ぎており、維持をするのに苦労していました。本記事では、戸建てからシニアマンションへの住み替えという選択肢について、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が解説します。

独身の息子と2人暮らしに

74歳の和彦さんは、10年前に妻が亡くなり、50歳の独身の息子と2人暮らしとなりました。娘は結婚して孫にも恵まれ、家族4人で家を買って生活しています。

妻が元気なころは、和彦さんも息子も仕事が忙しく家のことは妻に任せきりでした。和彦さん夫婦は、夫は外で仕事、妻は専業主婦で家を守るのが普通のことだったと言います。

和彦さんが定年になり、リタイアして時間ができたら、夫婦で旅行に行こうと話をしていた矢先、妻は脳梗塞で倒れてあっという間に亡くなってしまったのでした。

広い自宅の維持が大変

和彦さんの自宅の土地は110坪あり、半分が庭です。建物は50坪あり、5LDK。和彦さんの両親、夫婦、子どもの6人で住んでいた時代に建て替えたもので、築40年は過ぎました。両親が亡くなり、長女が嫁いで、3人暮らしの時期が長かったのですが、妻が家も、庭も丁寧に掃除をしてくれていましたので、いつもきれいな自宅が保てていました。

ところが、妻が急逝してから、和彦さん親子は日々、掃除をして維持してくれていた妻のありがたさを実感したといいます。また、掃除だけでなく、日々の食事の用意にも頭を悩ませているそうです。荒れ果てた庭を前に人知れず涙を流す日々がしばらく続いていました。

相続対策でまずできることは「自宅の住替え」

和彦さんが今回相談に来られたのは、これからの相続についての悩みからでした。自宅の他に貸宅地もあり、預貯金も合わせると基礎控除4,200万円は軽く超え、1億円以上の財産になります。同居の特例を生かしても、まだ相続税がかかる範囲です。

そこで、私が最初にアドバイスをしたのは、広い自宅を売却して、マンションに住み替えるという選択です。土地が小さくなることで評価がうんと下がります。分譲マンションは購入する価格(時価)の30%程度の評価に変わります。自宅の土地の評価は5,000万円程ありますので、マンションに住み替えることによって1,500万円ほどの評価の不動産に変わるのです。

自宅の売却の査定額も出して、売却することをおすすめしました。

シニアタウンへの住替えはどうか?

それから半年たち、和彦さんから再び相談がありました。息子と相談した結果、いろいろなサービスが利用できる「シニアタウン」に住み替えようと思うがどう思うか、という内容のものでした。

分譲マンションで、50歳の息子と同居することも問題なく、また、食事を作らなくても利用できるサービスや、掃除を依頼できるなど、楽に生活できそうだといいます。

70代の和彦さんですが、健康状態は問題なく、いまから介護施設や老人ホームに入る状況ではないため、シニアマンションという選択肢はぴったりではないかとすすめました。これでいよいよ和彦さんも、自宅の住み替えを決断できたのでした。

シニアタウンとは?

シニアタウンとは、アメリカのモデルケースを日本に導入したもので、「コミュニティ施設」を備えた「分譲マンション」が基本形です。

もう少し詳しく説明すると、高齢者が健康なうちに入居し、終身で過ごすことが可能な生活共同体をCCRC(Continuing Care Retirement Community)と言い、充実した生活を送ることで健康を維持する「アクティブシニアタウン」と言い換えることもできます。この集合住宅の考え方は、1970年代のアメリカで始まりました。

その最大の特徴は、入居者がすべてシニアであり、なおかつ元気で充実した生活をしていること。健康な食事、充実したアクティビティと、趣味仲間がいるコミュニティだからこそ可能な、理想的な共同体だとされています。

老人ホームとの大きな違いは、入居時の状況です。一般的に老人ホームは健康に不安を抱えた時に入居する傾向がありますが、CCRCは健康には問題のない方々がセカンドライフを楽しむために入居します。

健康ではあるけれど、一人ではできないことを楽しみたい、栄養バランスのとれた食事や仲間との生活に刺激を受け、この健康をもっと長く維持していきたい。そういった要望に応えることができるのが、CCRCです。アメリカでは既に2,000を超える施設がほぼ各州にあるなど広く根付いた考え方であり、多くの人たちがCCRCでシニアライフを謳歌しています。

戸建てからマンションに住み替えるメリットは?

妻を亡くし、独身の息子と二人暮らしをしている70代男性が、ケア付きマンションに住み替えるメリットはいくつか考えられます。主なものをあげてみましょう。

1. 健康と介護のサポート

年齢とともに、健康や日常生活の維持が難しくなるでしょう。ケア付きマンションでは、介護サービスや医療サポートが提供されるため、安心して生活を続けることができ、その点が大きな魅力となります。特に、妻を亡くした後は、精神的・身体的にサポートが必要になる場合もあります。

2. 息子の負担軽減

独身の息子と二人暮らしだと、息子が父親の介護やサポートを担う負担が大きくなりがちです。ケア付きマンションに住むことで、息子の負担を軽減し、父親もプロのケアを受けられる環境に移行できます。

3. 安心できる生活環境

高齢になると、家事や掃除、買い物などの日常的なタスクが難しくなることがあります。ケア付きマンションでは、これらの日常のサポートを受けられるため、安全かつ快適に生活を送ることができます。

4. 孤立防止と社会的交流

高齢者が一人暮らしや少人数での生活を続けると、社会的なつながりが減少し、孤立しやすくなります。ケア付きマンションでは、他の住人やスタッフとの交流の機会があり、孤独感を軽減し、精神的な安定を保つことができます。

5. 住環境のバリアフリー化

高齢になると、階段や段差などが事故やけがの原因になる可能性があります。ケア付きマンションはバリアフリー設計がされていることが多く、安全に生活を送ることができます。

高齢者に、戸建てよりマンションが好まれる理由

1. バリアフリー設計

高齢者にとって段差や階段の昇り降りは大きな負担になります。マンションはエレベーターが完備されていることが多く、フロア全体がバリアフリー設計になっているため、移動が安全で快適です。特に一戸建てでは階段が多いことが一般的ですが、マンションでは階段の利用を避けられる点が便利です。

2. メンテナンスの手間が少ない

一戸建て住宅では、庭の手入れや建物の修繕、掃除などのメンテナンスが必要ですが、マンションでは共用部分の管理やメンテナンスは管理会社が行います。高齢になると体力や時間に限りがあるため、自分で手入れをする手間が減るのは大きな利点です。

3. セキュリティの高さ

多くのマンションには、オートロックや監視カメラ、管理人の常駐といったセキュリティ対策が整っています。一人暮らしや夫婦のみの世帯にとって、防犯面での安心感が得られる点が重要です。一戸建てよりも侵入が難しく、セキュリティ面での安心が得られます。

4. 利便性の高い立地

マンションは多くの場合、駅やスーパー、病院、公共施設などの近くに建てられており、生活に必要な施設へのアクセスが良好です。高齢者にとって、買い物や病院通いが負担にならない距離にあることは大きな利点です。一方、一戸建ては郊外に位置することが多く、車がないと不便な場合があります。

5. 防災面の安心

近年のマンションは耐震性に優れており、地震や台風などの自然災害に対する対策が強化されています。特に高層マンションでは浸水のリスクが低く、災害時の安全性が高い場合があります。さらに、避難ルートが確保されていることや、最新の防災設備が整っているマンションも多いです。

6. ゴミ出しの便利さ

マンションでは多くの場合、24時間ゴミを出せる専用のゴミ捨て場が設置されています。高齢者にとって、特定の曜日や時間にゴミを出す必要がないことは非常に便利です。一戸建てではゴミ捨て場までの距離が遠かったり、決まった時間に出す必要があったりすることが負担になることがあります。

7. 生活支援サービス

一部のマンションでは、高齢者向けに生活支援サービスが提供されていることがあります。これには、日常生活のサポートや、緊急時の対応が含まれており、万が一の時にすぐに対応してもらえる安心感があります。

まとめ

和彦さんはタイミングよく、土地の売却代金の半分程度の価格でシニアタウンを購入でき、住み替えをされました。相続税も評価が下がって、4分の1程度になりました。さらに、日常生活における食事の準備や掃除など、労力がかかることもなくなり、快適な生活ができているといいます。

これからは、同じ自宅に固執して住み続けるのではなく、状況に合わせて住替えしていく時代になるでしょう。

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

曽根 惠子 株式会社夢相続代表取締役 公認不動産コンサルティングマスター 相続対策専門士

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp)認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

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