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結婚生活40年の69歳夫、心筋梗塞で急逝…3年後、70歳になった妻が「遺族年金の手続き」で訪れた年金事務所で「2度悔しい」と地団太を踏んだワケ

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年12月3日 8時15分

結婚生活40年の69歳夫、心筋梗塞で急逝…3年後、70歳になった妻が「遺族年金の手続き」で訪れた年金事務所で「2度悔しい」と地団太を踏んだワケ

写真はイメージです/PIXTA

複雑で難しいイメージの強い「公的年金」。そのためか、一家の大黒柱が亡くなった際に、遺族が受け取れる公的な保障、遺族年金でさえ、その認知度は8割弱にとどまります。さらに細かなルールまで知っているか、といえば、多くの人はNO。ただ、そんな年金のルール、老後の生活設計にまで影響を及ぼすものもあるので、やはりしっかりと知っておきたいものです。

遺族年金の認知度は8割弱…「自分は受け取れるか」「家族は受け取れるか」を知りたい

内閣府『生活設計と年金に関する世論調査(令和5年11月調査)』によると、遺族年金の仕組みがあることの認知度は77.3%。多くの人が遺族年金を認識はしていますが、それでも全国民が知っている、とはいえない状況です。

また年齢別にみていくと、最も高いのが老齢年金を受け取る人も多くなる60代で87.0%。50代、70代で8割を超え、30~40代では70%代となっています。

また遺族年金の仕組みを知っている人に、遺族年金の何を知りたいか、を尋ねたところ、トップは「遺族の属性・保険料納付実績等受給のための要件」で6割強。「万一のときに、自分は遺族年金をもらえるのか」「自分に万一のことがあったら家族は遺族年金をもらえるのか」、気になるところです。

【遺族年金で何を知りたいですか?】

1位「遺族の属性・保険料納付実績等受給のための要件」…63.6%

2位「遺族年金の額や計算方法、シミュレーションの仕方」…39.7%

3位「遺族年金を請求する方法」…39.6%

4位「支給年数は遺族の年齢に応じてどう変わるのか」…34.8%

5位「遺族の属性や人数に応じて額に違いがあること」…30.3%

6位「遺族年金における税金や社会保険料の取扱い」…30.0%

7位「遺族年金の相談窓口」…28.6%

遺族年金には国民年金に由来する遺族基礎年金と、厚生年金に由来する遺族厚生年金があり、遺族基礎年金には子の要件があり、子がいない場合は受け取りることができません。いわば、子育て世代に向けた公的な保障と考えると分かりやすいでしょうか。一方、遺族厚生年金には子の要件はなく、より受け取ることができる人は、より幅広くなっています。

遺族年金の請求に関しては、家族が亡くなってから5年以内。これは年金の受給権に、権利が発生してから5年間という消滅時効があるから。ただやむを得ない事情で、時効完成前に請求をすることができなかった場合には、その理由を書面で申し立てることで時効消滅後の請求が認められるケースもあります。

年金の繰下げ中に最愛の夫が急死…3年後に仕事を辞め、年金の請求を行ったが…

年金にはいろいろなルールがあり、それにより年金額が増減したり、受け取ることができなかったりします。加藤由美子さん(仮名・70歳)も、ルールにより悔しい思いをしたというひとり。

さかのぼること3年前。夫・清彦さん(仮名・享年69歳)を亡くしました。結婚40周年の記念年でしたが、清彦さんは心筋梗塞により帰らぬ人に。

遺族年金の請求を行ったのは、夫の急逝から3年後のこと。すぐに請求しなかったのは、その時点で由美子さんは働いていて、生活費に困っていなかったことが大きいといいます。

――当時、67歳で、年金の繰下げ中。月20万円ほどの給与があり、ひとりで生きていくのには十分だったので、年金の請求関係の手続きは、仕事を辞めたときで十分と考えていました。

結局、由美子さんは70歳まで働き、仕事を辞めたタイミングで、自身の老齢年金の請求と遺族年金の請求、2つを一緒にしようと年金事務所を訪れたのでした。そこで衝撃的なことが起きたといいます。

由美子さん、65歳から年金を受け取っていれば、月14万円ほど、受け取ることができました。ただ月20万円ほどの給与があったので、年金月額を増やしたいと、繰下げ受給を選んでいました。繰下げ受給は、原則、65歳からの老齢年金の受け取りを、66~75歳に遅らせる制度。1ヵ月年金の受け取りを遅らせるごとに0.7%増額となり、5年で42%、10年で84%も年金が増えます。由美子、年金は14万円→19.8万円に増えている……はずでした。しかしそこで知ったのは、遺族年金の受給権が発生した時点で、年金の繰下げはストップしていたということ。つまり、年金の繰下げ効果は5年分ではなく2年分だけ。14万円→16.3万円と、思っていたよりも3万円も少ないということ。

さらに驚いたことはもうひとつ。遺族厚生年金が9.6万円もらえると思っていたのが、遺族厚生年金は亡くなった夫の4分の3と聞いていましたが、自身の老齢厚生年金は全額もらうことができ、遺族厚生年金はその分は支給停止。差額だけ受け取れるというもの。

そもそも老齢厚生年金を受け取る権利のある人の場合、配偶者が亡くなったことで遺族厚生年金を受け取るときは、「①亡くなった人の老齢厚生年金の4分の3」と、「②亡くなった人の老齢厚生年金の2分の1と、自身の老齢厚生年金の2分の1の合計」を比べて、高いほうが遺族年金額になります。清彦さんの老齢厚生年金は12万円。結果、遺族厚生年金は9.6万円となります。

65歳以上の遺族厚生年金の受給権者が、自身の老齢厚生年金の受給権がある場合、老齢厚生年金は全額支給となり、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額の支給が停止となります。由美子さんの場合、老齢厚生年金7.2万円は全額支給となり、受け取れる遺族厚生年金は9.6万円-7.2万円=2.4万円。想定のわずか4分の1しかもらえないのです。

――そんなバカな

年金事務所で思わず大きな声を出してしまったといいます。しかし担当者から「ルールなので、申し訳ありません」と冷静なひとこと。

2度の「そんなバカな」と叫んでしまうような苦々しい思いをした由美子さん。夫が亡くなった時点で、年金の繰下げは止まること、遺族厚生年金は自身の老齢厚生年金分は支給停止になることを知っておけば、老後の生活設計を間違えることもなかったのにと、いまでも少し怒りを覚えるといいます。

[参考資料]

内閣府『生活設計と年金に関する世論調査(令和5年11月調査)』

日本年金機構『年金の繰下げ受給』

日本年金機構『遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)』

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