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会社の「本店所在地」はどう決める?信用力や運営効率に直結する重要事項【司法書士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年12月12日 8時10分

会社の「本店所在地」はどう決める?信用力や運営効率に直結する重要事項【司法書士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

会社を設立するとき、定款に必ず記載しなければならない項目の一つが「本店所在地」です。本店所在地は単なる住所ではなく、会社の信用力や運営効率、そして今後の成長に直結する重要な要素となります。本店所在地の役割や決定時のポイント、注意すべき事項について、加陽麻里布氏(司法書士法人永田町事務所 代表)が解説します。

本店所在地とは?

本店所在地は、会社の「主たる事務所」、つまり法的な拠点を指します。この所在地は定款に明記され、会社の基本情報として登記事項証明書(公的記録)に登録されます。会社の活動や管理において中心的な役割を果たします。

【本店所在地の主な役割】

1.管轄法務局を決定する

商業登記を担当する法務局は本店所在地によって決まります。

2.税務や行政の基準を設定する

法人税や消費税などの申告先である税務署も、本店所在地を基準に決まります。また、社会保険や雇用保険の管轄も影響を受けます。

3.取引先や金融機関に与える印象を左右する

本店所在地は、取引先や金融機関に与える信頼感にも影響します。例えば、都心の住所はブランド力を高める一方で、地方の住所はコストを抑えることに適しています。

4.公的な企業情報として公開される

本店所在地は、登記情報や取引情報として広く公開されます。そのため、信用力やセキュリティを考慮した選定が必要です。

本店所在地の記載方法

本店所在地の定款記載には、具体性に応じた柔軟な選択肢があります。

1.市区町村までの記載

例)東京都渋谷区

市区町村までの記載に留めることで、詳細な住所(番地や建物名)をあとから確定することができます。将来的に同じ区内で移転する場合は手続きが容易になり、定款変更を避けられるため、定款には最小行政区画まで記載します。

2.詳細な住所まで記載

例)東京都渋谷区〇〇町1丁目1-1 △△ビル3階

詳細な住所を記載する場合は、オフィスの所在地が確定している場合に向いています。本店移転時には同区内であっても定款変更が必要になります。

柔軟性を重視するなら「市区町村まで」の記載がおすすめ

設立直後は、事業計画やオフィスの契約が流動的である場合が多いため、まずは市区町村までの記載にしておくのがよいでしょう。また、設立企画段階においても、まずは市区町村までの記載にしておき、詳細な住所は登記申請までに確定するのが安全です。

本店所在地を選定する際の注意点

1.管轄法務局や行政機関の利便性

本店所在地を選ぶと、その地域を担当する法務局や税務署が決定します。法務局や行政機関へのアクセスが悪い場合、手続きに時間とコストがかかる可能性があります。

2.取引先や金融機関への影響

本店所在地は会社の信用力に直結します。例えば、都心の住所はブランド力を高める一方で、地方の住所は「コスト重視」と見られることがあります。また、バーチャルオフィスを利用する場合、一部の金融機関では審査時に不利になる可能性があるため、注意が必要です。

3.プライバシーやセキュリティ

初期費用を抑えるために自宅を本店所在地とするケースもあります。ただし、自宅住所が登記情報として公開される点に留意し、プライバシーやセキュリティへの配慮が必要になります。また、賃貸の場合は、登記(商用)に住所を使用することが可能か確認が必要です。

4.地域特性や税制優遇の活用

地域によっては、法人税の優遇措置や創業助成金が利用できる場合があります。事前に自治体の制度を調査し、本店所在地選定の参考にすることをおすすめします。

本店所在地の選択肢 ~具体例と実務ポイント

【自宅を本店所在地とする場合】

メリット:

・初期費用を抑えられる

・設立手続きが簡便

デメリット:

・プライバシーが公開される

・信用面で課題を感じる場合がある

・社員採用が難しくなる

【レンタルオフィスやバーチャルオフィスを活用する場合】

メリット:

・都心部の住所を取得可能

・コストを抑えつつ信頼感を得られる

デメリット:

・一部の金融機関や取引先で審査が厳しくなる場合がある

【オフィスを借りる場合】

メリット:

・信頼性が高く、実務にも適した環境

・社員の働きやすさを確保できる

デメリット:

・初期コストや月額賃料が高額になる

本店所在地に関するよくある質問

Q1:本店所在地はあとから変更できる?

⇒A.可能です。ただし、定款に詳細な住所を記載している場合、定款変更手続きが必要となります。定款に最小行政区画まで記載している場合であっても、区外へ移転する場合、定款変更手続きが必要となります。

Q2:営業所と本店所在地が異なっても問題ない?

⇒A.問題ありません。本店所在地は法的拠点であり、実際の営業活動は他の住所で行っても構いません。ただし、営業所の所在地は必要に応じて追加で登録する必要があります。

本店所在地は戦略的に決定すべし

本店所在地の決定は、会社の信用力や運営効率に直結する重要な決定事項です。選定の際は、信用、コスト、利便性、柔軟性のバランスを考慮しましょう。

〈選定時のポイント〉

1.初期費用や運営コストを抑える方法(自宅やレンタルオフィスなど)を検討。

2.将来的な移転や拡張に対応できる柔軟性を確保。

3.行政機関や法務局のアクセス、税制優遇措置を確認。

4.定款の記載範囲を市区町村までにすることで移転時の負担を軽減。

会社の方向性によっても最適な選択は異なると思います。本店所在地の選定は、設立後の運営を見据えて決定しましょう。

加陽 麻里布

司法書士法人永田町事務所 代表司法書士

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