「退職金3,600万円」上場企業の本部長が60歳で退職。同僚たちに盛大に見送られ、会社をあとにしたが…「おつかれさま」の声もない、ポツンとひとりの自宅に広がる「衝撃の光景」
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年12月4日 5時15分
写真はイメージです/PIXTA
高齢社員の活躍の場を広げようと、役職定年を廃止する企業が増えています。一方で、いつまでも第一線で働き続けないといけないというジレンマもあり、自分でひと区切りをつける人たちも増えています。しかし、その先に待っているのは明るい未来とは限らないようです。
大手企業本部長…これ以上気力が持たないと60歳で会社を去る決意
役職定年が広がったのは1986年、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」、いわゆる高年齢者雇用安定法により、それまで55歳定年が主流だったなか、60歳定年の努力義務が定められたことにさかのぼります。定年延長による人件費の拡大を、降格というカタチでどうにかしようとしたわけです。
人事院『令和5年民間企業の勤務条件制度等調査』によると、役職定年があるのは16.4%。そのうち、「今後も継続」としているのは95.6%で、4.4%は廃止を検討していました。また従業員500人以上の企業に限ると、役職定年制があるのは30.7%。今後も継続としているのは95.7%で、4.3%は廃止を検討しています。
役職定年によって降格し、給与が下がることによって、働き続けるモチベーションは著しく低下。問題視されてきました。高齢社員の生産性低下という問題を解決するためにも、役職定年制の廃止の流れは、今後も進んでいくといわれています。
一方で、役職定年制の廃止はよい面ばかりではなさそうです。加藤哲也さん(仮名・60歳)、とある大手企業で本部長として活躍していました。勤めている会社では役職定年がなくなり、さらに定年も65歳に延長になったそうです。
――60代になると、体力だってそれまで通りとはいかないでしょう。しかし会社からはまだまだ猛烈に働けと……そこまで気力を保つのは難しいと考えました
後輩に本部長の椅子を譲ったほうが会社のためにもなる……そう考えて、加藤さんはそれまでの定年年齢である60歳で会社を去ることに決めたといいます。
実は加藤さんの会社では早期退職優遇制度もあり、一定条件を満たせば退職金がプラスαになるといいます。
――勤続年数加算があり、退職金は4,000万円ほどになりました
ほかに、老後資産としての預貯金も同じくらいある。住宅ローンの返済も終わった。これだけあれば、何不自由のない老後が送れるだろう……そんな目論見で会社を去る決心をしたといいます。
厚生労働省『令和5年就労条件総合調査』によると、勤続20年以上かつ45歳以上の退職者がいた企業のうち、定年による退職は56.5%。自己都合が31.7%、会社都合が6.1%、早期優遇が5.7%でした。
60歳本部長の退職の日…家に帰ると誰もがカギを開けてくれなかった
退職する日。同僚たちに盛大に見送られ、会社をあとにした加藤さん。大学卒業してから38年間の会社員人生を振り返りながら、日が暮れるころに自宅に着いたといいます。しかし、ここでよくあるわけではありませんが、話としてはよく聞く光景が――。
どんなにチャイムを鳴らしても誰か出てくる気配はなく、仕方ないからと鍵を自分で開けて自宅へ。「しーん」と聞こえてきそうなほど静かです。「誰もいないのかー」と大声を出しながらリビングへ。テーブルの上には、置手紙と印鑑のついた離婚届。ドラマや映画でよく見るワンシーンが、まさか現実世界で見ることになるとは。
さらに手紙とともに弁護士の名刺が置いてありました。本人はもちろんのこと、各方面に連絡してみましたが、妻がどこにいるのかなど、情報は聞き出せません。一人暮らしをしている子どもたちに連絡をすると「お母さんも退職。これ以上揉めないでよね」と冷たくあしらわれたといいます。
埒があかないと名刺に書いてあった弁護士事務所に連絡すると、「今後の連絡はすべてこちらへ」といわれ、妻が加藤さんに会う気はまったくないことがわかりました。
「心当たりは?」の問いに対して、「まったくわからなかった」と加藤さん。加藤さんが気づかなかっただけなのか、用意周到で進められたことなのか――。
アンファー株式会社が全都道府県の既婚者を対象に行った『夫婦関係の満足度に関する調査』によると、「夫婦関係について全体として満足していますか」の質問に対して、「満足している」は24.7%、「まあ満足している」は50.4%。一方で、「あまり満足していない」は14.6%、「満足していない」は10.4%となり、4人に1人は夫婦関係に不満を抱いていることがわかりました。
不満が離婚にまで発展するのは相当の距離がありますが、自信をもって「うちの夫婦はお互いに満足している」といえるでしょうか?
後日、加藤さんが弁護士事務所を訪れると、10年分の日記のコピーがありました。そこには、加藤さんから妻へのモラハラともとれる行動が事細かに記されていたといいます。
――確かに、家ではカッとしやすい性格だったかもしれません。会社でのストレスを家で発散していた……かもしれないです
暴力などは振るったことはなく、加藤さんはあくまでも復縁を希望しています。しかし妻の決意は固く、いまのところ平行線をたどっているといいます。
[参考資料]
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