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普通株式と種類株式、どちらを選択すべき?定款に記載する「株式」の扱い【司法書士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年12月18日 8時10分

普通株式と種類株式、どちらを選択すべき?定款に記載する「株式」の扱い【司法書士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

株式の種類や譲渡制限の有無、株券の発行方針は、設立当初だけでなく会社の将来的な成長にも影響を及ぼします。定款作成に必要な知識として、「普通株式と種類株式の選択」「株式の譲渡制限」「株券発行の有無」について詳しく見ていきましょう。加陽麻里布氏(司法書士法人永田町事務所 代表)が解説します。

普通株式と種類株式

【普通株式】

普通株式は、最も一般的な株式の形態で、すべての株主が平等に権利を持つ仕組みです。通常、設立時には普通株式のみが発行されるケースが多く、シンプルな株主構成を維持したい場合に適しています。

〈普通株式の特徴〉

・議決権:1株につき1票の議決権が付与される。

・配当権:配当金や残余財産の分配が平等に行われる。

【種類株式】

種類株式は、特定の条件や権利を付与した株式です。種類株式を導入することで、投資家への特典を設定したり、経営権の安定化を図ったりすることができます。

〈種類株式の主な種類〉

1.優先株式

普通株式よりも優先的に配当や残余財産分配を受けられます。

2.議決権制限株式

一部またはすべての議決権を制限し、経営権の集中を図ります。

3.取得条項付き株式

会社が特定の条件下で株式を取得できます。

4.拒否権付株式

重要事項に対して拒否権を行使できる権利を付与します。

〈種類株式の活用例〉

・ベンチャー企業が投資家に優先株式を発行し、配当を優遇。

・ファミリービジネスで議決権制限株式を活用し、経営権を守る。

【普通株式と種類株式の選択基準】

・シンプルな構成を望む場合:普通株式のみを発行。

・投資家や外部資本を取り入れる場合:種類株式を活用して柔軟な資本政策を実現。

種類株式は活用次第で大きなメリットを生む一方、内容を細かく定款に記載する必要があるため、運用の負担が増加します。自社の状況に応じて適切な選択を行いましょう。

株式の譲渡制限

譲渡制限株式は、株式を第三者に譲渡する際に会社の承認を要する仕組みです。中小企業やファミリービジネスでは、経営権を安定させるためにほとんどの場合(日本の会社の9割以上)で譲渡制限を設けます。

【譲渡制限を設けるメリット】

1.経営権の安定化

会社の方針と異なる第三者が株主になるリスクを防げます。

2.株主構成の管理

特定の株主構成を維持しやすくなります。

3.取引先からの信頼確保

経営が安定していることを示せます。

【譲渡制限の定款記載例】

「当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を要する。」

譲渡制限はすべての株式に設定することも可能ですが、特定の種類株式にのみ適用することもできます。

【譲渡制限の注意点】

・株式の流動性が低下する

投資家としては株式の売買がしにくくなります。

・柔軟な運用を確保

必要に応じて譲渡制限を緩和する規定を設けるとよいでしょう。

株券の発行

株券は、株主が保有する株式の証明書です。かつては株式取引の中心的な役割を果たしていましたが、現在では電子化が進み、株券の発行を省略する企業が増えています。新設会社はほとんど発行しません。

【株券を発行するメリット】

1.保有権の明確化

株主が株式を保有していることを証明できます。

2.担保価値の提示

金融機関などへの担保設定時に有効です。

【株券を発行しないメリット】

1.コスト削減

印刷費や保管費用が不要です。

2.管理の効率化

紛失や再発行の手間が省けます。

【株券を発行しない場合の定款記載例】

「当会社は株券を発行しない。」

株券の発行は、特殊な取引や担保設定が必要な場合に限定して検討するのが一般的です。

よくある質問

Q1:普通株式と種類株式は併用できる?

⇒A.可能です。併用することで、経営者や投資家それぞれのニーズを反映した資本政策を実現できます。

Q2:譲渡制限は解除できる?

⇒A.解除は可能ですが、定款変更には株主総会の特別決議が必要です。また、株式の譲渡制限のない会社(公開会社)は、取締役会(取締役3名で構成する機関)の設置が義務づけられます。

Q3:株券を発行しないと問題がある?

⇒A.多くの場合は問題ありません。

〈設定時のポイント〉

1.シンプルな株主構成には普通株式、複雑な資本政策には種類株式を活用。

2.譲渡制限を設けることで経営権を守り、必要に応じて柔軟な運用を。

3.株券の発行はコストや管理の効率化を考慮し、不発行がよい。

これらの選択肢を慎重に検討し、会社設立後も強固で柔軟な経営基盤を構築しましょう。

加陽 麻里布

司法書士法人永田町事務所 代表司法書士

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