遅くに授かった息子のため…世帯年収800万円の40歳目前夫婦「節税のつもりが大損」。初孫に大喜びの親から「毎月3万円」の援助も、逃した巨額のチャンス【CFPが解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年12月13日 10時45分
(※写真は実際の物価高騰緊急支援金の案内)
インフレや金利上昇が話題となるなか、NISAの拡充という国の後押しもあり、投資に興味を持つ人が増えています。一方で、日本人の投資に対する正しい理解が進んでいるとはいえないでしょう。本記事では三浦さん(仮名)と石井さん(仮名)の事例とともに、NISAとFXでの運用についてニックFP事務所のCFP山田信彦氏が解説します。
遅くに授かった子どもの教育資金準備
昨年初めての子ども(男の子)が産まれた、39歳の同い年三浦さん(仮名)夫妻。世帯年収は800万円ですが、妻は現在育休中です。年齢的にも掛けられる教育費的にも子どもは1人と決めていました。
孫の顔見せに実家へ帰省した際、「子どものために学資保険にはしっかりと入っていたほうがいい。毎月数万円程度ならば援助するぞ」と親から言われた夫。三浦さんの親からすれば初孫の誕生。できる限りの援助をしたいようです。しかし、会社で同じく最近子どもが産まれた同僚にも意見を聞いてみたところ、「そんなのは止めておいたほうがいい。節税効果もあるし、教育費目的でもいま始めるならば新NISAだよ」と言われました。
同僚の説明によれば、日本の金利水準の底打ちにより返戻金率が多少上がったとはいえ、学資保険は今後想定されるインフレにもおよばない可能性が高く、今年から始まった新NISAの積立投資枠を利用して全世界株式や米国株式に連動するインデックス型の投資信託を始めるべきだというのです。
親には学資保険に加入したことにして、三浦さんは4月から毎月3万円ずつ人気の米国株式連動型の投資信託を新NISAの積立投資枠を利用して購入しはじめました。
4月からその投資信託の基準価格は2万5,000円台から、2万6,000円台、2万7,000円台と順調に上昇していき、7月頭にはついに2万9,000円台にまで一気に達し、三浦さんは「NISAはすごい」と大興奮でした。
NISAが暴落?
しかしその後、マーケットの様相は一変します。米国でインフレ率が再び上昇しはじめ、FRBの高金利政策が継続するとの観測により、ハイテク株への売り圧力を含めて投資家心理は冷え込み、三浦さんが保有する投資信託の基準価格はわずか1ヵ月のあいだに2万5,000円台にまで一気に戻してしまいました。こうなると投資初心者の三浦さんは平常心を保つことができません。
「NISAが暴落した! もう二度と手を出さない!」と、せっかく始めた新NISAでの積立投資をわずか10数万円買い付けた段階で、数万円の損失を確定させ、やめてしまいました。
夏のボーナスが大してもらえなかったので、FXに挑戦
石井さん(仮名)は某中堅メーカーに勤務する今年で入社3年目の若手男性社員です。年収は380万円程度。久しぶりに会った学生時代の仲間たちとの飲み会で友人から聞いたのは「FXは儲かる」という話です。
FXは「外国為替証拠金取引」のことをいいます。通常の外貨預金とは異なり、日本国内では証拠金の最大25倍まで(このように小さい資金で投資効果を上げ、さらに収益性を高めることを「レバレッジ」といいます)、より多くの外貨を購入運用することが可能となります。
その友人のケースでは、今年1月に50万円の証拠金を入れて、1ドル145円で5万ドル分買った米ドルを、4月に155円を超えたところで売却。「スワップポイント」と呼ばれる金利分とも併せて、わずか3ヵ月のあいだに60万円近く儲かったというのです。
夏のボーナスが期待していたようには支給されなかった石井さんは、さっそくFX口座を開設して証拠金として20万円ほど入れて、友人と同じく1ドル160円で2万ドル分7月頭に米ドルを購入しました。
FXで溶けた?
しかし、その直後から米ドルと円レートの為替は、日銀が長年続けてきた超緩和的な金融政策の見直しを示唆したこともあり、急激に円高に向かいます。強制ロスカットに遭い、わずか1週間で20万円の証拠金のほとんどを失ってしまいました。
「あっという間にお金が溶けて消えてしまうFXは恐ろしいギャンブルだ。高い勉強代を払う結果になったが、外貨投資なんてもうこりごりだ」石井さんは大きなため息をついて言います。
大切なのは「箱」になにを入れて、どのような運用方針を持つか
以上、投資に関しては初心者であった三浦さんと石井さんのこの夏の体験談を見てきました。では、2人のように、NISAやFXは本当に暴落したり溶けたりしてしまうのでしょうか? 結論をいえば、NISAにしてもFXにしても、それはあくまでお金を運用する便利な「箱」ということだけであって、「箱」自身は暴落もしなければ溶けもしません。その「箱」を正しく使いこなすことができなかったからといって、箱そのものを問題視することは間違っているでしょう。
ここまでの話で「NISAに関してはそのとおりだけどFXは投機、すなわちギャンブルだろう」と思われる人も多いかもしれません。しかし、大きな括りでみれば「使いこなせば便利な金融の箱」ということで同じだと筆者は考えます。
NISAは短期間でやめることがもったいない
まずNISAのおさらいですが、正式名称「少額投資非課税制度」のとおり、その最大の魅力は投資によって得られる利益には通常20.315%(申告不要選択の場合)が課税されるのに対し、NISA枠で運用した場合は全額非課税となることです。しかしそれは利益が発生した場合の話です。当然のことながら、投資行為そのものには損失が発生するケースもあります。
よって金融庁は、NISAのなかでも特に「つみたて投資枠」に関しては「長期の積立・分散投資に適した投資信託」だけを購入できるようにしています。証券市場は長い目で見ればその途中に凸凹はあろうとも、基本は世界経済の成長に準じていきます。そのため、三浦さんのようにわずか数ヵ月の結果に一喜一憂してせっかく始めた積立投資をやめてしまったことは非常にもったいない話なのです。
単なる外貨預金と比較してFXのほうが優位な点
FXというとどうしても「高いレバレッジで短期売買を繰り返して利益を上げていくもの」という印象が強いですが、それはFXという箱の1つの利用法にすぎません。自分の金融資産に米ドルなどの外貨建て資産を一部組み入れたいと思うのであれば、それにはいくつもの手段がありますが、少なくとも銀行での外貨預金と比較するとFXにはいくつもの優位点があります。
1.外貨を買う手数料(スプレッド)が圧倒的に安い
預金を始めるにあたり預金を銀行で買うと、米ドルであれば通常片道0.5~1円の手数料を取られます。一方で、FXで米ドルを買う場合の手数料は、競争力のある業者の場合、片道0.01円にも満たない圧倒的な低コストで手当することが可能です。
2.為替差益が出た場合でも税率を20.315%で常に固定できる
銀行での外貨預金の場合、利息は所得税と住民税を併せて20.315%の源泉分離課税となりますが、為替差益は総合課税の対象となってしまいます。他所得の状況によっては、住民税と併せて最大55.945%という高い税率で課税されてしまうこともあるのです。
3.為替差損が出た場合では3年間損失繰り越しができる
銀行外貨預金では為替差損が出たとしても、その損失額は翌年に繰り越すことも、他所得との損益通算もできません。一方FXの場合ですと、損失は最大3年間の繰越が可能で翌年以降のFX取引での利益(+ほかの先物取引)との損益通算が可能です。つまり、不必要に高いレバレッジでハイリスク・ハイリターンの短期売買を繰り返すのではなく、米ドルやユーロなどの先進国通貨で1倍(もしくはせいぜい2~3倍)程度のレバレッジで外貨をスワップポイントと呼ばれる利息分を地道に稼ぐ長期運用するのであれば、FXという「箱」は決して忌み嫌われる性質の利用場所ではないということです。
以上より、NISAは暴落しませんし、FXも溶けません。ともに正しく利用できれば投資家にはとても有利な「箱」だと考えます。
山田 信彦
ニックFP事務所
代表
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