年金月12万円だったが…「年金の繰下げで受取額約2倍」を目指していた月収15万円・72歳の清掃業の男性。年金事務所で知る衝撃の真実に「何かの間違いでは?」
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年12月7日 7時15分
写真はイメージです/PIXTA
老後の生活のベースとなる公的年金。受給に関してはルールがあり、さらに細かな例外も。対象となり驚愕するシーンも珍しくないようです。
65歳で年金を受け取れば月12万円…これでは生きていけない
加藤誠一さん(仮名・72歳)。清掃業で生計を立てています。月々の給与は15万円、手取りにすると12万円ほど。決して多くはありませんが、「老いぼれの1人暮らしなら十分だよ」といいます。
総務省『労働力調査』によると、70歳以上の就業率は近年増加傾向にあります。2021年のデータによると、70歳以上の男性の就業率は約15.4%であり、2022年にはこの数値が上昇し、70~74歳の男性の就業率は42.6%、75歳以上では約10.5%となっています。さらに2023年では、70歳以上の男性の就業率は33.5%に達し、過去最高を更新しています。
ただ同棲代は年金で生活する人も多いでしょう。加藤さんの場合、65歳で受け取れる年金は月12万円程度だったといい、「これでは生活できないな」と思っているところ、同僚から「年金の繰下げ受給」という制度があることを教えてもらい、年金を受け取ることを辞めたといいます。
――年金を受け取るのを我慢していれば、知らず知らずのうちに年金が増えていくっていうからさ
老齢年金は基本的に65歳から受け取り開始となりますが、60~75歳の希望するタイミングで受け取ることができます。60~64歳と早く受け取ることを「年金の繰上げ受給」、66~75歳と遅く受け取ることを「年金の繰下げ受給」といいます。
「年金の繰上げ」では、1ヵ月早めるごとに0.4%ずつ受取額は減額となり、60歳で受け取ると24.0%の減額となります。この減額率は昭和37年4月2日以降生まれの場合。それ以前生まれの人は減額率が0.5%で、最大30.0%でした。より制度が利用しやすくなったといえるでしょう。
一方で「年金の繰下げ」では、1ヵ月遅らせるごとに0.7%増額。75歳で受け取ると1.84%増と、約2倍に増やすことができます。また繰上げ受給とは異なり、基礎年金と厚生年金を別々に繰り下げることが可能。基礎年金は65歳から受け取り、厚生年金は増額を狙う……そんな柔軟な対応ができるのも、繰下げ受給の特徴です。
同僚「これ以上、年金を繰り下げても意味ないから」の真意
65歳から年金を受け取れば、月12万円。そこから保険料などが引かれ、月10万円強に。家賃4.5万円のアパート暮らし……ちょっと年金だけでは暮らしていけそうもありません。かといって、十分な貯蓄があるわけでもない。そんなときに聞いた同僚のアドバイス。「待っているだけで年金が増える……」。何ともいい響きでしょう。健康には自信のあった加藤さんは、もちろん年金の繰下げ受給を選んだのです。
しかし、アドバイスをくれた同僚(すでに仕事を辞めているので元同僚)から、「まだ年金もらっていないのか。早く受け取りにいけよ、意味がないから」といわれてしまったといいます。
――年金の受け取りを遅らせるほど増えるといっていたのに
少々納得がいきませんでしたが、素直な加藤さん。年金事務所にいったところ、衝撃的な事実を知ります。
――えっ、70歳までしか繰下げできないんですか?
年金の繰下げはもともと70歳まででした。しかし2022年4月に75歳まで延長となりました。ただ75歳となったのは昭和27年4月1日以降生まれの場合で、それより前の生まれであれば上限は70歳のままだったのです。加藤さんは昭和27年2月生まれ。繰下げ受給の上限、70歳の対象です。
加藤さん、最近になって「年金の繰下げは75歳まで」とだけ、どこかで聞いていたのでしょう。「ただし……」の部分を知ることなく「年金がほぼ2倍になる」と夢見て、ここまで来てしまったわけです。
結局、あと3年で12万円の1.84倍である22万円ほどになると思っていましたが、月17万円と目論見よりも5万円ほど少ない受給額に、思わず「何かの間違いでは……」とボヤいてしまう加藤さん。それでも、「月12万円と比べたらましか」と、今では満足しているといいます。
年金に関しては、細かな例外があります。自身がこの例外の対象となり、思ったよりも年金が少ない……という事態に直面することも。定期的に受取額(予定額)を点検することで、このギャップは解消できるでしょう。
[参考資料]
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