「ポイントカード持たない主義」だが…「だとしたら嬉しい!」とお客様を唸らせる、店員の配慮【元ANAのCAが解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月7日 7時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
接客を行っていると、お客様に伝えるべきか、伝えぬべきか迷うシーンがあると思います。「一歩踏み込む接客」には勇気が必要ですが、それがお客様の思ってもみなかった喜びにつながることもあるようで……。本記事では、元ANAのCAで人材教育講師の三上ナナエ氏の著書『一生使える「接客サービス」の教科書』(大和出版)より、お客様に一歩踏み込む接客について解説していきます。
押すべきか、引くべきか
接客をしていると悩むことがあります。一歩踏み込んだほうがいいのか、踏み込まないほうがいいのか。「踏み込まないほうが無難かな」と感じることのほうが多いかもしれません。特にお客様の求めていることを考え過ぎると、踏み込むべきか、引くべきかわからなくなるでしょう。
程度問題ではありますが、やっぱり一歩踏み込むことは大切なんです。私が感じた例をいくつかあげてみたいと思います。
お店で買い物をすると、よくポイントカードを持っているか確認されます。「ありません」と伝えると、以前は必ずつくることを勧められていましたが、最近は気を遣ってか勧められる頻度が減りました。「手間をかけてわずらわしい思いをさせたくない」という店員さんの配慮や、「断られるのも少し嫌な気がするし」という思いも感じます。
しかし、お客様にとってメリットがあるならば、ご紹介だけでもするほうが親切です。お得に買い物ができたり、特典がつくことはお客様にとっていいことなのですから。私はポイントカードを持たないほうですが「こんな特典もあるので、ぜひお勧めです」と言われて、それなら得だなとつくったこともありました。
また、こんなケースもありました。ある歯医者さんで、「次回の定期診断の予約は3か月後ですが、ご都合はいかがですか」と聞かれました。私は「3か月後はまだ予定がわからないし、こちらからご連絡します」と伝えました。今までの歯医者さんなら、ここで「ではお待ちしております」で終わります。しかし、その受付の方は「予約の時間は変更できますし、3か月経つと予約をするのもお忙しくて忘れがちになるので、ぜひ仮だけでも予約を入れませんか?」と言ったのです。
私は「それもそうだな。こうやっていつもズルズルと、自分の健康管理を後回しにするのもよくない」と思い、予約をしました。その歯医者さんは、自分の健康管理を後回しにしてしまう患者さんに、なんとか習慣をつくってほしいという思いから、一歩踏み込んだ応対をしてくれたのです。おかげで私は、定期的に歯の健康をチェックする習慣ができました。
あるホテルのレストランで、素敵なサービスに感激した出来事もありました。半年がかりで準備をした仕事が無事終わり、仲間と2人、レストランで打ち上げをしていたところ、デザートをのせたプレートに「お仕事お疲れ様でした」とメッセージがチョコレートで描かれていました。意外なサプライズにとっても感激しました。どちらかがメッセージをお願いしたわけでもなく、お店からのサプライズでした。さらにお店の方の言葉に唸りました。
それは、「お話が聞こえてきてしまいまして……」。
何気ない言葉のようですが、そのひと言がこのサプライズを心から喜べるものにしてくれました。もしこのひと言がなかったら、聞き耳をたてられていると感じたり、ちょっと狙っているなと感じてしまったかもしれません。給仕の最中に聴こえてきた何気ない会話から、パッと思いついて心遣いをしてくれた、そんな場面を想像できて、本当に嬉しい気持ちになりました。
踏み込めない理由
これらに共通するのは、「お客様にとって本当に必要なこと、メリットになることは何か?」と考えて、行動を決めるというスタンスです。踏み込むのが申し訳ない、断られてしまうかもしれない、嫌な思いをさせてしまうんじゃないか――。こんなことが頭によぎり、踏み込めず、行動をしてしまうことはあると思います。
それはほとんどの場合、無意識に「自分が嫌な思いをしたくない」という自分の都合で行動を決めているのです。確かに、一歩踏み込むのは勇気がいります。反応がないとショックを受けるかもしれません。時に嫌な顔をされることも実際にあります。よかれと思ってやったのに、余計なお世話だと思われることもあります。
しかし、あなたが「それが本当にお客様のためになる、メリットにつながる」と思うのであれば、「お客様の思ってもみなかった喜びにつながる」と思うのであれば、怖れずに勇気をもって踏み込んでみませんか。そこで踏み込まなければ、お客様は自分のメリットになるものを得られないまま、その場を後にします。後で知って、「なんで言ってくれなかったの?」なんて気持ちになるかもしれません。ちょっと踏み込むことによって、「忘れられない体験」をお客様の中に残すことができるのです。
POINT:少し踏み込んだ接客のほうが心に刺さる三上 ナナエ
元CA・人材教育講師
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