不安定な時代にこそ力を発揮する「金投資」…メリットを最大限にするポートフォリオの考え方
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月2日 10時15分
金は歴史的に価値が高く、通貨や株式のように経済や政治情勢によって影響を受けにくいという点から、不確実性の高い現代においても資産として投資家から注目を集めています。本記事では、菊地温以氏の著書『最強のポートフォリオをつくる金投資入門』(日本実業出版社)より一部を抜粋・再編集し、金をポートフォリオに組み込むための重要な3ステップについて解説します。
金をポートフォリオにどうやって組み込むといい?
金をポートフォリオに組み込む際には、つぎの3つのステップを順に進めることが重要です。
①投資目的を明確にする
まず、金投資の目的を明確にすることが必要です。金投資の特性やメリットを活かすためには、つぎのような目的が考えられます。
・長期的なインフレ対策:インフレによる通貨の価値低下に対する保険として。
・資産のリスク分散:株式や債券のリスクを緩和するための安定資産として。
・安全資産の保有:経済危機や市場の不安定な時期に、信頼性の高い資産を確保するため。
一方、「短期的に大きなリターンを得る」という目的で金に投資する場合は、ポートフォリオの設計や資産配分のアプローチが異なります。そのため、資産配分を考える前に、まず投資目的をしっかりと定めることが重要です。
②資産配分を決める
つぎに、自分の保有資産全体における金の割合を具体的に決定します。金投資を行う場合、一般的には資産の10%〜20%を金に割り当てることが推奨されます。長期的なインフレ対策やリスク分散を目的とする場合の一例として、つぎのポートフォリオが考えられます。
・例:Aさんのポートフォリオ(全資産100万円の場合)
株式:40万円(40%)
債券:30万円(30%)
現金・預金:10万円(10%)
金:20万円(20%)
・比較例:Bさんのポートフォリオ(全資産100万円の場合)
株式:50万円(50%)
債券:30万円(30%)
現金・預金:20万円(20%)
つぎに、以下のようなシナリオで資産の変動をシミュレーションします。金融危機が発生し、株式と債券が▲50%、金が+30%、日本円の価値が米ドルに対して▲10%。
・Aさんの資産変動
株式:20万円(▲20万円)
債券:15万円(▲15万円)
現金・預金:9万円(▲1万円)
金:26万円(+6万円)
資産合計:70万円
・Bさんの資産変動
株式:25万円(▲25万円)
債券:15万円(▲15万円)
現金・預金:18万円(▲2万円)
資産合計:58万円
このシミュレーションからもわかるように、金をポートフォリオに組み入れているAさんは、Bさんよりも金融危機に対するリスクヘッジができており、資産全体の損失が抑えられています。
③投資手段を選ぶ
最後に、投資目的や資産配分にもとづいて、自分に合った金投資の手段を選びます。本章で紹介した現物購入、純金積立、投資信託、金ETF(上場投資信託)、金先物取引などの手段から、自分に最も適したものを選ぶことが重要です。
たとえば、Aさんがすでに十分な資産を保有している場合、20万円分の金の現物購入を一度に行うことができます。あるいは、定期的に金を購入したい場合には、純金積立によって少額を積み立てていき、最終的に20万円分の金を保有する方法もあります。
また、短期的に大きなリターンを狙う場合であれば、金先物取引を選ぶことも可能です。
いずれの方法を選ぶにしても、まずは自分の投資目的に合致しているかどうかを確認し、適切な手段を選ぶことが大切です。金投資を長期的に計画し、適切にポートフォリオを管理することで、リスクヘッジ効果を最大限に活用できます。
金投資のメリットを最大限に受けるには?
金投資の最大のメリットは、長期的に資産全体の安定性を高めることにあります。とくに、インフレや金融商品の信用リスクに対するリスクヘッジとしての役割が大きく、ポートフォリオの一部として金を組み入れることで、資産のリスク分散効果が期待できます。
金は歴史的にもその価値が揺るぎないものであり、通貨や株式のように経済や政治情勢によって影響を受けにくいという点が投資家にとって魅力的です。実際に、経済不安が高まる局面では、金の価値が上昇しやすい傾向があるため、その安定性がさらに際立つことがあります。
また、金の供給は限られているため、長期的に見ればその価値は持続的に上昇する傾向があります。さらに、地政学的リスクが高まる状況下では、金は「安全資産」としての需要が急増し、短期的な価格上昇が期待できることもあります。
このように、金は市場の変動や不確実性が高まる局面で、投資家に安心感を与える資産です。
資産全体の10%〜20%を金に
金投資を行う際には、長期的な視点で資産の一部として金を保有することが重要です。一般的に、資産全体の10%〜20%を金に割り当てることが推奨されており、これによりそのほかの資産に対するリスクヘッジが効率的に働きます。
とくに、株式や不動産などリスク資産と異なる動きをする金を適切に組み入れることで、ポートフォリオ全体のバランスを維持しつつ、リスクを軽減することが可能です。
このように、金は資産の保全やリスク分散のための効果的な手段として活用されます。とくに、インフレや通貨の信用低下が懸念される局面では、金を保有することによって、通貨の価値下落による資産の目減りを防ぐことができます。
金がもたらすこれらのメリットを最大限に活かすためには、短期的な価格の上下に左右されることなく、冷静な判断を持って投資を続けることが重要です。結果として、金投資を通じてポートフォリオ全体をバランスの取れた構成にし、経済的な不安や市場の変動に備えることができるでしょう。
また、長期的な資産保全とリスクヘッジのために金を組み入れることで、将来的な資産価値の安定を図れます。
菊地 温以 株式会社アプレ代表取締役
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