【会社設立】自分で登記申請した場合の「よくあるトラブル」とその回避策【司法書士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年12月26日 8時10分
(※写真はイメージです/PIXTA)
会社設立を自分の手で進めることは、費用を抑えながらプロセス全体を把握できる魅力的な選択肢です。しかし、法律的な知識や手続きの正確さが求められるため、ミスやトラブルが発生しやすいという事実も見逃せません。見様見真似で会社設立を行った場合、どのようなトラブルが起こりうるのでしょうか。よくあるトラブル事例とともに、回避策を見ていきましょう。加陽麻里布氏(司法書士法人永田町事務所 代表)が解説します。
1. 定款に不備があった場合のトラブル
事例:ある起業家が見本を参考にして定款を作成したものの、事業目的の記載が不適切であったため必要な許認可が取得できず、事業開始が大幅に遅れた。
原因:事業目的が曖昧すぎた、あるいは具体性を欠いていたなど
⇒特に建設業や飲食業など許認可が必要な業種では、事業目的の記載が適切でないと審査で弾かれます。
〈回避策〉
・必要な許認可がある場合、その業種特有の文言を正確に記載する。
・公証役場や専門家に定款の内容を事前確認してもらう。
2. 出資金払込の記録不備による申請却下
事例:発起人の友人名義の口座を使って出資金を振り込んだ結果、法務局で登記申請が受理されなかった。
原因:友人名義の口座を使ったこと
⇒出資金は発起人自身の口座に振り込む必要があります。他人名義の口座や法人名義の口座を利用すると、資本金の払込証明が認められません。
〈回避策〉
・必ず発起人名義の個人口座を使用し、通帳の該当ページを正確にコピーする。
・払込証明書の作成例を参考にして正しい形式で準備。
3. 商号(会社名)のトラブル
事例:設立後、他社が商号をすでに使用していることが判明し、商標侵害で訴えられた。結果として会社名の変更を余儀なくされ、多額の費用と時間がかかった。
原因:商号調査が不十分だった
〈回避策〉
・事前に商号調査を行い、商標権や商号権の登録状況を確認する。
・特に広範な事業展開を予定している場合は、商標登録を視野に入れる。
4. 登記書類の整合性不足
事例:登記申請書、定款、払込証明書の記載内容が一致しておらず、申請が受理されなかった。結果、手続きが大幅に遅延し、事業開始がずれ込んだ。
原因:書類作成時に細やかな確認を怠ったこと
⇒例えば、会社名や資本金の金額が書類間で異なっている場合があります。
〈回避策〉
・すべての書類の記載内容が一致していることを複数回確認する。
・法務局の窓口で事前相談を行い、書類の不備を指摘してもらう。
5. 設立後の手続きの不備
事例:登記が完了したが、税務署への届出を忘れてしまい、数カ月後に税務署から催促を受けた。結果として、期限切れによりペナルティが発生した。
原因:登記が完了しただけで安心してしまった、登記後の手続きを把握していなかった
〈回避策〉
・登記後の手続き(税務署や年金事務所への届出、許認可申請など)を事前にリスト化しておく。
・登記完了後の具体的なスケジュールを立てておく。
6. 登録免許税の過不足
事例:登録免許税の不足が発覚し、申請が受理されなかった。
原因:資本金の計算ミスなど
⇒登録免許税は資本金額に応じて計算されますが、計算ミスをしていたり、資本金を変更した際に正確に反映されなかったりなどのケースがあります。
〈回避策〉
・登録免許税が【資本金×0.7%(15万円に満たない場合は15万円)】で計算されることを知っておく。
・資本金に金額変更があった場合、必ず税額を再確認する。
自力で会社設立を行う際のリスクを減らす方法
1. 法務局や公証役場への事前相談
法務局や公証役場では、事前相談を無料で行える場合があります。書類のフォーマットや手続きの流れを確認し、不明点を解消しておきましょう。
2. 定款テンプレートの活用
日本公証人連合会のホームページで定款のひな型が配布されています。また、法務省ホームページにおいて登記申請書や登記添付書類の記載例が公表されていますので、参考にするとよいでしょう。ただし、内容をそのままコピーするのではなく、自社の事業内容に合った修正を加える必要があります。
3. 専門家への部分的な依頼
自力で行う場合でも、部分的に司法書士に依頼することで、手続きの正確性を確保できます。特に定款の作成や登記申請に関する相談は有効です。
4. 余裕を持ったスケジュール設定
設立手続きには予想以上に時間がかかることがあります。特に初めての場合は、余裕を持ったスケジュールを立てて臨むことが重要です。
トラブル回避のカギは「正確さ」と「準備」
会社設立を自力で行うことはコスト削減や学びの面で大きなメリットがありますが、一方で手続きの煩雑さや専門的な知識の不足からトラブルが発生しやすいことも事実です。必要に応じて法務局や公証役場の相談サービス、司法書士などの専門家への依頼なども検討しましょう。
加陽 麻里布
司法書士法人永田町事務所 代表司法書士
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