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骨と皮だけ…「年金月5万円」で暮らす78歳母の変わり果てた姿に、住宅ローンと教育費に追われる「年収450万円」47歳長男がくだした〈究極の決断〉【FPの助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年12月12日 11時15分

骨と皮だけ…「年金月5万円」で暮らす78歳母の変わり果てた姿に、住宅ローンと教育費に追われる「年収450万円」47歳長男がくだした〈究極の決断〉【FPの助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

老後の生活に欠かせない存在の「公的年金」。しかし、夫婦のどちらかが亡くなった際、年金収入がどれくらい減るか把握しているという人は多くないかもしれません。特に自営業を営む夫婦の場合、注意が必要であると、ファイナンシャルプランナーの山﨑裕佳子氏はいいます。山下さん(仮名)の事例をもとに、突如生活が困窮する「落とし穴」と、困窮した場合の「最後の手段」についてみていきましょう。

住宅ローンと教育費で家計は火の車…年収450万円会社員の「苦悩」

山下タケオさん(仮名・47歳)は大学入学を機に上京し、卒業後はそのまま東京の会社に就職しました。26歳で同じ会社の後輩と結婚し、翌年には長男が誕生。3年後には次男が生まれ、その2年後、タケオさんが32歳のときに神奈川県郊外にあるマンションを購入。中古で、3LDKの物件です。

47歳になった今、住宅ローンの返済はあと13年残っています。タケオさんの昨年の年収は450万円で、妻もパートで働いていますが、大学生と高校生になった子ども2人の教育費もあり、家計は“火の車”です。

「次男が大学を卒業するまで、あと数年の踏ん張りどころだ……」と仕事に精を出すタケオさんですが、慢性的に疲労を感じており、父亡きあと遠方に1人で暮らす母を案じながらも、なかなか実家に顔を出せずにいました。

「実は、お母様が…」息子のもとにかかってきた“1本の電話”

そんなある日のことです。仕事中のタケオさんの携帯に、見知らぬ番号から電話がかかってきました。不審に思いながらも応答すると、タケオさんも聞き覚えのある病院からでした。

「山下タケオさんの携帯でお間違えないでしょうか? こちらは山梨県〇〇総合病院です。 実は、お母様のトキコさんがさきほど、救急搬送されました」。

「なにがあったんですか?」驚いて、状況を尋ねるタケオさん。

「倒れてしまったようでして……。詳しいことは医師から説明しますが、命に別状はありません。いま点滴を受けており、検査入院のため、2、3日は入院していただくことになりそうです。できればご家族の方に病院に来ていただきたいのですが、可能でしょうか?」

「わかりました。明日、なるべく早く行きます」。タケオさんはすぐに勤務先に有給を願い出て、翌日、急いで病院を訪ねました。

話を聞くと、医師は母が倒れた原因について次のように話しました。「お母さまが倒れたのは、栄養不良によるものです。栄養不良というのは、生きていくために必要なエネルギーが不足している状態ですね。ただ、幸いなことに他に治療を必要とする疾患はありませんから、点滴をして様子を見ましょう」。

重い病気ではなかったことにいったん胸をなでおろしたタケオさんでしたが、「今の時代に栄養不良で倒れることなんてあるのか」と驚きました。タケオさんの記憶する母は元々瘦せ型ではありましたが、改めてベッドに横たわる母を見やると、たしかに以前にも増して痩せ細っています。

「なんでこんなに痩せこけてしまったんだろう。最近、めっきり実家に帰れてなかったからな……。話もできてなかったし、実はなにか困ったことになっているのかもしれない。申し訳ないことをした……」

後悔するタケオさんですが、トキコさんがこうなってしまったのには、切実な事情がありました。

夫亡きあと、母の収入は「月5万円」…余儀なくされた“過酷な節約生活”

タケオさんの母・山下トキコさん(仮名・78歳)は、2年前に夫に先立たれ、それからは山梨県にある実家に1人で暮らしています。

夫は生前料理人で、中学を卒業してすぐ、隣町の中華料理店に住み込みで働き始め、23歳で母と結婚。28歳で独立し自分の店を開くと、以後、70歳までトキコさんと夫婦二人三脚でお店を切り盛りしてきました。

トキコさんの気さくな人柄や、リーズナブルな価格ながらボリュームのある料理が評判を呼び、地元では有名な人気店でした。

店を閉めてからは、夫婦2人の老齢基礎年金で生活していたトキコさんですが、夫亡きあと、トキコさんは自分の年金のみでやりくりする必要が出てきました。月額に直すと、その額わずか5万円です。預貯金もほとんどなく、家は古いながらも持ち家のため家賃はかかりませんが、食費、水道光熱費、日用品費といった毎月の支出があります。5万円でやりくりするのが厳しいことは、想像に難くありません。

しかし、「息子に負担をかけたくない」と、トキコさんは生活費削減のために節約生活を始めました。

わずか5万円の年金収入も「少しでも貯金したい」と、食費は月1万円程度を目標に、食事は1日2食に減らし、必ず自炊に。電気代節約のため、米は3日分をまとめて炊きます。ご近所から分けてもらった規格外の野菜も、皮や葉まで余すところなく調理して食べました。昨今の物価高も相まって、魚や肉を食べられるのは1週間に2回あればいいほうでした。

そんな生活を1年以上続けた結果、たびたび目まいやふらつきが起こるようになりました。そしてとうとうある朝、布団から立ち上がることもままならない状態となり、救急搬送されてしまったということです。

母親を1人にはできないが、助けるだけの金もない…

「助けてといって電話してくれたらよかったのに……」。自身も多忙な毎日を過ごしていたことから、母親がこうした厳しい状況で生活していたことなど知る由もなかったタケオさんは、激しく自分を責めました。

「母さんをこのまま1人にしておくわけにはいかない。これからの生活をなんとかしなければならないが、自分の生活も苦しい……いったいどうすればいいんだ?」焦るばかりで、名案はすぐに思い浮かびません。

「うちに呼び寄せるか……。でも住み慣れた土地を離れることになったら、母さんはきっと拒むだろう。それに、いきなり同居するなんて妻や子どもたちに言い出す勇気もないし、実際住むことになっても、空けられる部屋なんてない。だからといって、母さんに仕送りをする余裕もないしな……」

どうしたものかと悩んでいたところ、タケオさんは会社の福利厚生の一環でFPに家計相談をする機会があることを思い出しました。

生活保護の対象になる…FPから受けた「思わぬ助言」

早速、FPに母と自分の家計状況を相談。するとFPから、「お母様のようなケースですと、生活保護の対象になるかもしれません」と助言を受けます。

「生活保護」にネガティブなイメージを持っていたタケオさんは戸惑いましたが、「背に腹は代えられない」と、生活保護の申請を決断。後日、母を連れて山梨県の地元地域を管轄する福祉事務所に出向きました。

生活保護を受けるための「要件」は?

厚生労働省のHPによると、生活保護を受給するための要件は、下記のようになっています

■保護の要件等 生活保護は世帯単位で行い、世帯員全員が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することが前提でありまた、扶養義務者の扶養は、生活保護法による保護に優先します。

<出典> ・厚生労働省HP「生活保護制度」

具体的には、

・預貯金や生活に利用していない土地や家屋等がある場合には売却して生活費に充てる

・世帯のなかに働くことが可能な人がいれば、能力に応じて働き、収入を得て生活費に充てる

・年金や手当など社会保障制度から別の給付が受けられる場合は、生活保護よりも優先してそちらの給付を受ける

・親族等から金銭的援助が受けられる場合は、保護費に優先して援助を受ける

というのが条件となっており、これらをすべて活用してもなお、収入が厚生労働大臣の定める最低生活費の基準に満たない場合、その不足額が保護費として支給されます。

トキコさんは現在単身世帯にあたり、資産といえるものは住んでいる古家が建っている土地と、少ない年金からコツコツ貯めた預金の15万円のみです。

また、扶養義務者である息子のタケオさんも、自分たちの生活に手いっぱいで援助をする余裕がない、ということが認められ、審査の結果トキコさんへの保護費の支給が決定しました。

困ったら1人で抱え込まず、行政や専門家へ相談を

トキコさんの経済状態は、夫に先立たれたことで一気に悪化してしまいました。自営業者の妻には会社員の妻のような遺族年金がないため、配偶者が亡くなると年金額が半減してしまうのです。

預貯金や私的年金などで補填できれば問題ないのでしょうが、トキコさんには預貯金といえるほどの資金はなく、また公的年金以外に収入がなかったために厳しい生活を強いられてしまいました。

「親の年金はいくらなのか?」「預貯金や資産といえるものがあるか?」……子どもから親に聞くのは気が引けるかもしれませんが、いざというときに慌てないために、親の資産の把握は非常に重要です。

また、もしも家族で解決できないことに直面した際には、抱え込まずに行政や専門家の助言を仰ぐことを検討しましょう。

山﨑 裕佳子 ファイナンシャル・プランナー

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