「年金月25万円」定年まで夫の単身赴任で20年別居の60代夫婦、退職金5,000万円で団結。来年爆誕・初孫との暮らしに妄想大爆発…「老後破産」した理由【FPが解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年12月15日 10時45分
(※写真はイメージです/PIXTA)
退職金を手にした65歳の夫婦が、長年の夢だった2拠点暮らしへ。出会った物件を即決購入するも、予想外の維持費など困難な状況に直面し、老後の資金が急速に目減りしていきます。夢を追いかけたはずが、なぜ老後破産の危機に陥ったのでしょうか。本記事では、坂田さん(仮名)夫妻の事例とともに、セカンドハウス購入の落とし穴と、老後の資金計画の重要性について、合同会社エミタメの代表を務めるFPの三原由紀氏が解説します。
「海外のリゾートヴィラ風」に一目惚れ
坂田博さん(仮名/65歳)と妻の葉子さん(仮名/63歳)は、大手食品メーカーに同期入社をして社内結婚をしました。博さんは営業畑で転勤も多いため、結婚後の転勤辞令が出たタイミングで葉子さんは退職しました。
一人娘(現在35歳)を授かるまでは、趣味の海外旅行を楽しみ、特にハワイのリゾートには毎年、足を運んだものです。葉子さんがゴルフデビューをしたのもハワイでした。早朝や薄暮のゴルフ場は人も少なく、下手でも気にすることなくプレイを楽しめたものです。
子供が私立中学に進学するタイミングで、博さんは単身赴任を受け入れ、60歳の定年までほぼ同居する期間はありませんでした。定年後は、自宅通勤できるエリアを条件に継続雇用にしてもらいました。そして、65歳前に一人娘は無事に独立して結婚、住宅ローンなどの返済も完了しました。まさに、夫婦で楽しむセカンドライフのスタートに向けて、長年温めてきた2拠点暮らしの夢を実現させようと考えていました。
坂田さんの状況は以下のとおり、悠々自適の老後を描くには十分でしょう。
・年金収入(夫婦合計):月18万6,000円、2026年(妻65歳)から月25万円
・退職金:5,000万円
ある日、ネットで電鉄系リゾートの広告を目にした坂田さん夫妻。リゾート内には、かつて会社の保養所として利用したことがあるホテルタイプの施設もあり、懐かしさと憧れが一気に湧き上がりました。まるで、若き日に訪れて楽しんだハワイのリゾートヴィラのような物件に一目惚れ。内覧するとピクチャーウィンドウからは南アルプスの眺望も楽しめ、夫婦の嗜好にもピッタリです。物件の詳細は以下のとおりです。
・築32年、2LDK・約80m2
・価格:1,100万円
・一時金:約150万円(税金、仲介手数料、預り金、名義変更料など)
・年間維持費:約60万円(管理費、修繕積立金、借地料など)
「これだけの金額でセカンドハウスが持てるなら問題ないな」と、来年誕生予定の孫と一緒に3世代で楽しんでいる姿を妄想しつつ、購入を決断しました。
予想外の出費と利用制限が老後資金を蝕む
しかし、暮らし始めてみたらさまざまな問題が浮上します。というか、勢い余って購入に突き進んでしまったので、購入前はあまり気にしていなかったことが明らかになってきました。
たとえば、冬期の利用制限です。正確には、住戸利用への制限はありませんが、10月ごろから水まわりの設備凍結による被害防止のために水抜き作業が必要になることです。実際に滞在してみると、冬の寒さは都会の自宅マンションと比べものになりません。
どうやら、高原というだけあって、夏の避暑地としては素晴らしいものの、冬場で過ごすには適しているとはいえません。特に、高血圧の慢性疾患がある博さんにとっては、高リスクな環境です。当初、1ヵ月ほど暮らしてみたら、光熱費が5万円以上かかってしまいました。
冬場に暮らすとしたら、本格的な断熱リフォームが必要だとわかり、500万円ほどの出費に。また、10年ごとに大規模修繕があり、持分割合により臨時負担金があることもわかります。昨年行われたときは450万円で、9年後の費用は未定です。
仮に、快適なリゾート暮らしを望み、20年間保有するとしたら、リフォームと大規模修繕に1,400万円、管理費などの維持費で最低1,200万円。滞在コストとして光熱費や食費、自宅からの交通費など年間50万円とすると、退職金の5,000万円は底をつきます。
つまり、坂田さんの老齢資金はすっからかんになり、医療や介護を含めて生涯年金だけでやりくりしなければなりません。購入して1年ですでに2,000万円がなくなり、当初の計画では、年金と退職金で十分と考えていましたが、予想外の出費が重なり、老後破産の危機に直面することになったのです。
「ああ、せっかく手に入れたセカンドハウスがこんなに金食い虫だったとは……」嫁にいった一人娘にもこんな状況を話せるはずもなく……。落胆する坂田さん夫婦でした。
老後の夢を実現するには、慎重な計画と柔軟な対応がカギとなります。坂田夫妻のケースから学べる教訓をみていきます。
老後の夢を叶えつつ、資金を守るためのポイント
まず、65歳から90歳(できれば100歳)までの長期的な生活費を事前にシミュレーションしましょう。医療費や物価上昇を見込んだ余裕のある資金計画が重要です。セカンドハウスなどの大きな投資を検討する際は、購入前に必ず以下のポイントをチェックしていくことです。
・維持費や改修費の総額
・季節ごとの利用可能性
・賃貸でのトライアル検討
・将来の売却可能性
また、年金以外の収入源も検討し、リスクを分散させた資産運用を心がけましょう。年に1〜2回は家計の見直しを行い、状況に応じて計画を調整することも必要です。夢の実現と資金の安定を両立させるカギは、多角的な視点で計画を立て、専門家のアドバイスを受けながら、柔軟に対応することと言えるでしょう。
三原 由紀
合同会社エミタメ
代表
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