老人ホーム入居→「こんなはずじゃなかった!」を回避したいなら…〈お金〉よりも〈サービス〉よりも優先すべき“たったひとつ”の条件【安藤なつが介護ジャーナリストに聞く】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月26日 9時45分
(※写真はイメージです/PIXTA)
時代とともに、高齢者施設も「多様化」が進んでいます。費用もサービス内容もさまざまで、「自分たちだけではわからない!」と悩んでいる人も多いはず。そこで、介護ジャーナリストの太田差惠子氏と芸人の安藤なつ氏による共著『知っトク介護 弱った親と自分を守るお金とおトクなサービス超入門 第2版』(KADOKAWA)より、高齢者施設選びのポイントと注意点をみていきましょう。
〈登場人物紹介〉
●安藤なつ…介護歴約20年。現場のことはある程度わかるけれど、制度やお金のことについて詳しく知りたい。
●太田差惠子…取材歴30年以上の「介護とお金」に詳しい介護ジャーナリスト。費用を抑えるための介護制度や、プロの手の借り方について解説。
「費用」や「サービス」よりも最優すべき項目
CHECK!
□施設の場所は親の地元? 子どもの近く?
□親の意向を重視するのが基本
安藤:数ある施設のタイプの中からどう選べばいいのか迷ってしまいます。
太田:私がいつも皆さんにアドバイスしているのは、①エリア、②介護内容、 ③費用、この順番で施設を絞り込んでいくこと。適当な施設が見つからない場合は、場所を広げてもう1度検討してみてくださいとお伝えしています。
安藤:「エリア」が一番なんですね。
太田:親と同居や近居をしている場合は、近隣で探すのが一般的です。しかし遠距離に住んでいる場合は、親の地元、子どもの自宅近く、家族みんながアクセスしやすい場所など、考え方はいろいろあります。
安藤:そっか~。だったら、子どもが会いに行きやすい場所がいいですよね。
太田:ところが、親の地元が少なくないんです。というのは、地域が変わると方言や料理の味付けが変わってなじめないことがあるから。ずっと同じ地域で暮らしてきた親の場合、 地元を離れることはリスクなのです。
安藤:確かに、しょうゆひとつとっても地域によって違いますからね~。
太田:ただ、親が医療的ケアを頻繁に必要とする場合は、子どもの近くがいいかもしれません。というのは、入院するとどうしても家族の対応が必要になるため、そのたびに駆けつける必要があるからです。
安藤:介護内容は施設のタイプ別で考えればいいんですよね。
太田:そうですね。今だけでなく、将来、要介護度が上がったときのこともイメージして選ぶ想像力も必要です。
安藤:費用が一番の問題かと思いましたが、最後なんですか。
太田:もちろん費用も大切ですが、生活する場なのでエリアや介護内容といった条件から探していくのが「こんなはずじゃなかった」とならないためのポイントです。
「ググって最初に出てきた業者」には要注意
CHECK!
□まずはインターネットで情報収集
□紹介業者はメリットとデメリットを理解して活用
安藤:今どき情報を探すなら、まずインターネットですね。
太田:検索エンジンで上位に表示されるページの多くは民間の紹介業者のサイト。場所や費用などの条件を入力すると、候補となる施設を一覧にしてくれる機能などがあるので便利だと思う人も多いようです。
安藤:施設探しの、サポートなどもしてくれるんですよね。
太田:はい。施設探しの相談をしたり、見学の手配をしてくれます。通常、依頼しても費用がかかることはありません。
安藤:それって、すごくいいじゃないですか。使わない手はありませんね。
太田:ちょっと待って! 業者はボランティアではありません。相談者に費用は請求しませんが、その代わりに契約が決まると施設から成功報酬を受け取る仕組みのところが多いです。そこを認識して利用してください。
安藤:それって、手数料が高い施設を積極的にすすめてるってことですか?
太田:そうですね。そういうことがないとは言い切れません。
安藤:え~、そうなんですか。高齢者施設に詳しいと思って、全面的に信頼してしまいそうでした。
太田:不動産業者と違い、資格も免許も必要ありませんから、業者はもちろん相談員も千差万別と考えたほうがいいでしょう。
介護について困ったら、まずは「地域包括支援センター」へ
安藤:紹介業者に当たる以外に情報を集める方法ってあるんですか?
太田:介護について困ったことがあったら、まず地域包括支援センターへ行ってみてください。自治体によっては施設のパンフレットなどを作成しているところもありますし、民間の業者では紹介してくれない公的施設(特別養護老人ホームなど)の情報も聞くことができます。
安藤:なるほど! 民間の紹介業者は公的施設を教えてくれないんですね。
太田:近所の人や、地元に住み続けている昔の同級生といった知人の口コミも情報源としては重要です。身近な家族や親族が施設に入居している人に話を聞くと、きっと参考になることがあるはずです。
施設見学は「最低3ヵ所」行ってほしいワケ
CHECK!
□少なくとも3カ所、できれば5カ所の見学を
□見学だけでなく体験入居でのお試しも
安藤:施設を決めるときは、見学に行かなくちゃいけませんよね?
太田:もちろんです! 実際に見学に行ってみると、パンフレットやサイトを見ただけではわからないことをたくさん発見できます。少なくとも3カ所、できれば5カ所くらいの施設を見学してください。
安藤:3~5カ所を見学する時間を作って実家へ帰るのは難しい、という人も多いんじゃないでしょうか。
太田:そういう人は「施設とはどんなところか」ということを知るために、親を呼び寄せる予定はなくても自分の生活圏にある施設へ見学に行ってみるといいですよ。
設備や介護サービスの様子を実際に見ることで知識量が増えますし、費用についても説明を受けると仕組みを理解できるようになります。いわば「予行演習」ですね。
安藤:それ、いいですね。はじめての見学だと「へえ~」「そうなんだ~」で終わってしまい、質問などできなそうですもん。
太田:できれば親子一緒に見学に行くのがベストですが、親の体調によっては難しい場合もあるでしょう。まずは子どもだけで見学し、絞り込んでから親も一緒に行くというのが現実的かもしれません。
安藤:具体的には、どんなことをチェックすればいいんですか。
太田:パンフレットに書かれている建物の設備、医療連携や費用の仕組みなどの説明を受けるのはもちろん、現場で実際に働いている人から日常の様子を聞いてください。民間施設では営業担当が案内してくれることが一般的です。事前に施設長やケアマネジャーと話したいと、アポイントを取っておくといいですよ。
安藤:確かに雰囲気とか、においは行かないとわかりませんよね。
「ランチタイム」の見学で、食事だけでなく人間関係も把握できる
太田:見学に行く時間帯としておすすめなのはランチタイム。予約をしておけば試食ができる施設も多くありますし、その時間になると入居している人が食堂などの共用スペースに集まってきます。
食事の内容はもちろん、入居者の年齢や男女比、どのくらいの要介護度の人が多いのか、どんな介助を受けているのか、入居者とスタッフはどんな会話を交わしているのか、といったことを一度に見ることができるからです。
食事が合わないとツラいから、ぜひ試食したいですね~。
安藤 なつ メイプル超合金 ヘルパー2級(介護職員初任者研修)
太田 差惠子 介護・暮らしジャーナリスト
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