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フィリピン「110の新興国・再生可能エネルギー投資」ランキングで2位浮上のワケ

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年12月16日 7時15分

フィリピン「110の新興国・再生可能エネルギー投資」ランキングで2位浮上のワケ

写真:PIXTA

一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクターの家村均氏が、フィリピンの現況を解説するフィリピンレポート。今週は投資先としてのフィリピンの評価について、BloombergとOECDのレポートを解説していきます。

比、再生可能エネルギー投資、新興市場で世界第2位

フィリピンは2024年版BloombergNEFの「Climatescope」報告書で、再生可能エネルギー(RE)投資におけるランキングで、新興市場で世界第2位にランクされました。同ランキングは110の新興市場を対象に評価しており、フィリピンは前年の4位から順位を2つ上げ、過去最高の評価を得ました。総合スコアは5点満点中2.65ポイントで、「基盤」、「投資機会」、「経験」の3つの指標に基づいて評価されています。フィリピンは2021年以降、再生可能エネルギー分野で着実に成長しており、初めて2位にランクインしました。

フィリピン政府は2030年までに電力供給に占める再生可能エネルギーの比率を35%に引き上げる目標を掲げており、アジア太平洋地域(APAC)で唯一、オークション制度、ネットメータリング、税制優遇、クリーンエネルギー目標といった政策を整備しています。このような政策の充実により、同報告書の「基盤」スコアでは3.83ポイントを獲得し、新興市場で最高点を記録しました。また、「投資機会」のスコアでは2.11ポイントで8位にランクインしました。

2022年11月以降、フィリピンでは、再生可能エネルギー分野における外資の完全所有が解禁されました。これにより、外国企業は太陽光、風力、バイオマス、海洋エネルギーなどの資源開発に完全参入できるようになりました。それ以前は、外資の出資比率が40%に制限されていました。この政策変更以降、再生可能エネルギー分野への投資に対する外国企業の関心が高まっていますが、過去5年間におけるRE投資総額52億ドルのうち、外国投資は全体のわずか7%にとどまっています。

フィリピンでは電力需要が急増しており、2014年から2023年の間にピーク需要は63%増加し、2023年には19.2ギガワットに達しました。一方で、同国のエネルギー市場は依然として化石燃料に大きく依存しており、再生可能エネルギーの開発拡大が急務とされています。エネルギー省(DoE)は、「このランキングは、世界がフィリピンのクリーンエネルギー転換と持続可能な成長へのコミットメントに信頼を寄せていることを反映している」と評価しました。また同省は、「外国企業の参入が増えることで、RE市場の可能性をさらに引き出せる」と期待を寄せています。

2024年から2030年にかけて、フィリピンでは17,248.53メガワットの電力プロジェクトが予定されており、そのうち1,870メガワットは運転開始が予定されています。また、2028年までに年平均5.3%のピーク需要増加が予測されており、再生可能エネルギーの開発を加速させる必要があります。

フィリピンは群島国であるため、太陽光発電や風力発電が適しており、オフグリッド地域での展開が期待できます。投資促進庁(BoI)は2023年11月までに1.5兆ペソ(約3兆円)の投資を承認し、そのうち90%以上が再生可能エネルギー分野に集中。引き続き需要増加に対応するため、さらなる投資とプロジェクトの加速が必要とされています。

経済協力開発機構「IPO要件緩和」を提案

経済協力開発機構(OECD)はフィリピンの資本市場の発展を促進するため、株式市場への上場要件の緩和と手数料の引き下げを提言しました。2023年12月に発表されたフィリピンの資本市場レビューによると、同国の新規上場企業数と新規株式公開(IPO)による資金調達額は2000年以降、東南アジア諸国連合(ASEAN)のなかで最も低い水準にとどまっています。

OECDは、上場要件が他国と比べて厳しく、手続きが煩雑で柔軟性に欠ける点を指摘しました。IPOの承認にはフィリピン証券取引所(PSE)と証券取引委員会(SEC)の両方の承認が必要であり、プロセスの遅延が企業の上場意欲を削ぐ要因となっています。最適な市場環境を逃す可能性があるため、上場プロセスの迅速化が求められています。

OECDは上場申請を一本化し、IPOの承認期間を3カ月以内とすることでプロセスの効率化が図れると提言しました。SECはすでに45日間の処理期間を導入し、簡素化に取り組んでいると述べています。

フィリピンにはIPOの潜在的な候補となる企業が約400社存在します。2021年時点では、資産額が56億ペソを超える非金融系の大企業が411社ありました。これらの企業の市場参入を促すことで、資本市場の拡大が期待されます。SECは中小企業(SME)向けの上場促進策も展開しており、国内各地での資本市場ロードショーを通じて関心のある企業を支援しています。

また、他のASEAN諸国では国有企業(SOE)の上場が市場拡大の鍵となっており、フィリピンでも同様の取り組みが期待されています。現在、フィリピンでは上場している国有企業はありませんが、シンガポール、インドネシア、マレーシア、ベトナムでは国有企業が市場の主要なプレーヤーとなっています。

OECDは、フィリピンでも主要なSOEの少数株を上場させることで資本市場の拡大が図れると提案しています。特に総資産が3.1兆ペソ(約615億ドル)のLand Bank of the Philippinesと、総資産が1兆ペソ(約200億ドル)のDevelopment Bank of the Philippinesは注目されています。ただし、これらの銀行は立法修正が必要な特別法人であるため、上場には法改正が必要です。

2023年には、OceanaGold Philippines, Inc.、Citicore Renewable Energy Corp.、NexGen Energy Corp.の3社のみがIPOを実施し、PSEの目標であった6社には届きませんでした。しかし、2025年には6社のIPOと1,500億ペソ(約30億ドル)の資金調達を目指しています。資本市場のさらなる発展に向けて、規制の緩和と市場参加の促進が重要な課題となっています。

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