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銀行になんて任せるんじゃなかった…地主だった父の遺産は7億円。「俺は長男だから!」急にイキり始めた兄と「何もしない」銀行の板挟みになった〈52歳女性〉が後悔したワケ【相続の専門家が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年12月16日 10時15分

銀行になんて任せるんじゃなかった…地主だった父の遺産は7億円。「俺は長男だから!」急にイキり始めた兄と「何もしない」銀行の板挟みになった〈52歳女性〉が後悔したワケ【相続の専門家が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

父親が亡くなり、兄と妹と3人で相続手続きをしていた瑞希さん(52歳女性)。公正証書遺言を見つけたものの、その執行者は父親が生前取引していた「都市銀行」でした。遺産の8割が土地ということで途方に暮れる瑞希さん。本記事では相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が相続対策について詳しく解説します。

父の遺言書の執行者は「都市銀行」

52歳の瑞希さんは、95歳でこの世を去ったお父様の相続で困っているということで相談に来ました。

現在、父親が亡くなって、相続人である兄と瑞希さん、妹の3人で相続の手続きをしているところです。

父が残した財産は相続税の申告が必要なものでした。兄から公正証書遺言があると知らされたのですが、それは父親が取引していた都市銀行が遺言執行者になっている内容だといいます。

父の財産は約7億円。相続税は2億円を超える金額で…

父親の財産は広い自宅と貸宅地で、土地が財産の8割を占めています。母親はすでに亡くなっていますので、配偶者の特例が使えず、また、同居する子どももなく、それぞれ自宅を所有していますので、居住用の小規模宅地等の特例も使えません。適用できるのは、貸宅地で貸付用の小規模宅地等の特例、200㎡まで50%減できる程度のものです。

しかしながら父の財産は約7億円、相続税は財産の30%、2億円を超える額になりそうということです。

相続税の申告に関しては、毎年の確定申告を担当していた税理士法人に依頼をしており、公正証書遺言を作成するときも、この税理士法人と銀行が中心になって進めたようです。

遺言書の証人になった銀行員2名はすでに退職!?

実家を維持したいという話は兄から言われたことですが、公正証書遺言の執行者になっている銀行からは特に詳しい説明はありません。また、遺言書の証人になった行員2名の女性はすでに退職していないということで、取引のある支店の担当者が対応しています。

相続税の申告を担当する税理士法人からは、1人7,000万円程度の相続税の納税が必要だという説明を受けています。

貸宅地は3人に適度に割り振っての相続ですので、個々に売却をして、納税資金に充てたいと思うのですが、具体的に今後どのようにしていけばよいか、詳しい説明もなく、不安に思っているということです。

そんな中、兄が実家を残したいと言い始めて

公正証書遺言の中で特に瑞希さんが困っているのは、広い自宅の土地についての記載です。兄、瑞希さん、妹の3人で3分の1ずつ相続するようにと書いてあります。

生前、父親は一人暮らしをして、広い自宅や庭、樹木などの管理をしてきました。瑞希さんと妹は結婚して実家を離れて久しく、また、実家に戻る気はありません。納税資金が足りないこともあり、売って3等分にしたいと思っています。

ところが、兄がそれについては反対だというのです。兄自身は父と同居してこなかったというのに、今になって「実家は残す」というのです。父親は本家の長男でしたから、実家のまわりには親戚が大勢いて、また実家には仏壇もありました。急に「俺は長男だから!」と張り切り始めまた兄。仏壇を売るわけにはいかないということで、自分が維持していくと言い張るのです。

しかし、自宅を維持するとなれば、当然、固定資産税や庭木の手入れなどが必要で、維持費は年間100万円以上になる見込みです。それでは正直、負担しかありません。

貸宅地の地代を固定資産税の支払いに回していた父

父親は「貸宅地の地代収入」で生活をしていました。土地が多く、自宅の土地も広いので、毎年の固定資産税は500万円以上もかかり、それに対して貸宅地の地代は月額60万円程度。固定資産税はぎりぎり払えますが、残りだけでは生活ができない状況です。

しかし定年まで勤めていたお陰で年金がもらえてたので、なんとか持ち出しにはならない程度で賄えていたようでした。

遺言書には、貸宅地は瑞希さんと妹の2人が4か所ずつ相続するようにと指定されていました。瑞希さんも妹も、貸宅地を維持する気はなく、売却して納税資金にするつもりだといいます。

銀行から、貸宅地は現状想定額の半分以下でないと売れないと言われて…

父親の預金は約7,000万円で、財産の10%程度。預金だけでは相続税は払えません。よって、あとの20%は不動産を売却して現金を捻出する必要があります。

今後の生活を考えると、相続した預金は残して、納税資金は不動産から捻出することが妥当かと考えられます。しかし現状、銀行からは、貸宅地の評価が高すぎると言われ、実際の売却は現在の評価額の半分以下でないと売れないだろうと、不安なことばかり聞かされているといいます。

そもそも銀行は、相続・遺言書・不動産の専門家ではない

瑞希さんの父親は土地持ちの資産家でしたので、銀行にとっては優良顧客だったでしょう。それだけに相続になったときにも売上につながるだろうという判断がなされ、現在の公正証書遺言につながったのでしょう。

しかしながら、実際のところ、彼らは相続の専門家ではありません。財産の分け方や納税についてはほとんどノープランで、相続人である子どもたちが困らないようにしたいという発想もなかったと思えます。

一方、自分たちの報酬に関する記載は明確で、財産の1%を遺言執行料とすると明記されていたのです。700万円以上の報酬になりますが、瑞希さんは、「遺言書の作成には既に100万円以上も払っていて、さらに今回は何もしてもらってすらいないのに、700万円以上も払わなければならないのでしょうか?」と嘆いていました。

父親の生前対策は、どうしておくべきだったのか?

もうすでに父親が亡くなられてしまっているので、間に合わないことではありますが、仮に相続対策の専門会社である夢相続がサポートできていたとすれば、次のような対策をご提案します。

節税対策

自宅の土地がかなり広く、またほとんど空き地であったため、自宅を3分の1程度とし、残る3分の2は土地活用して賃貸マンションを建てる。あるいは売却して資産組替し、別の立地に賃貸不動産を購入する。

これだけで相続税は半分以下に減らせます。

納税対策

納税は貸宅地を予定するなら、生前に売却をして資産組替をする。というのも、貸宅地の多くが評価以下にしか売れないため、生前の売却が望ましいから。

相続になった場合でも、申告期限までに売却し、時価申告をすれば、相続税はうんと減らせます。

分割対策

自宅を売却して分ける場合は共有でもいいが、残して維持したい場合は、共有にするのは避けたいところ。

生前に残すところ、売却するところを決めて、分筆して単独で保有、処分できる形にしておくことが望ましいと言えます。

亡くなってからでもできること

節税対策

貸宅地の多くが評価以下にしか売れない見込みの場合は、申告期限までに売却し、時価申告をすれば、現実的な評価となり、相続税が減額できます。

納税対策

貸宅地の売却だけでなく、自宅の一部も売却しないと納税できません。自宅の残し方、売却の仕方を効率よく、納付期限までにして売却代金で納税できるようにします。

分割対策

遺言書では自宅は子どもたちが3分の1ずつ相続するとしか記載がないようですが、それでは土地のすべてが共有になります。共有にしたままだと、意見の相違などが生じた場合、対立してしまう可能性もあります。

残すところ、売却するところを決めて、分筆し、残すところは単独名義として、売却するところは3分の1のままで売却するのがよいでしょう。

遺言執行者を依頼しないこともできる

公正証書遺言があり、遺言執行者が指定されているとしても、合意により、遺言執行を依頼しないこともできます。それには相続人全員の総意であることが必要で、遺言執行者の理解も必要です。

遺言執行者の合意が得られない場合、適任ではないとする理由があれば、家庭裁判所で遺言執行者の解任手続きを申し立て審判を下ろしてもらうようにします。

相続実務士のアドバイス

瑞希さんのお父さんは付き合いのある銀行なので良くしてくれるだろうと思って勧められるままに公正証書遺言を作られたと思うのですが、相続の専門家であればもう少し具体的な内容にして、相続人が納税に困らないよう、工夫されると思います。

頼むのが銀行だから安心とは言えず、相続、遺言書、不動産に慣れた専門家に依頼しないと、瑞希さんご兄妹のように何千万円も損することになりかねません。

いずれにせよ、今からでもできることをサポートさせていただき、少しでも不安が解消できるよう取り組みます。

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

曽根 惠子 株式会社夢相続代表取締役 公認不動産コンサルティングマスター 相続対策専門士

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp)認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

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