お正月が怖いです…。年金暮らし70代夫婦、孫7人が勢揃いする年末年始を楽しみにしている一方、内心抱える〈切実な悩み〉【FPの助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年12月26日 8時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
年末年始の帰省ラッシュがまもなく訪れるなか、かわいい孫との時間を楽しみにしている祖父母の方も多いのではないでしょうか。しかし、喜びの一方で「孫疲れ」とも呼ばれる負担を感じている方も少なくありません。今回は、年金暮らしの鈴木さん夫婦(仮名・70代)の事例とともに、年末年始の孫との楽しい時間を維持しつつ、自分たちの「健康と家計」を守るヒントについて、南真理FPが解説します。
年末年始、家族一同が集まるのは楽しみだが…「このままで大丈夫?」
鈴木憲正さん(73歳)は、都心の郊外で妻・恵美子さん(71歳)と2人暮らしです。もともと会社勤めで、65歳で完全リタイア。現役時代に購入した自宅のローンも退職金を使って完済しています。今は年金暮らしで、残りの余生は、夫婦仲睦まじく過ごしたいと思っていました。
鈴木さん夫婦には3人のこどもがおり、孫も7人います。年末年始はいつもこども夫婦が孫と帰ってきて、新年を迎えます。孫は中学生から下は4歳と幅広い年齢層。特に妻・恵美子さんは、年末年始にこどもたちや孫に会えることを楽しみにしています。
しかし、楽しみにしている反面、最近は別の感情も生まれるようになりました。みんなを迎えるためにキッチンに立ち続けて料理をしたり、孫の相手をして出かけたり、そういったことが負担になってきたのです。
「こどもや孫たちに会えるのは嬉しいけれど……。こども夫婦が6人、孫が7人ですから、とんでもなく騒がしいんです。年末は30日ぐらいにうちに来て、1月3日ぐらいまでいるんです。5日間、毎日孫の相手をするのは大変ですよ。私たち、普段は朝6時に起きて夜は21時ぐらいに寝てしまうんですが、こどもや孫がくると夕食も寝る時間も遅くなるんです」
ここ1、2年はみんなが帰った翌日は、鈴木さんも妻の恵美子さんも、起き上がれないくらい疲れてしまい、体調を崩すようになってしまったそうです。
「会う前はすごく楽しみなんです。でも数日経つと、早く帰る日にならないかなと思ってしまうことがあります。それに、年末年始はみんなを迎えるために出費がかなり多くなります。本当にこのままで大丈夫なんでしょうか」
鈴木さんはそう悩むようになっていました。
鈴木さん夫婦が孫に使っているお金はいくら?
まずは、鈴木さん夫婦が孫に「何に」「どれだけ」お金を使っているのか確認していきましょう。
―プロフィール
●夫:鈴木憲正さん(73歳、無職)
●妻:鈴木恵美子さん(71歳、無職)
・長女(45歳・会社員):孫2人(中学校2年生、小学校6年生)
・長男(43歳・地方公務員):孫2人(小学校5年生、小学校3年生)
・次男(41歳・会社員):孫3人(小学校4年生、小学校1年生、年中)
※長女は近所に住んでおり、週末たまに夕食を共にしています。
※長男・次男は遠方に住んでいるため年末年始に帰ってきます。
―鈴木さん夫婦の年金と金融資産
〈年金〉
世帯の年金合計額:年300万円(月25万円)
(内訳)
鈴木憲正さんの年金額:年228万円(月19万円)
鈴木恵美子さんの年金額:年72万円(月6万円)
〈世帯の金融資産〉
預貯金:1,500万円
―鈴木さん夫婦の孫への支出額
年25万円
(内訳)
お年玉:年5万円
年末年始の食費等:年10万円
お小遣い、お祝い金、誕生日プレゼント等:年10万円
鈴木さん夫婦は、日々の生活費(食費や光熱費、通信費、日用品費等)は、年金で賄っています。孫に使うお金の不足分は、貯蓄から捻出している状況です。
現在、まだ小さい孫が多いのでお年玉の金額が少ないですが、例えば高校生以上の相場は1人に対して5000~1万円程度です。年末年始以外に渡すお小遣いの金額もアップしますし、プレゼントなども小学生と高校生では欲しがるものがまったく違ってきます。食べる量が増える分、食費も一層増えるでしょう。
そう考えると、年間25万円で済んでいるのは今のうちだけ。孫が育っていけば、それよりずっと費用がかさむ可能性が高くなります。
孫疲れ解消のためにできることは?【FPの助言】
鈴木さんが段々と感じるようになった「孫疲れ」を解消するために、今後はどうすべきなのでしょうか。まずは、自分たちができることを「体力面」と「経済面」に分けて整理しておくといいでしょう。
健康寿命という言葉をご存じでしょうか。健康寿命とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間のことをいいます。
2019年において、健康寿命は男性が72.68歳、女性が75.38歳となっています。あくまで平均であり、鈴木さん夫婦は現在も心身ともにお元気ではあるものの、段々と自分たちの体力面にも配慮して、年末年始の家族との時間を楽しむようにするのも大事なことです。
孫の帰った翌日、起き上がれないほどの疲労が残るなら、自分たちの状態をこどもに伝え、掃除や食事の買い出し、準備の協力を依頼することもひとつの選択肢でしょう。こどもたちも、無理をしてまでやってほしいとは思っていないはずです。
段々と体力がなくなっていることを正直に伝えることで、年末年始をもっと楽しく過ごすことができるのではないでしょうか。
経済面では、医療費と介護費は、孫のために使うお金とは別に確保しておきたい費用になります。令和3年に厚生労働省が生涯医療費は約2,700万円と公表しています。生涯医療費とは、生まれてから生涯にどれくらいの医療費が必要になるかを表したものになります。
このうち、約85%は公的医療保険から賄われることになり、約400万円が自己負担額という計算になります。さらに、70歳以降が生涯医療費の約50%を占めるといわれており、必要な金額は約200万円となります。
また、介護費用について生命保険文化センターが行った調査によると、介護に要した費用は、住宅改造や介護用ベッドの購入費など一時的な費用の合計は平均74万円、月々の費用が平均8.3万円となっています。
介護にかかった期間は61.1ヵ月(平均5年1ヵ月)としているため、約600万円弱(一時金74万円+月8.3万円×61.1ヵ月)かかる計算となります。
医療費・介護費共に、あくまで平均額となり参考値のため、人によって差がある点には注意は必要です。しかし、将来的にかかる医療費と介護費を念頭に置いたうえで、孫のためにお金を使うほうが、年末年始の孫との時間を不安なく過ごすことができます。
年末年始の機会にこれからのことを家族で話し合ってみる
70歳を超えてくると、孫との向き合い方も体力面に配慮して行動することが大切です。さらに、経済面についても、優先すべきは自分たちの生活になります。孫にお金を使いすぎて、自分たちに必要な生活費や医療費、介護費が足りないとなれば、結果的にはこどもや孫に迷惑をかけることになります。
そういった意味でもきちんと予算決めをしておくということは大変有効です。また、もっと具体的に知りたい場合には、専門家に頼んでライフプランを作成し、将来にかかるお金を把握しておくと安心です。
そして、年末年始に家族一同で会う機会があるのなら、健康面のことや介護が必要になったときに自宅での生活をいつまで望んでいるのか、どのような医療を受けたいのかといった考えを伝えておくといいでしょう。
また、現在の年金や貯蓄とその使い方、万一のときの備えなど話す時間を持つこともおススメです。家族だからこそ改まって話さないことを、あえて話すことでお互いの考えを共有できます。それがいらぬ孫疲れを払拭する一番の手段といえるのではないでしょうか。
〈参照〉
- 健康寿命とはどのようなもの?|リスクに備えるための生活設計|ひと目でわかる生活設計情報|公益財団法人 生命保険文化センター
https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/1160.html
- 医療費の見える化について|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/newpage_21420.html
- 厚生労働省|生涯医療費(令和3年度)
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/mieruka_2021.pdf
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