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ねえ、そろそろ出ていってくれない?〈59歳姉〉の提案に4歳年下の妹、激怒。89歳父が亡くなった途端、修羅場と化した〈不動産評価額6,000万円〉〈姉妹二世帯住宅〉の悲劇「こんなはずでは」【相続の専門家が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年12月18日 10時15分

ねえ、そろそろ出ていってくれない?〈59歳姉〉の提案に4歳年下の妹、激怒。89歳父が亡くなった途端、修羅場と化した〈不動産評価額6,000万円〉〈姉妹二世帯住宅〉の悲劇「こんなはずでは」【相続の専門家が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

きょうだい間でかつて暮らしていた実家を何とか残そうとする心意気は見上げたものですが、実際それに伴うストレスやトラブルが多いのも現実です。本記事では相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実家の相続に伴いトラブルとなった二つの事例における相続対策について詳しく解説します。

事例1:二世帯住宅は修羅場にもなる!?

姉妹夫婦同居の二世帯住宅(実家)で、父の面倒を見てきて

89歳の父親が亡くなったと、妹と2人で相談に来られた佐藤さん(59歳女性)。母親はすでに亡くなっており、佐藤さん家族と妹家族が二世帯住宅の実家で同居をしながら、父親の面倒を見てきたといいます。

もともとは両親が1階に住み、2階が佐藤さん夫婦とその子供2人の6人でスタートした二世帯住宅でした。ところが母親が先に亡くなって、1階は父親のひとり暮らしに。子どもたちも仕事の関係で独立してしまい、仕事をしている佐藤さん夫婦では父親の面倒を見ることが難しくなりました。

そこで55歳の専業主婦の妹に父親の世話をお願いする運びとなり、元々妹の住んでいた家は妹の子供夫婦に住まわせ、妹夫婦が佐藤さんの実家に引っ越すことで、父親の面倒を見るという生活が始まったのです。

預金は3,000万円、不動産評価額は6,000万円。どう分ける?

妹夫婦のお陰で、父親は不安なく老後の生活ができ、佐藤さん夫婦も今までのペースで生活ができ、うまくバランスが取れていると思っていました。父親は遺言書を残さずに亡くなりましたので、姉妹で遺産分割協議が必要です。

佐藤さんの考えは、姉妹で等分にということです。妹もそれについては異論がなく、3,000万円ほどの預金は解約して半分にすることはすんなり合意が得られました。

家は築30年程ながらまだしばらく住めるといいます。土地は50坪で、二つに分けると細長くなり、今の大きさの家は建ちません。評価は6,000万円ほどあり、現金の約2倍です。どちらかが不動産、どちらかが現金という分け方では、アンバランスになってしまいます。

実家を売りたい姉と売りたくない妹…

結果、現金を等分にしたように、実家を売って二等分にすることが現実的な選択肢ではということになりました。

ところが、ここから足並みがそろいません。夫が定年になり、庭の手入れがいらないマンションに住替えたいという佐藤さんと、まだ実家に住んでいたい妹の意見が違うのです。佐藤さんはすぐに売って住み替えたいのに、妹は1年とか3年では売却は考えられない、5年でも短いという意見なのです。ある日、佐藤さんが妹に「ねえ、そろそろ出ていってくれない?」と持ちかけたところ、妹は「私たち夫婦が引っ越してまで助けてあげたのにお姉ちゃんは勝手すぎる!」と激怒し、それ以来、姉妹の仲は険悪に……。

家を売却するには2人の合意がないと進みませんし、住んでいる妹家族が引っ越ししないと売れません。いずれにしても合意が必要で、どちらか一方で進めることはできません……。妹のものすごい剣幕に、姉も自分がいかに勝手なことを言っているかに気づき、2人で相談に来たというわけです。

合意書を作って財産を分ける期限を決めておく

そこで弊社が提案したのは、遺産分割協議書を作成するときに、合意書も作成して、実家を売却して財産を分ける期限を決めておくということです。

本来は、相続税の申告が終わり次第財産を分けるのが一般的なスケジュールですが、すぐに分けられない状況であれば、約束事を書類にして、それを目安に進めていくという方法です。

建物は老朽化してきますので、いずれかの時期に同じ問題が生じます。姉妹でルール作りをして分けていくことが必要でしょう。佐藤さん姉妹には、お二人の意見の間を取り、税金の特例が生かせる「相続後3年」を目安に売却されることをお勧めしました。現在、検討中の模様です。

事例2:空き家の実家を兄妹で共有したことが不幸の始まり

夫の実家を相続

田中さん(52歳女性)は、5年前に急死した夫から、夫の実家の土地、建物を相続しました。夫は3人兄妹の長男で、弟と妹がいます。義父は20年前に他界しており、その後、義母は一人暮しをしてきました。

長男である夫をはじめ義弟、義妹も、両親と同居はしてきませんでしたので、義母が亡くなったとき、空き家になった実家は3人で3分の1ずつ相続しようという話に落ち着きました。その後、13年間、実家は空き家になっています。

実家は、義妹と二人で共有で

実家の一番近くに住んでいたのは次男です。次男は「実家は自分が買い取る」といい、田中さんの夫も義妹もそれに同意して準備を進めていたのですが、なんと次男が急逝。代わりに夫と義妹が次男分を買い取るようにしたことから、結果、夫の実家は、夫と義妹が2分の1ずつ所有する形となっていました。

今回、田中さんが相談に来られたのは、この共有に関することでした。夫が亡くなった5年前より、義妹と共有しているが、何事も義妹のペースで進められ自由度がない上に、空き家の維持にかなりの費用がかかるとのことで、負担が大きく、どのように対処すればよいかという旨のものです。

共有を解消するには

共有解消の方法は、①一緒に売却してお金を等分にする、②どちらかが一方の権利を買い取り単独にする、③土地を2つに分筆して単独にする、が想定され、このうちのいずれかが選択肢となります。

これまでは、夫の兄妹3人とも、誰かが所有して残してくれたらという気持ちで合意をしていたため、3人の共有がスタートしたのですが、いまや長男、次男が亡くなり、義妹だけになっています。

共有者の田中さんは長男の妻の立場で、実家で生まれ育った義妹とは明らかに気持ちの温度差があります。しかも、離れた立地に行くにも時間がかかり、固定資産税、光熱費、庭の手入れ代などの維持費も高く、大きな負担になっているといいます。

実家を売りたくない義妹

一緒に売却することが一番すっきりする方法ですが、義妹は自分の実家は売りたくないので、買い取るにしても、時価ではなく、路線価以下でないと了解しないと言っているようで、それでは田中さんも不本意なところです。

確認すると、夫の実家の土地は150坪で、十分な広さがあり、角地ですので、半分に分筆できる地形です。実家の建物は築50年と老朽化しているため、この際に解体し、土地を二つにわけて義妹と田中さんの単独名義にし、田中さんは売却するという方法もあります。

方法論はいずれでもいいので、共有解消する必要がありますが、何事も義妹との共有名義というところで、田中さんの一存ではなにも進みません。

第三者に交渉依頼を

円満な合意を導き出すことが理想ではありますが、状況によっては第三者に交渉を依頼することも致し方ないかもしれません。

まずは、田中さん自身が決断して義妹に共有解消を申し入れることをお勧めしましたが、義妹の反応次第で、弁護士がサポートする方法が必要だと言えます。

いずれにしても「空き家」の持ち出し状態で13年。収入面ではマイナスで負担しかない状態というのは、根本的な解決が急務でしょう。

まとめ

実家を残してもらいたいという親の気持ちも、実家を残したいと思う子どもたちの気持ちもあって、実家を残そうとするご家庭が非常に多いといえます。美談ではありますが、それに伴うストレスやトラブルが多いことも現実です。

不動産を兄妹で共有するということは、次の相続が発生した際、兄妹の配偶者が共有者になる可能性もはらんでおり、なおさら問題が深刻化するきらいがあります。空き家になっても実家を維持したいという気持ちがあると、なかなか問題が解決しにくいでしょう。

住まない実家は役割を終えたと考え、使ってくれる人に譲渡していくよう、発想を切り替えること、また、財産は共有ではなく分けること、が大切になります。共有するときは解消するゴールを決めてからとして、ストレスを抱えることのないよう、決断されることをお勧めします。

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

曽根 惠子 株式会社夢相続代表取締役 公認不動産コンサルティングマスター 相続対策専門士

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp)認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

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