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「年末くらいは海外旅行に行きたい」→「よそはよそ、うちはうち」…年金月28万円、妻のお願いを無視し続けて高卒叩き上げ・67歳夫が達成した“羨望の貯蓄額”【FPの解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年12月24日 10時45分

「年末くらいは海外旅行に行きたい」→「よそはよそ、うちはうち」…年金月28万円、妻のお願いを無視し続けて高卒叩き上げ・67歳夫が達成した“羨望の貯蓄額”【FPの解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

日本は世界でもトップクラスの長寿国。長い人生において、家計管理は生涯重要です。現役時代は一家の大黒柱として頑張ってきた人たちのなかには、収入状況が変わる定年後、いつまで続くかわからない老後のお金の使い方について迷う人も多いようで……。本記事では、吉田さん夫婦の事例とともに、老後のお金についてFP dream代表FPの藤原洋子氏が解説します。

勤続42年、高卒叩き上げの夫が誇りを持って定年退職

吉田隆さん(仮名/現在67歳)は兄と姉、妹2人の5人兄弟の次男として生まれました。吉田さんの実家は、経済的に余裕があるとはいえない環境でしたが、穏やかな性格の父親と、しっかり者の母親を中心に、にぎやかに暮らしていたそうです。地元の高校を卒業後は、物流業界の大手企業に就職しました。現在は関西地方に住んでいます。

吉田さんは、大家族の中で揉まれながら育ったためか、自分の言いたいことややりたいと思ったことは、しっかりと主張し、行動に移すことのできる性格です。しっかりものの母親譲りの性格もあるかもしれません。有言実行で人望を集め、努力を欠かさない仕事ぶりを認められたため、会社での昇進は早く、60歳で定年を迎えるまで、関西の中核市にある支店の支店長として勤務していました。

社会に出てから、吉田さん自身も家庭を持ちました。妻(現在65歳、パート勤務)、長男(37歳、会社員)、長女(33歳、会社員)、保護犬の柴犬(2歳)です。子どもたちは、それぞれ結婚し、現在は妻と柴犬との生活です。定年後は、仕事上お付き合いのあった会社の社長に声をかけられ、再就職しました。

吉田さんは、結婚当初から妻には生活費として必要と思われる金額だけを渡し、自分の収入は自分で管理していました。料理、掃除、庭木の手入れなど一通りの家事は、苦にならずにこなします。むしろ仕事の息抜きとして、休日は好んで家事をします。安いものを買うのが好きで、無駄使いはしません。そのおかげで、妻は気楽でしたが、2人の財産がいくらあるのかまったくわかりませんでした。

60歳で退職を迎えた日、家族でささやかなお祝いをしました。退職金は2,000万円。大学を卒業した仲間もいるなかで、高卒で入社した自分がここまでやってこられたのは、家族のおかげと感謝すると同時に、本人の大きな自慢でもありました。

変わりない毎日に感謝しつつも疑問を訴える妻

吉田さんは、その次の日から、再就職した会社へ出勤。それから7年の月日が経過しました。吉田さんは、職場こそ変わりましたが、現役時代と同じように節約し、ときどき家事をして柴犬の散歩に行く、という毎日を送っています。妻は、健康でいままでと変わりない毎日に感謝しつつ、なにか納得できない気持ちを感じていました。

「ねえお父さん、私の友達のAさん、定年後は毎年夫婦で海外旅行に行っているんだって。世界一周したいっていってたわよ。私も年末年始にハワイへ行ったりクルーズ船に乗ったりしてみたいわ」

「よそはよそ、うちはうち。これでいいんじゃないか?」吉田さんはそう返します。

「私、不満があるわけじゃないのよ。でもね、少しはゆとりというか、そういうものを考えてもいいと思うんだけど……」

「でもさぁ、これからまだ数十年暮らしていくんだよ。いくらかかかるかわからないじゃないか」

「もう、少しは私の話も聞いて!」

吉田さん夫婦が相談にみえたのは、そんな会話があってしばらくしたころでした。

老後に必要になる資金を整理してみると…

吉田さん夫婦の資産は以下のとおりです。

●退職金……2,000万円

●貯蓄……3,000万円

●住宅・住宅ローン……一戸建て・60歳時に完済

●老齢年金……夫婦で月額28万円

●金融商品(株式、投資信託)……1,000万円

「す、すごいわね、お父さん」

初めて知った我が家の資産に妻は驚きを隠せない様子です。生活費は、老齢年金の金額内に収まることが多いそうです。お2人ともお仕事をなさっているので今後も貯蓄は増えていくと思われます。

今後の生活で必要になるお金は、どのようなことに使うお金でしょうか。想定される項目と金額を書き出して整理してみることをお勧めしました。

●自宅の補修:500万円

●車の買い替え:150万円、3回

●孫が生まれたら教育資金を贈与する:長男、長女の家庭にそれぞれ500万円ずつ

●介護費用:不明

●吉田さんが亡くなった後に妻が受け取る遺族年金:不明

●葬儀:100万円ずつ

●お墓:不明

想定している使い道の金額は、総額2,150万円です。いまの段階でも3,850万円の貯蓄が残ります。今回、不明となっている項目がわかりました。ご夫婦のお考え次第ということになりますが、不明部分のおおよその金額がわかれば、それ以外のお金は老後のゆとりのために使ってもいいお金ということになるのではないでしょうか。そうお伝えしました。

徐々に老後生活にシフトしていくという暮らし方

誰でも「いつまでも若々しく健康でいたい」と望みますが、「老い」は必ずやってきます。健康寿命は「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことで、平均寿命との差は、2019年の調査では、女性約12年、男性約9年あります。いつかそのうち、といって過ごしているあいだに、やりたかったことが実行に移せなくなる可能性もあります。

以前に比べると、健康寿命は少しずつ延び男女差も縮小しています。一方で医療や介護など、このような期間に対応する備えも重要です。夫の隆さんが亡くなった場合は、(1)と(2)の金額を比べて、高いほうを遺族厚生年金として支給されます。

(1)隆さんの老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額

(2)(1)の額の3分の2と妻の老齢厚生(退職共済)年金の2分の1の合計額

遺族基礎年金は支給されません。妻が老齢厚生年金を受け取っている場合には、自身の老齢基礎年金と老齢厚生年金、隆さんの遺族厚生年金と妻の老齢厚生年金との差額が支給されます。

介護保険、介護施設の種類や費用、お墓の費用などについても、近隣の施設を参考にするなどして、あらかじめ知っておきましょう。介護の場合の話やご本人が亡くなったあとの話は、「縁起でもない」「お金の話はしないほうがいい」という考えの人もいるでしょう。しかし、知らなかったために不利益になることもあり得ます。吉田さんご夫婦には、いい機会なので、ご夫婦やご家族で、お金のことについて話せる雰囲気を作っていかれることをお勧めしました。

<参考>

※  厚生労働省 e-ヘルスネット

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/hale/h-01-002.htm

※ 日本年金機構 遺族年金ガイド令和6年度版

https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/kyufu.files/LK03-3.pdf

藤原 洋子

FP dream

代表FP

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