恐ろしい…「“魔の二歳児”のような大人」はなぜ生まれてしまうのか?【モンテッソーリ国際資格保持者が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月22日 17時15分
子ども時代の教育は、仕事や結婚生活など大人になってからの人生にも大きく影響します。ここでは子ども時代の教育として、幼児期に焦点を当て、小学生になるまでに特に身につけるべき能力について、モンテッソーリ国際資格保持者である中内玲子氏が解説します。本記事は、中内玲子氏の著書『シリコンバレー式 世界一の子育て』(フローラル出版)より一部を抜粋・再編集したものです。
幼児期に育てたい「やる力」「やらない力」「望む力」
「やる力」「やらない力」「望む力」
ケリー・マクゴニガル※は、意志力には「やる力」「やらない力」「望む力」の3つがあると言っています。
※スタンフォード大学の生涯学習プログラムで「意志力の科学」を教えている健康心理学者たとえば、ダイエットをする場合、運動をするのが「やる力」、カロリーの高いものを食べないのが「やらない力」、理想の体型を思い描くのが「望む力」です。
「やる力」は、片づけや生活習慣、日常のルールから始め、4〜5歳くらいからは読み書きの練習なども取り入れながら、少しずつ鍛えていきます。そのうえで、最終的には小学校に入ってから、出された宿題を期限までに行うなどの自己管理能力が身につけられればよいと思います。
幼児期の子どもに特に身につけさせてあげたいのは、「やらない力」です。なんでもやりたい、触りたい時期の子どもに「やらない力」を身につけさせるのは簡単ではありませんが、幼児期に自己抑制能力を身につけられるかどうかが、その後の人生に大きく関わります。
長期的な展望を持ちにくい幼児期の子どもには、未来の自分の理想像を思い描くような「望む力」を育てるのは難しいかもしれません。けれど、子どもの「自分でやってみたい」「もっとできるようになりたい」という気持ちを刺激すれば、「望む力」を育てることはできます。
「やらない力」が人生を決める
「やらない力」が人生にどのような影響を及ぼすかを実証した実験として有名なのが、スタンフォード大学の心理学者ウォルター・ミシェルが行った「マシュマロ実験」です。
4歳の子どもを一人ずつ部屋に入れ、マシュマロを一つ置き、実験者は子どもとある約束をして部屋を出ます。その約束とは、マシュマロは食べたいときに食べていいが、実験者が戻ってくるまで食べずに我慢していられたらもう一つマシュマロをあげるというものです。実験者が部屋を出てすぐに食べてしまう子もいれば、我慢したものの待ちきれずに食べてしまった子、実験者が戻るまで15分間我慢できた子もいました。
この実験には、何年も経ってから驚くべき発見がありました。マシュマロ実験で我慢ができなかった子たちは、その後、学校などで問題を起こすことが多かったのです。ミシェルらが追跡調査をしたところ、15分間待っていた子どもたちは、30秒で誘惑に負けてしまった子どもたちよりもSAT(大学進学適性試験)の成績が210点も高く、大人になってからより収入の高い職業につき、肥満や薬物乱用などの可能性も低かったのです。マシュマロ実験は一例ですが、似たものはほかにもあります。
ニュージーランドで1000人の子どもを誕生から32歳まで追跡する大規模な調査が行われました。これは、子どもの自己コントロール能力を観察や、両親や教師、本人の報告などから多角的に評価し、追跡調査をしたものです。
その結果、自己コントロール能力の高い子どもと低い子どもでは、健康状態や経済的な豊かさ、結婚生活、犯罪率などに大きな差が見られたのです。
学力も左右する「実行機能」
意志力と似たものにハーバード大学子ども発達センターが提唱する「実行機能」があります。実行機能は、自己制御能力とも呼ばれ、重要なことに集中し、計画を立て、目標を達成するための力です。一生涯の能力の鍵となる要素で、「人生のコアとなるスキル」であるとされています。
実行機能は、空港の管制システムのようなものです。たとえば、子どもたちが「きちんと並びなさい」「おやつは何時」「お片づけをしましょう」など、さまざまな指示や情報を受けながら、それらを整理して今必要ではないものを排除し、「やるべきこと」に集中する力です。
実行機能は生まれて数年の間に大きく発達し、青年期まで発達します。ハーバード大学子ども発達センターでは、大人になるまでに実行機能を鍛えないと「魔の二歳児」のような大人になり、仕事や結婚生活、子育てに支障が出て、社会の一員として人と関わることが難しくなると指摘しています。
実行機能は、「作業記憶」「自己抑制能力」「思考の柔軟性」によって成り立つとされています。たとえば、お友だちと順番でゲームをする場合、「自分の番が来たときにカードを引く」と覚えておくのが「作業記憶」です。自分の番が来ていないのにカードを引きたい衝動を抑えるのが「自己抑制能力」、ほかの子が予想外のことをしたときに全体のルールを考えて調整するのが「思考の柔軟性」です。
ここでも「実行機能」と「自己抑制」、つまり「やる力」と「やらない力」が重視されているのです。実行機能も脳と大きく関わり、脳の神経回路を強化することで実行機能が鍛えられると言われています。
幼稚園や保育園では、「静かに待つ」「先生の指示を聞き、その通りに行動する」「片づけや身支度をする」など、実行機能を鍛える場面がたくさんあります。小学校に上がるまでに幼稚園や保育園、そして家庭で実行機能の練習を積み重ねることで、小学生になるための準備ができます。
中内 玲子
日英バイリンガル幼稚園Sora International Preschool
創立者
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