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「退職金2,500万円」「年金月35万円」老後は〈市民農園で野菜作り〉を楽しむ60代夫婦、老後崩壊の危機。きっかけは35歳ひとり娘の「怖いひと言」

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年12月20日 7時15分

「退職金2,500万円」「年金月35万円」老後は〈市民農園で野菜作り〉を楽しむ60代夫婦、老後崩壊の危機。きっかけは35歳ひとり娘の「怖いひと言」

(※写真はイメージです/PIXTA)

念願かなって買ったマイホーム。しかし老後も住み続けるかといえば、そこには疑問符が付く人もいるでしょう。なかには老後を見据えて住み替えを実現する人も。趣味に没頭しながら、ゆったりとした時間が流れる老後。しかし夢のような生活が突然終わりを告げることもあるようです

坂の上のマイホーム、老後にはツラいと考えて

――以前住んでいたところは坂が多く、年をとってから住むには辛いと考えていました

60歳定年を機に、住み替えで引越しをしたという山下祐一さん(仮名・66歳)、素子さん(仮名・65歳)夫婦。30代で購入し、ローンを返し終わっていたマイホームですが、定年後の生活を見据えて、建て直すかどうか悩んでいたところ、「思い切って住み替えよう」と、以前の住まいを売却。以前よりも郊外にはなるものの、売却で得たお金だけで買える戸建てへと住み替えをしました。

国土交通省『住生活総合調査』によると、将来の住み替えに対して「できれば住み替えたい」が19.7%。家族の類型ごとにみていくと、65歳以上になると住み替え意向がガクンと落ちることがわかります。高齢者になってから新しい環境に身を置くのは億劫になるもの。将来、住み替えを考えるなら、経済的にも年金生活に入る前、というのが正解といえるでしょうか。

【今後の住み替え意向「できれば住み替えたい」の割合】

65歳以上の単身者…12.4%

65歳以上の夫婦…11.2%

65歳未満の単身者…32.6%

65歳未満の夫婦…26.0%

親と18歳未満の子…28.0%

親と18歳以上の子…16.1%

住み替えの目的としては「広さや部屋数」42.3%。「使いやすさの向上」31.9%、「新しさ・きれいさ」27.4%、「性能の向上(断熱性、省エネ性)」22.7%、「住居費負担の軽減」21.6%、「通勤・通学の利便性」20.3%と続きます。

老後を見据えての住み替えの場合、子どもが独立したあとの広い家を維持していく労力は相当なもの。また階段や段差の多い家は、体の自由がだんだんと制限されていく老後においては安全とはいえず、バリアフリーを施した住まいにしたいもの。山下さんのように、建て替えかそれとも……と検討し、費用的な懸念が払拭できれば、年金生活を前にしての住み替えも有力な選択肢といえそうです。

野菜作りを楽しむゆったりとした老後が突如崩壊

山下さんの新居は、以前の住まいよりも郊外ではあるものの、交通の便や買い物の便はよく、それでいて環境がいいというロケーション。

――駅まで平坦の道であるということももちろんですが、この場所を気に入ったのは、少し歩いたところに市民農園があるところ。今、その一画を借りて、野菜作りを楽しんでいます。採れたての野菜が並ぶ食卓は、本当に贅沢です

2人とも仕事を辞め、手にした退職金はふたりで2,500万円。年金生活に入った今、生活のベースとなる公的年金は、祐一さんが基礎年金と厚生年金合わせて月20万円弱、素子さんは15万円ほどで、二人合わせて35万円。手取りにすると30万円を少し下回る程度です。派手な趣味のない二人にとって、十分すぎるくらいの金額で、貯金が増えるくらいだといいます。

お金の心配も住まいの心配もない老後とは、何とも羨ましい限りですが、ただそんな生活に暗雲が立ち込めたのは、ひとり娘の愛さん(仮名・35歳)。5歳と3歳になる孫を連れてよく遊びに来ては、「本当にいいところだよね、ここ」と、羨ましそうに話をしていました。「そうだろう。何なら近くに引っ越して来たらいいじゃないか」と冗談をいっていたのですが……

ある日、愛さんが「買うことにしたわ、家」と山下さん夫婦に報告。山下さん宅から徒歩10分ほどのところの分譲地に、家を建てることにしたといいます。

「まさか、本当に家を買うとは……」と、焦る山下さん夫婦。共働きの愛さん。夫婦の勤め先を考えると通勤とは逆方面となり、相当時間がかかるはず。だからこそ、この辺に引越してくるはずがないと踏んで、冗談をいっていたといいます。

――でも通勤が大変じゃないか?

すると、愛さんの夫は転職。むしろ山下さん夫婦の家の近くのほうが通勤の便がよくなるとか。「私は今フルリモートだから、どこでもいいの」と愛さん。さらにと何とも怖いひと言。

――じいじ、ばあばの近くのほうが、何かと便利でしょ

――スープも冷めない距離だから、毎食でも食べにいけそう

――今度、上の子は小学生だけど、下の子はまだ保育園だから

――フルリモートとはいえ、お迎えに行くのはシンドイのよ

次々と怖いひと言を連発する愛さん。山下さん夫婦に頼る気満々です。

――ゆったりと過ごせる老後が、崩れ落ちる音がしました

によると、夫婦における親との別居率は84.4%。別居する妻の父親との距離に注目してみると、「敷地内」が3.3%、「15分以内」が20.4%、「15~30分」が15.8%、「30~60分」が18.0%、「60分以上」が42.5%。全夫婦の4割ほどが、同居も含めて15分以内に親が住んでいるという状況。核家族化が進んでいるものの、多くの夫婦が親とはスープも冷めない距離にいます。共働きが標準となりつつあるなか、親と同居、もしくは近居という関係が都合がいいといえるでしょう。

[関連資料]

国土交通省『住生活総合調査』

国立社会保障・人口問題研究所『第7回改訂動向調査報告書(2024年4月発行)』

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