ビットコインは“世界通貨”になり得るか?…タイ投資家が注目する、トランプ再選後の「暗号資産の動向」
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年12月27日 7時0分
Photo by AFP
タイの公共放送局『Thai Public Broadcasting Service』(Thai PBS)が運営する英語ニュース・サイト『Thai PBS World』から翻訳・編集してお伝えする。
トランプ再選後のビットコインの動き
暗号資産の中で最も価値が高いものとされるビットコインの価格が、ドナルド・トランプ氏が米国大統領に再選されてから1ヵ月後の12月5日に初めて10万米ドル(約1,500万円)の節目を超え、前例のない高値に上昇した。
ビットコインの急騰により、市場の専門家たちは、これが単なる新たな強気相場(ブルマーケット、ブルランとも言う)なのか、それともより深い要因があるのかを注視している。
また東南アジアでは、特にタイの若い投資家たちが、以前から暗号資産に対する関心を高めている。
暗号資産は「世界通貨」となり得るのか?
通貨として認められるためには、以下の3つの条件を満たす必要がある。
まず、価値の基準となる「会計単位」として機能すること。次に、「交換手段」として利用されること。そして最後に、「価値の保存手段」として活用できることだ。
ビットコインやその他の暗号資産は、このうち通貨の第二および第三の特性を部分的に満たしているといえる。一部の企業がビットコインを法定通貨のように受け入れる場合もあるが、まだ広く普及しているわけではない。
ビットコインは、信頼できる基盤がない投機的な資産として台頭しており、これは内在的な価値を持つ企業の株式などとは性質が異なる。一部の人々はビットコインを「仮想ゴールド」として位置付けているが、懐疑的な見方も根強い。
著名な世界的投資家であるウォーレン・バフェット氏は、それを有害な金融商品と見なしており、これまでに何度も投資家に対してその危険性を警告してきた。
一方で、特にアメリカ証券取引委員会(SEC)が2024年1月に一部の投資会社に「現物ビットコイン」上場投資信託(ETF)の提供を承認して以降、多くの投資家がビットコインやその他の暗号資産に対してより肯定的な見方を持つようになっている。
この動きにより、これまで個人投資家が主導していた市場に、多くの機関投資家が参入した。
「需要と供給がビットコイン価格の急騰に影響を与えています」と、タイ国立開発行政研究院(NIDA)の金融経済学修士プログラムディレクターであるナダ・チャンソム氏は説明する。
彼女は、2009年のビットコイン誕生以来、多くの投資家がその価格変動のサイクルを理解し、それに基づいて取引を行っていると指摘する。
ビットコインの供給量は2,100万枚に制限されており、現在約1,960万枚が採掘または発行されている。また、ビットコインの新規発行量は4年ごとに半減していく仕組みとなっている。
2024年は半減期の年であり、そのためビットコインは今年上昇サイクルにあるとナダ氏は述べている。「現在はスーパー強気相場(スーパーブルラン)である可能性がありますが、過去最高値から下落することもあり得ます。その後、次の上昇サイクルが訪れるまでには時間がかかるかもしれません」と彼女は予測している。
トランプ氏の“暗号資産政策”と業界の期待
トランプ次期大統領は、暗号資産に好意的な姿勢を持つ人物と見られている。暗号資産業界は、今回の米国大統領選挙において、推定で2億4,500万ドル(約383億3,000万円)以上を寄付したとされている。トランプ氏は選挙キャンペーン中、ビットコインを米国の準備通貨の一部とする可能性に言及していた。
また、トランプ氏は、暗号資産業界で不評を買っているゲイリー・ゲンスラー氏に代わり、SECの議長としてポール・アトキンス氏を指名する計画を発表した。米国の暗号資産業界は、新たな規制がデジタル通貨に有利に働くことを期待している。
「もし米国が暗号資産を国際準備資産に加えることになれば、他の中央銀行もそれに追随し、暗号資産の需要がさらに高まるでしょう」とナダ氏は述べている。
彼女は、近い将来、多くの国がビットコインを交換手段として合法化するだろうと予測している。
戦争と世界的な紛争がビットコインを後押し
ロシアとウクライナ間の戦争は、ロシアへの貿易および金融制裁を招いた。また、北朝鮮やイランも長年にわたり西側諸国から制裁を受けている。報告によれば、これらの国々の一部政府機関は制裁を回避する手段としてビットコイン取引を利用しているとされている。
また、自国から多額の資金を国外に移したいと考える個人もビットコインを利用している。さらに、犯罪組織や麻薬密売人も、ビットコインなどの暗号資産を活用している。暗号資産はブロックチェーン台帳上でポイントツーポイントで送金できるため、従来の決済ネットワークを経由せずに資金を移動することが可能だ。
ナダ氏は、「世界各地で紛争が激化する中、デジタル通貨は確実にその需要を高めています」と指摘している。
ビットコインに対するタイ中央銀行の姿勢
タイの暗号資産(仮想通貨)交換所最大手、ビットカブ・キャピタルグループホールディングスの創業者兼グループCEOであるジラユット・スルプシリソパ氏は、ビットコインの人気が高まっていることを利点として挙げ、タイ中央銀行(BOT)がビットコインを準備通貨として受け入れるべきだと提案した。
「そのような決定を下す前に、タイ中央銀行はまずビットコインの長所と短所を研究する必要があります」とナダ氏は述べている。
タイ中央銀行は現在、デジタル通貨に対して慎重で否定的な姿勢を取っていると見られている。暗号資産を交換手段として使用することを禁止しており、その理由として、暗号資産の広範な利用が金融システムの安定性を損なうリスクがあることを挙げている。一方で、中央銀行独自のデジタル通貨(CBDC)の導入に向けた準備を進めている。
タイの若い投資家が「ビットコインや金」に注目する理由
タイのデジタル資産市場における時価総額は、主にビットコインが占めており、10月には625億バーツ(約2,859億7,000万円)に達した。この数字は9月から9.8%増加したもので、1日あたりの取引額は15.1億バーツ(約69億円)と、前月比18.19%の増加を記録した。また、アクティブアカウント数も12万9,000件と、9月比で23.93%の伸びを見せている。これらはタイ証券取引委員会(SEC)のデータによるもので、デジタル資産投資の総口座数254万件の一部を占めている。
多くのタイの若い投資家がビットコインや金といった代替資産に目を向ける理由の一つは、地元の株式市場がもはや魅力的でなくなったことにある。「地元市場からの投資リターンでは、もはやインフレを打ち負かすことができません。その結果、投資家たちは暗号資産へと目を向けるようになっています」とナダ氏は話す。
さらに、この10年間でのわずかな投資収益に加え、タイの株式市場は一連の金融スキャンダルによって評判を大きく損ねている。一部の上場企業が財務諸表の改ざんや詐欺行為を行ったとされるほか、社債発行者が債務返済を履行しないケースも報告されている。
「分散投資が最良の選択ですが、暗号資産に過剰な投資をするべきではありません」とナダ氏は警告している。タイの個人投資家の間では、依然として金が人気のある投資対象だ。
また、ビットコイン投資を装った金融詐欺への警戒も必要だ。犯罪者たちは、暗号資産、特にビットコインやその他の仮想通貨の市場熱を利用し、高利回りを求める投資家をピラミッドスキームに陥れる可能性がある。
「取引には慎重を期し、ライセンスを持つ証券会社や、タイ証券取引委員会(SEC)に承認された暗号資産取引所を通じて投資を行うことを強くお勧めします」と彼女は付け加えた。
米国のETF承認がタイ市場に与える影響
デジタル資産ファンドマネージャーであるMerkle Capital株式会社の投資顧問ナパス・マサティエンウォン氏によると、米国がスポットビットコインETFおよびイーサリアムETFへの投資を承認した後、タイの投資家たちのビットコイン取引への関心が高まっているという。
これらのETFは巨額の資金を集め、個人投資家だけでなく機関投資家もデジタル資産クラスへの資金投入を加速させている。
「タイ国内でも、デジタル資産の取引量は年初の数ヵ月に比べて大幅に増加しています」とナパス氏は述べた。
現在、タイではSECのライセンスを取得したデジタル資産ファンドマネージャーを通じて、ファンド・オブ・ファンズを利用した投資が可能だ。
さらに、ナパス氏は、タイ当局が近い将来、米国に倣ってスポットビットコインETFのオプション取引の上場を認める可能性があると指摘する。このような動きは、すでに香港やヨーロッパで実現しており、タイ市場にも新たな活力を与えるだろう。
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