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夫婦で老後資金6,000万円だから余裕かと…年金繰上げで月18万円「ゴルフ・旅行・美食」8年間の潤いある暮らしが一転。元大手商社マン夫の慢心が生んだ「悲劇」生涯続く味気ない日々【CFPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年12月26日 10時45分

夫婦で老後資金6,000万円だから余裕かと…年金繰上げで月18万円「ゴルフ・旅行・美食」8年間の潤いある暮らしが一転。元大手商社マン夫の慢心が生んだ「悲劇」生涯続く味気ない日々【CFPが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

たとえ潤沢な資金があっても、無計画なまま老後を迎えてしまうと思わぬ事態に陥りかねません。サラリーマン時代の金銭感覚で「定年後もなんとかなるだろう」と老後の生活を始めたところ、思いがけない出費で家計が破綻することも……。本記事では、田中さん(仮名)の事例とともに、家計の見える化の重要性についてFP相談ねっと・認定FPの小川洋平氏が解説します。

元大手商社マン、ゆとりの老後の生活のはずが…

60歳で定年を迎えた元サラリーマンの田中一郎さん(仮名/68歳)は、妻の智子さん(仮名/66歳)とともにリタイア後の生活を送っていました。

一郎さんはもともと大手商社に勤務していました。収入が高かったことから、公的年金を60歳から繰上げして受給しても、夫婦合わせて月額18万円を受け取ることができるということがわかります。さらに退職時に受け取った退職金2,000万円と、これまでの貯蓄4,000万円を合わせた合計6,000万円の資産を用意できていました。

定年目前、一郎さんは「自分は役職的にも継続雇用は難しいだろう」と見込んでいました。また定年間際には、主に内部監査など社内を相手にする業務に就いていたため、取引先などに自己アピールする機会がなく、再就職をしても収入が大きく減る未来が見えていました。そのため、60歳で退職をすることを決意。月に18万円の定期収入と資産6,000万円があれば余裕で老後を生きていけると思ったのです。

もともと収入も高く、現役のころから杜撰な家計管理をしていても裕福に暮らすことができていた田中さん夫婦は、老後について具体的な計画を立てることはありませんでした。潤沢な老後資金があるのだから、当然ゆとりある暮らしができると信じていました。

時間があるから…ゴルフ、旅行、美食の楽しい老後

「これまで仕事が忙しくてなかなか妻を旅行にも連れていけなかったし……」我慢させていた分、老後はもっと楽しもうと、一郎さんは旅行や趣味に積極的にお金を使い始めます。

夫婦でゴルフを再開し、週に1度はコースに出る生活をスタート。さらに、旅行好きの智子さんの希望で、国内外の旅行に年に3回は出かけるようになりました。1回の旅行で使う金額は50万円~100万円程度にもなり、「いましかできない」と奮発。年間の旅行費用が200万円以上と支出が膨らんでいきます。また、食費もシニアの夫婦2人にもかかわらず月に15万円以上を使うなど、支出は年間で1,000万円近くにもなっていたのでした。

年齢を重ねてもとても仲のよい夫婦でしたが、こんな生活を続けていると毎年資産は大きく減り続けてしまい、5年が経過したころにはいつの間にか資産は3,000万円程度と、約半分に減ってしまっていたのでした。

「このままじゃもたない……」危機感を覚えた夫妻は節約しようと試み、ひとまず旅行やゴルフに行く回数を減らしてみるなどしましたが、預金残高はみるみる減りつづけていきます。

老後破産へのトドメ

定年退職から8年後、長年住み慣れたマイホームのリフォーム費用が発生しました。築30年を超えた住宅は老朽化が進み、外壁塗装や水回りの修繕費用や、急な家電の故障での買い替え費用等も必要に。大きなお金が出ていってしまい、10年も経たないうちに老後資金は底を尽いてしまったのです。

「あんなにお金があったのに、これほどまですぐに失くなってしまうとは……。もう前みたいに楽しく暮らせない」と、これから死ぬまで続く味気ない日々を想像し、一郎さんは悲しくて仕方ありません。

家計を見える化する必要性

田中さん夫婦の問題は、収入と支出を見える化しないまま、無計画に老後を迎えてしまったことにあります。

特に収入の高い家庭は支出も多くなりがちで、老後に収入が年金のみとなると資産が十分にあるように見えても、田中さんのように資産を使い果たしてしまうこともあります。そのため、いくらまで使ってもいいのか予算を把握したうえで家計を管理する必要があります。

また、田中さん夫婦は公的年金を繰上げし、60歳から受け取っています。公的年金は繰上げして受け取ることができ、1ヵ月繰り上げすると0.4%ずつ減額。田中さん夫婦のように60歳から受け取りを開始すると、24%減額して受け取ることになります。リタイア後に十分な資産があり、終身年金である公的年金を減額して受け取っても余裕を持てるシミュレーションができれば60歳から受け取っても問題はないでしょう。

しかし、老後に余裕を持てるほどの資産がない、ましてやどの程度のお金が出入りしているのかが把握できていない状態では繰上げして受け取ることは避けるべきです。なににいくらお金を使っているのかを把握し、生活水準を適切に見直す必要があります。住居費や趣味、旅行費用など、退職前と同じ支出感覚で老後破産してしまう場合もあります。

また、支出を減らすだけでなく、反対に自分が望む生活を送るために退職後もなにかしら収入を得て仕事を続けるという手段もあります。自分の望む生活のために、収入と支出をどうバランスを取って現実のものにしていくほか、しっかり計画を立てて考えていきましょう。

破産者の4人に1人は60歳以上

2020年日本弁護士連合会の調査によると、破産債務者のうち16.37%が60代、9.35%が70代と、25%以上が60歳以上というデータが出ています。単に高齢者の絶対数が多いという理由もありますが、多くの場合は収入と支出の見通しが立てられておらず、家計をコントロールできていないことにあります。なかには現役の頃に収入が高く、リタイア時の資産も豊富にあったはずの人もこのような事態に陥っているケースも少なくありません。

繰り返しになりますが、一生の家計を見える化し、黒字でいられるシミュレーションを行うことが大事です。金融商品や保険商品はそういった資金計画の中でリスクに対応したり、効率的に資産を運用したりするための手段であり、家にたとえるならばパーツです。設計図なくパーツだけを組み合わせてもいくらいいパーツを使ってもいい家は建ちません。

自分の望む生活のため、数字を見える化し、可能な限り近づけることができる計画を立てていきましょう。  

小川 洋平

FP相談ねっと

CFP

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