これは母さんの金でしょうが!年金生活の96歳母に〈毎月10万円〉仕送りしていた58歳長男、銀行で発覚した真実に愕然…ダンマリを決めこむ〈弟夫婦〉に怒り心頭のワケ【相続の専門家が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年12月21日 10時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
実家の預金管理を任せていた兄弟によって、知らぬ間に親のお金を使い込まれていた、というケースがあります。お金が引き出されたことが分かっても、本人がそれを認めない限りは、追及は難しく、歯がゆい思いをするかもしれません。本記事では、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が事例をまじえて、こういったケースの場合に、できる対策について詳しく解説します。
母親は施設に
58歳の真治さん(男性)からのご相談です。
真治さんの母親は93歳までひとり暮らしをしていましたが、いよいよ大変になり、施設に入所しました。現在96歳になります。父親は20年も前に亡くなっています。
実家へは2時間ほどかかる真治さんとは違い、5歳下の弟が実家のすぐ近くに住んでいますので、母親のお金の管理も含めて、弟家族が母親の面倒をみるようにしていたといいます。
お金の管理は弟が
母親は90歳を過ぎても「どこも悪いところがない」と話しており、とても元気でした。ずっと家で生活するだろうと思っていましたが、母親が施設に入所したと弟からの事後報告で知らされて本当に驚いたといいます。弟は事前に真治さんには相談もなく、決めてしまったのです。施設の費用なども気になるところですので、弟に聞いたところ、足りているので心配ないと。通帳の管理もきちんとしているという返事でした。
母親に仕送りしていた
真治さんは母親の生活費は確認していなかったのですが、母親から「年金では足りない」と言われて毎月10万円から15万円を仕送りしていました。専業主婦の母親の年金は少ないので自分が仕送りするのは当然だと思ってきたのです。
ところが、最近になり叔母から聞いてわかったことは、母親は父親の遺族年金があり、困ることはないという話を叔母にはしていたようです。父親の遺族年金と母親の年金は2ヵ月で約34万円だとわかりました。母親ひとりでは困ることはないと思えます。
いずれにしても事実を確認しておきたいと思い、弟に通帳を見せるように言いましたが、なかなか見せようとはしません。問い詰めると通帳は捨てたという説明。母親に聞いてもわからないといいます。
銀行で発覚した真実
通帳がないままでは確認のしようがないため、母親をつれて銀行の窓口に出向き、10年分の取引明細の履歴を取りました。それで判明したことは、10年前から毎月のように多額の金額が引き出されているという事実でした。これについても、母親に聞いてわからないというだけでした。弟夫婦にもその書類を見せて聞きましたが、とにかく「知らない」の一点張り。母親からお金がないと言われて真治さんは何年も仕送りしたのに、愕然とし、思わずめまいがしました。弟は会社員で収入も多くないと思われるのに、自宅は土地を買って家は新築しています。
使途不明金を突き止めたいが…
高齢の母親が毎月20万円、30万円もの支出をすることは考えにくいため、弟夫婦が母親の預金を引き出して、生活費、家のローンの補填や子供の教育資金に使ったというところでしょう。しかし、弟夫婦はそれを認めず、母親も言いません。それが悔しいのでこれを突き止める方法はないか、今後、どうすればいいかというのが真治さんの相談内容でした。
使い込んだ人の逃げ切り
親のお金を子供が使い込むことはたまにあることで、これが発覚すると知らなかった子供は怒り心頭になります。しかし、使い込んだ本人はたいていの場合、認めません。
「知らない」「母親が使ったのでは?」ということで逃げ切ります。家庭裁判所の調停でも、使い込んだ人が想定されても、決定的な証拠がなければグレーゾーンは罰せず、「わからない」で逃げ切れるのです。
真治さんにも、これ以上追及しても得策ではないため、今後どうするかのみを対策することをアドバイスしました。まずは母親の通帳を真治さんが管理し、弟が引き出せないようにする、今まで引き出された金額を想定し、それを加味した遺産分割として母親に遺言書を作ってもらう、母親と任意後見契約をして任意後見受任者に自分がなることなどです。真治さんは踏ん切りがついたと言われ、早速、前向きなことだけに取り組むようにするとおっしゃって帰られました。
◆相続実務士のアドバイス
●できる対策
母親の預金から引き出された額を確認しておく。
引き出された額を考慮した遺産分割として母親に遺言書を作ってもらう。
母親の預金の管理はSさんがして弟には情報共有する。
●注意ポイント
お金が引き出された事実が確認できても認めなければ特定できず。
引き出したもの勝ちのことが多い。
特定することも難しいため、これからできることに専念したほうが得策。
※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。
曽根 惠子 株式会社夢相続代表取締役 公認不動産コンサルティングマスター 相続対策専門士
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp)認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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