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年収1,000万円バリキャリ妻と年収240万円自営業夫、50代で念願のマイホームを7,000万円で購入。ゆとりのローン計画だったはずが…2年後、赤字転落で涙の売却へ。発端は妻を襲った「突然の異変」

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年12月23日 7時15分

年収1,000万円バリキャリ妻と年収240万円自営業夫、50代で念願のマイホームを7,000万円で購入。ゆとりのローン計画だったはずが…2年後、赤字転落で涙の売却へ。発端は妻を襲った「突然の異変」

(※写真はイメージです/PIXTA)

52歳会社員の佐藤美咲さん(仮名)は一家の大黒柱。年収1,000万円という高収入を背景に夢のマイホームを購入しました。しかし、その後に想定していなかった体調不良に襲われ、住宅ローン返済が困難になってしまいます。今回の事例では「死なないけど働けない」という事態に対処する備えの重要性について、FPの三原由紀氏が解説します。

終の棲家を手に入れた年収1,000万円のキャリア妻と年収240万円の夫

佐藤美咲さん(仮名・52歳)は大手消費財メーカーで管理職を務めるキャリアウーマン。夫の健一さん(仮名・55歳)は職場の元先輩、脱サラして個人で整体院を営んでいます。

美咲さんの現在の年収は約1,000円と、女性としてはかなりの高収入。一方で、夫の整体院は売り上げが安定せず、家計に入れている金額は概ね平均で年額約240万円。2人合わせれば世帯年収1,240万円と十分豊かな家庭といえます。

家族構成は大学生の長男(20歳)と高校生の長女(17歳)の4人家族。美咲さんが家計管理を担当しています。長らく賃貸マンションに住んでいましたが、コツコツ貯めた貯蓄で今からさかのぼること2年前、夢だったマイホームを購入することにしました。

新築マンションの価格は7,000万円。頭金2,000万円を支払い、残り5,000万円は25年ローン(月々約18万円)で返済する計画でした。ローン返済負担率は17%と無理のない範囲に設定。団体信用生命保険や医療保険にも加入し、「これで何かあっても安心」と思っていました。

購入した家は住み心地抜群。子どもたちは10年以内に独り立ちする前提であまり広くはありませんが、駅近でスーパーも近くにあります。「老後も暮らせる終の棲家をやっと手に入れられた」と満足していました。

しかし、購入から2年たった頃、美咲さんはさまざまな体調不良に悩まされるようになりました。動悸、耳鳴り、倦怠感など、症状は1つではなく色々なところの調子が悪いのです。

身体の専門家である健一さんに相談すると、自律神経の乱れからきているかもしれない、と施術をしてくれました。一時的にはよくなるものの完全復調とはならず、病院での受診を決意しました。

原因は「女性特有の病気」…症状悪化で一気に赤字家計へ転落

何科を受診したら良いか迷いつつ、動悸で循環器内科、耳鳴りで耳鼻科、咽頭部の痛みで甲状腺科と渡り歩き、各科で処方された薬を服用するも症状は一向に良くなりません。

そんな様子を見かねた健一さんの助言で更年期外来を受診、ようやく更年期による不定愁訴だと診断されたのです。

もちろん女性にとって更年期障害が身近な病気だという認識はありました。しかし、周囲の友人たちが悩む中で、美咲さんはそれまでほとんど症状を意識せずに暮らしてきました。そのため50代に入ってこんな強い症状に悩まされるとは思っていなかったのです。

とはいえ、原因がわかり一安心。幸いなことに漢方薬の治療により症状も改善し、元の暮らしに戻れると思っていました。

ところが、難局は続きます。相談に乗ってくれていた直属の女性上司がヘッドハンティングされて退職。後任として着任した上司は、パワハラ寸前と評判の男性でした。

長時間労働やストレスにより症状が再び悪化し、有給休暇や病欠を繰り返すようになります。そんな美咲さんを上司は、「できない更年期おばさん」と揶揄し、ついには不本意な異動を命じられることに。

一家の大黒柱として責任感の強い美咲さんでしたが、判断能力も鈍り、このままでは精神的に参ってしまうと最終的には休職を決断します。

休職中に傷病手当金を受け取ることができましたが、収入は年収500万円レベルに半減し、ローン返済比率は危険水域の32%へ跳ね上がりました。教育費やマンション管理費なども重なり、家計は赤字に転落してしまいました。

日本社会における更年期離職問題の実態

美咲さんのようなケースは決して珍しくありません。2024年12月にパーソル総合研究所が発表した『更年期の仕事と健康に関する定量調査』では、40~50代の正規雇用で働く女性が抱える健康問題の一つ「更年期症状」が仕事に与える影響や有効な施策を示しました。

この調査によれば、女性の場合、全体40~50代の44.5%が軽度レベル以上の更年期症状を抱えており、最も症状の重い「要長期治療」に該当する人は8%にのぼります。また、軽度レベルでも1日あたり4時間弱、要長期治療レベルでは5時間強も仕事への影響が出て、症状がある時の生産性は平均で50%ほど低下するという調査結果も示されました。

また、NHKが行った「更年期と仕事に関する調査2021」では、更年期症状で仕事を辞めざるをえない、いわば「更年期離職」を経験した人の数は、今の40~50代女性でおよそ46万人。離職による経済損失は年間4,200億円にも上ります。

こうした背景には、日本社会全体で更年期障害への理解不足や支援体制の不備があります。美咲さんの上司のように「更年期なんて大したことない病気だ」という先入観が強い人もいますが、実際には働けなくなるほどの影響が出る人も少なくないのです。こうした状況に対応する制度や職場環境づくりが急務といえるでしょう。

「死なないけど働けない」に備えるために必要な対策とは?

美咲さん一家は最終的に住宅ローン返済が困難となり、自宅売却を決断。不動産市況が好調だったため高値で売却できました。その後、家賃の手頃な賃貸マンションに引越しも完了。美咲さんは健康を最優先に、転職することも検討しています。

しかし、このようにスムーズに売却できるような幸運ばかりではありません。同じ状況に陥らないためには以下の対策が重要です。

●早めの家計見直し

収入減少時には固定費削減や支出抑制が必要です。教育費や娯楽費など柔軟性のある項目から見直しましょう。

●保険商品の活用

更年期リスクも考慮し、「就業不能保険」への加入を検討することで万一の場合でも生活基盤を守れます。ただし、更年期障害で保険金が出るかは保険会社ごとに扱いが異なり、事前に確認が必要です。

実際のところ、美咲さんが加入していた保険からの給付はありませんでした。医療保険は、一般的に入院や手術時の給付に限定され、自宅療養の更年期障害は該当しないためです。家計にとって最大の経済リスクは何か? をよく考えていれば、美咲さんが就業不能になり収入が途絶えることに気づいたかもしれません。

●夫婦で役割分担

家計運営や物件購入時には夫婦で話し合い、現実的な判断を行うことが大切です。美咲さんと健一さんの場合、美咲さん主体で家計運営していたことも反省点の一つです。

●更年期治療と相談先確保

専門医療機関への相談や職場とのコミュニケーションも重要です。早めに適切な支援を受けることで症状悪化を防げます。健一さんの助言もあり、更年期外来で受診できたことは賢明な判断でした。日頃から厚生労働省の「働く女性の心とからだの応援サイト」で知識をつけておくことも大切です。

美咲さん一家の事例は、多くの家庭にも起こり得る現実です。更年期障害は個人の問題ではなく、社会全体で取り組むべき課題です。正しい理解と備えが、キャリアと家計を守る鍵となるでしょう。

また、うつ病や精神疾患など、さまざまな原因で「死なないけれど働けなくなる」事態に陥ることがあり得ます。女性・男性関係なく、そうなったときにどうするかまで考えたうえで、住宅購入やマネープランについて考えておくと安心です。

<参照> 更年期の仕事と健康に関する定量調査 パーソル総合研究所 https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/menopause.html

“更年期ロス”100万人の衝撃 離職による経済損失 年間6300億円 NHKみんなでプラス https://www.nhk.or.jp/minplus/0029/topic042.html

三原 由紀 プレ定年専門FP®

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