夢を見てしまいました…妻亡き後、孤独に暮らす資産5,000万円・72歳の年金暮らし男性。ある日受け取った「胸躍るメッセージ」に歓喜した数ヵ月後、悔恨の老後破綻へ【CFPの助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年12月29日 8時45分
(※写真はイメージです/PIXTA)
早くにパートナーを亡くしたり独身のまま老後を迎えたりして、孤独を感じている高齢者は少なくありません。今回はそんな孤独につけこまれた結果、老後資産をほとんど失ってしまった男性の事例を小川洋平FPが詳しく解説します。
妻を亡くし孤独な72歳、思い切って始めたSNSに届いた1通のメッセージ
高橋正一さん(72歳・仮名)は、年金暮らしをしながら静かな老後を送っていました。資産は5,000万円、年金は月20万円と、経済的には十分な余裕がありましたが、5年前に最愛の妻を亡くしてからというもの、一人で暮らしていました。
子どもたちは独立して遠方に住んでおり、連絡も時折の電話程度。家に帰っても話し相手もいない生活に寂しさを感じていました。とはいえ、年齢も年齢ですので、今から誰かと一緒になろうという気もなく、行きつけのスナックで店のママやスタッフと話をするのが唯一の楽しみでした。
妻が亡くなってから2年ほど経った頃、心に空いた隙間を埋めるかのように高橋さんはSNSを始めました。最初は子供達が投稿している孫たちの写真を見る程度でしたが、扱いに慣れてくると、次第に同年代の交流ができるグループに参加したり、しばらく疎遠だった旧友と繋がってやりとりをしたり、気軽にコメントを投稿するようになりました。
そんな中、ある日高橋さんの投稿にメッセージが届きます。送信者は以前高橋さんが通っていたスナックでバイトしていたことがある早苗さんという40代の女性でした。高橋さんも数回会ったことがある程度でしたが、面識もある人からのお友達申請だったので、高橋さんも喜んで承認しました。
早苗さんは店を辞めても近くに住んでいたようで、SNSで高橋さんと繋がったことをきっかけに、高橋さんが体調を崩したことを投稿すれば「お身体は大丈夫ですか?」など気遣う言葉を送ってくれたり、「手間は一緒だから」とおかずも作り届けてくれることもありました。そんな高橋さんの孤独な心に染み渡りました。
こうして交流を続けているうちに、高橋さんは早苗さんと一緒に食事に行くようにもなり、自分より20歳以上も若い早苗さんと一緒になりたいと考えるようになりました。
心を許した女性からのお誘いに舞い上がった結果…
すっかり早苗さんに心を許した高橋さん。そんなときに早苗さんから、とある説明会に行かないかと誘われました。ドバイにある会社の、暗号通貨による投資案件です。10万円からスタートでき、毎月10%という超高利回りを狙っていけるというものでした。
堅実な高橋さんは投資の経験はゼロ。初めは怪しんでいたのですが、早苗さんが現に半年以上も利益の分配を受けているというのです。
「1,000万円でも投資してくれれば毎月100万円の利益が得られて、二人で海外旅行に出掛けたり夢のような生活ができる」
心を許した早苗さんからのこんな言葉ですっかり舞い上がってしまった高橋さんは、残りの老後資金の大部分4,500万円にもなるお金を、その怪しげな投資話に投資してしまったのでした。
4,500万円を投資、散財しつくした後に残った残酷な現実
初めの2ヵ月は約束通りに500万円ものお金が毎月入ってきました。そのため高橋さんもすっかり信じ込み、二人でファーストクラスで海外旅行に出掛けたり、散財してしまいました。
しかし、その後、何の連絡もなく入金は途絶えてしまい、その会社は倒産。早苗さんとも連絡がつかなくなりました。
これはポンジスキームと言われる詐欺で、高利回りを謳い出資を募り、初めのうちは実際に利益を分配して信じ込ませて出資者を増やしていきます。しかし、実際に分配するのは出資者から集めたお金を分配されているわけで、そんな状況がいつまでも続くはずはありません。どこかで必ず破綻することが初めからわかっている詐欺です。
早苗さんはその詐欺に加担し、複数の独身男性や高齢男性の懐に入り込み出資させていた、いわゆるロマンス詐欺でした。高橋さんは、ありったけの老後の資金と同時に愛する人を失ってしまったわけです。
夢を見た果てに残ったのは、わずかばかりの貯金と、この先どう生きていけばいいのかという不安だけでした。
孤独と心の隙を突いた詐欺…「月利10%」の異常さに気づけないワケ
このような高齢者を狙ったケースでは、孤独感を埋めるふりをして信頼を得た上で、金銭を騙し取ることが多いと言います。特に、自分のことを気にかけてくれて優しく接してくれる女性をすっかり信じてしまい、冷静な判断ができなくなってしまうこともあります。
しかし、月利10%といった高利回りは、まともな金融リテラシーを持っていれば即座に詐欺と判断できるものです。自分で利益が出るビジネスを考えて仕組化すれば投資額に対して月利10%といった高利回りもあり得るものですが、自分が動かずに投資でこれだけの利回りを狙おうとすれば相当な高いリスクが伴います。
投資の神様と呼ばれたウォーレン・バフェットでさえも年利20%程度と言われていますので、素人が月利で10%などという利回りがいかに非現実的かはよくわかります。
「リスクを取ってまで投資したくはない」と考え、リスク資産への投資をまったく考えていなかったことが裏目に出てしまい、このような非現実的な利回りを詐欺だと気が付かない場合もあります。
ごく少額でも良いので現役の頃から「守りの投資」に慣れ、リスクとリターンについて感覚的に理解しておくこともこういった詐欺の話を聞いた時に「おかしい」と思い立ち止まって考えられる力が育ちます。
「おかしい」と思い、立ち止まって考えられるリテラシーを身に着けよう
今回は寂しい心に付け込まれてしまい、投資詐欺に遭ってしまった事例をお伝えしました。こういった詐欺は次から次へと新しい巧妙な仕組みが登場し、警察や消費生活センターへの相談件数は増加の一途を辿っており、手口はますます巧妙化しています。
ネットワークビジネスのような方式で広めていくものもあり、知らず知らずのうちに詐欺に加担してしまうようなケースもあります。自分がこういった詐欺に遭わないために、また他人を巻き込むことのないように、「おかしい」と思い、立ち止まって考えられるリテラシーを身に着け、またおかしいと思ったら市町村の消費生活センターなどの機関に相談しましょう。
小川 洋平 FP相談ねっと
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