夫と一緒にいればお金の面では助かると思っていました…年金月6万円見込の59歳専業主婦、年金月15万円の65歳元国家公務員夫との「離婚」を決めた「愛の喪失」以外の理由【FPが解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月1日 11時45分
(※写真はイメージです/PIXTA)
お金についての話題は、たとえ夫婦であってもタブー視する人もいるでしょう。特に、収入状況が片方に偏っている場合、避けるケースは多いようです。しかし、ともに家計を守る夫婦であれば、避けつづけてしまうと後々リスクが生じることも。本記事では、専業主婦からの相談事例とともに、熟年離婚と老後資金の関係について、波多FP事務所の代表ファイナンシャルプランナー・波多勇気氏が解説します。※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。
専業主婦が抱えた老後の不安
美智子さん(仮名/59歳)は35年間、国家公務員として働く夫・浩一さん(仮名/65歳)を支え続けてきました。浩一さんは定年退職後、嘱託職員として働いていますが、年金の受給が始まり、夫婦ともに老後を見据える時期を迎えました。浩一さんの年金は月額15万円、美智子さんの年金は月額6万円。さらに、浩一さんは退職金として1,200万円を受け取っており、表面的には「安泰」に見えます。
しかし、美智子さんは次第に老後の生活に不安を抱くようになります。「夫婦の年金だけでは、普通の生活を維持するのも厳しいのでは?」と、具体的に生活費を計算し始めました。その結果、以下の問題が浮かび上がります。
【夫婦の老後生活費】 ・基本的な生活費:月25万円 ・ゆとりのある老後生活費:月36万円 ・収入の合計:月21万円(夫15万円+妻6万円)「毎月最低でも4万円の赤字。退職金を取り崩して生活するしかない。でも、夫は自分の趣味や旅行を優先してお金を使いたいみたいで、私の意見は聞いてくれないんです」。美智子さんの中で、「このままでは安心して暮らせない」という気持ちが強まっていきました。
「離婚」という選択が生んだ経済的な安定
美智子さんはある日、年金分割や財産分与について調べ始めます。そして、自分が離婚後にどのような生活を送れるのか具体的にシミュレーションしました。
【離婚後の美智子さんの収支シミュレーション】
収入
・年金:年金分割により月6万円から月10万円に増加(夫の厚生年金の一部を受け取る) ・パート収入:月5万円(週3日程度の勤務を想定)
支出
・住居費:月5万円(賃貸マンションを想定) ・食費/光熱費など:月8万円 ・医療費/その他:月2万円
「不安定な安泰」よりも…
月15万円の収入で、毎月の支出は15万円。結果としてギリギリではありますが、財産分与により、退職金600万円と貯金を手元に残すことで緊急時の対応資金も確保できました。
「夫と一緒にいればお金の面では助かると思っていました。でも、私が主導権を持ってお金の計画を立てたほうが、精神的にも安心できることに気づきました。もう愛情もないですし、別れたいと思います」と美智子さん。夫といる「不安定な安泰」よりも、一人でも安定した生活のほうが魅力的に思えたのです。
老後資金の課題と熟年離婚を防ぐポイント
美智子さんのケースは、国家公務員家庭の老後資金でも油断ができないことを示しています。特に以下のような課題がみられました。
1.年金と退職金への過信
夫婦の合算年金が月21万円あるとはいえ、老後の支出はそれ以上に膨らむケースが多く見られます。特に医療費や介護費用が想定以上にかかる場合、退職金はすぐに消えてしまう可能性があります。
2.資産管理の不透明さ
美智子さんの家庭では、家計の管理が夫婦間で共有されておらず、浩一さんの趣味や交際費が家庭の財政を圧迫していました。「家計管理を夫婦で共有するだけでも違った未来があったかもしれない」と美智子さんは振り返ります。
3.コミュニケーション不足
財務的な問題がある場合、夫婦間での話し合いが不可欠です。しかし、美智子さんと浩一さんのあいだでは、「お金の話は避けるべき」という無言のルールがありました。このような状況では、老後の課題を乗り越えるのは難しいでしょう。
お金の話は避けるほどリスクに
美智子さんが熟年離婚を選んだ背景には、夫婦間の財務格差と老後資金計画の欠如がありました。特に、年金分割や財産分与を活用することで、自立した生活の目処が立ったことが大きな要因です。
一方で、熟年離婚を回避したい場合、早い段階で夫婦間の資産状況を共有し、老後の生活設計を話し合うことが不可欠です。お金の問題は避けるほど大きなリスクになります。本記事をきっかけに、ご自身の老後資金について見直してみてはいかがでしょうか?
波多 勇気
波多FP事務所
代表ファイナンシャルプランナー
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