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相続人がいない場合、財産は誰の手に?…「特別縁故者」になる条件と通常の相続と異なる“相続税の4つの注意点”

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月6日 7時15分

相続人がいない場合、財産は誰の手に?…「特別縁故者」になる条件と通常の相続と異なる“相続税の4つの注意点”

(※写真はイメージです/PIXTA)

相続人がいない場合、被相続人の財産は国に帰属するのが一般的です。しかし、特別な事情がある場合には「特別縁故者」として財産を受け取ることが認められる可能性があります。では、どのような人が特別縁故者と認定され、財産分与を受けられるのでしょうか。本記事では、特別縁故者の定義や認定条件、申立ての手続きなどについて詳しく解説します。

特別縁故者とは? その意味と重要性

特別縁故者とは、相続人がいない場合に、特別に財産を受け取る資格がある人を指します。

通常、相続人には配偶者や子ども、親、兄弟姉妹が含まれますが、こうした法定相続人がいないケースもあります。例えば、被相続人が独身で親族が全員他界している場合です。民法で定められているこの制度は、通常の相続の枠を超え、故人と深い関係があった人に特別に相続の機会を与えます。

法定相続人不在時の財産の行方

被相続人が亡くなった際、相続財産は民法に基づき、法定相続人がそれぞれの法定相続分に従って相続します。

配偶者と子がいる場合、配偶者が2分の1、残りの2分の1を子が均等に分けます。

配偶者のみで子がいない場合、配偶者が3分の2、残りの3分の1を父母が均等に分けます。

配偶者も子も父母もいない場合は、兄弟姉妹が法定相続人となり、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が残りを均等に相続します。

法定相続人がおらず、有効な遺言書もない場合、遺産は国庫に帰属し国のものとなるのが原則です。ただし、被相続人と特別な関係があった人がいる場合には「特別縁故者制度」により、その人に財産が分配される可能性があります。

遺言書に記載された人の権利

もし法的に有効な遺言書があれば、そこに記載された人は、法定相続人でなくても「受遺者」として財産を受け取れます。この場合、受け取りは「相続」ではなく「遺贈」として扱われます。

法定相続人がいない上に有効な遺言書もない場合、被相続人の財産は国に帰属し、最終的に国の所有となります。

誰が特別縁故者になれるのか

特別縁故者とは、民法で定められた特定の条件を満たした人だけが認められる存在です(民法第958条の2)。そのため、誰でも該当するわけではなく、基準に沿った関係性が確認されなければ特別縁故者としての資格は得られません。

被相続人と生計を共にしていた人

特別縁故者として認められる条件の一つに、「被相続人と生計を共にしていた人」というものがあります。具体的には、同じ世帯で暮らしていた内縁関係の夫や妻、事実上の養子関係にある人、または被相続人の生活を支えたり面倒を見たりしていた人が該当します。

このような生活状況があった場合、特別縁故者として財産分与が認められる可能性があります。なお、生計を共にしていたことを証明するには、同居期間が確認できる住民票が役立ちます。

被相続人の療養看護に努めた人

「被相続人の療養看護をしていた人」というのも、特別縁故者として認められる条件の一つです。例えば、一緒には暮らしていないものの、定期的に被相続人の看護を行っていた人が該当します。

ただし、看護師や家政婦として報酬を受け取っていた場合は、その報酬を超えた献身的な看護が求められます。単なる業務としてのケアではなく、家族のような愛情をもってサポートしていたことが認められることが必要です。

療養看護に努めた証明として、医療費や介護費の領収書、訪問時の写真、看護の様子が伝わるメールなどがあると有効です。

その他の特別な関係者

「被相続人と生計を共にしていた人」、「被相続人の療養看護に努めた人」のほか、「その他被相続人と特別の縁故があった人」も特別縁故者として認められます。

例えば、被相続人の身元引受人や後見人として精神的な支えになっていた場合や、長年にわたって仕送りを続けたり、事業のサポートをしたりしていたなど、関係が深かった人が該当する可能性があります。

特別な縁故を証明するには、やり取りの記録となるメールや手紙、日記のほか、財産を譲る意思が示された文書などが役立ちます。

法人が特別縁故者になる場合も

公益法人や学校法人、宗教法人、地方公共団体、さらには法人格のない団体なども、特別縁故者として認められることがあります。

被相続人が生前にこうした組織の発展に貢献していた場合、裁判所がその法人を特別縁故者と判断し、財産分与を認めるケースもあるのです。

特別縁故者として認められるまでの手順

特別縁故者として認められるには、家庭裁判所への申し立てが必要です。

たとえ被相続人の内縁の妻であり、他に相続人がいない場合でも、国が自動的に特別縁故者と認定してくれるわけではありません。生前のサポートや葬儀への尽力があったとしても、特別縁故者として財産を受け取るには、家庭裁判所に申し立てを行い、認定されることが必須です。

相続財産管理人の選任と役割

相続人がいない場合、まず被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に「相続財産管理人の選任」を申し立てる必要があります。

相続財産管理人は、被相続人の財産の調査や管理、債務の清算などを行う重要な役割を担います。管理人は利害関係者からの申し立てに基づいて家庭裁判所が選任し、その後、債権者への配当などを適切に行います。

申立書に必要事項を記入し、所定の書類を添えて家庭裁判所へ提出することによって申し立てできます。必要な書類や費用については、家庭裁判所の「相続財産管理人の選任」に関する案内を確認してみてください。

法定相続人の捜索方法

相続財産管理人が家庭裁判所に選任されると、その情報が官報に公告され、法定相続人の捜索が始まります。

公告の期間は6ヵ月で、その間に法定相続人が見つかれば、どれほど疎遠であってもその相続人が遺産を受け取る権利を持ちます。

財産分与申立ての流れ

法定相続人が官報公告から6ヵ月経っても見つからない場合、その不存在が確定します。この段階で初めて「特別縁故者に対する相続財産分与の申立て」が可能となります。なお、申立ては官報公告の満了から3ヵ月以内に行う必要があるため、期限を忘れないようにしましょう。

家庭裁判所が特別縁故者として認めれば、被相続人の財産はその特別縁故者に分与されます。

申立ての時期と期限

申立ては、官報公告満了から3ヵ月以内に行わなければなりません。この期間を過ぎると申立ての権利を失うため、早めの対応が必要です。

必要な書類と費用

申立てには以下の書類と費用が必要です。

1.書類

・申立書(1通)

・申立人の戸籍謄本(法人の場合は資格証明書など)

・被相続人の戸籍(除籍)謄本

・特別な縁故を証明する資料

・相続財産目録

・親族関係図(親族として申立てを行う場合のみ。関係を示す現在戸籍、除籍、改製原戸籍謄本も必要)

2.費用

・収入印紙:800円

・連絡用の切手代:裁判所によって異なるため、各地の裁判所一覧から確認

特別縁故者の認定と財産分与決定

特別縁故者としての申し立てが認定されると、被相続人の遺産がその特別縁故者に分与されます。

もし認定されなければ、相続人がいないと判断され、遺産は国庫に帰属することになります。

特別縁故者が知るべき「相続税」における4つの注意点

特別縁故者が財産を受け取る場合、「遺贈」として扱われますが、これも相続税の対象です。

ただし、通常の相続と異なる点があるため、特別縁故者が遺贈を受ける際には、以下の4つのポイントに注意してください。

基礎控除額と課税の仕組み

相続税は、遺産総額から「基礎控除額」を差し引いた額に対して課される税金です。

通常、基礎控除額は「3,000万円+(法定相続人の人数×600万円)」で計算されます。しかし、特別縁故者が相続する場合は法定相続人がいないため、基礎控除額は一律で3,000万円となります。

そのため、遺産が3,000万円以下であれば相続税はかかりませんが、3,000万円を超える場合は課税対象となり、申告が必要です。

適用外となる控除と特例

特別縁故者が財産を受け取る場合、法定相続人だけに適用される各種税額控除は利用できません。

ここでの税額控除とは、基礎控除以外の「小規模宅地等の特例」や「配偶者控除」「未成年者控除」などを指します。これらの控除を受けるには、被相続人の生前に「婚姻届を提出する」「養子縁組を行う」など、法的に家族関係を築いておく必要があります。

相続税の割増と追加課税

特別縁故者が財産を引き継ぐ場合、相続税に「2割加算」が適用されます。

この2割加算は、被相続人の配偶者や子ども、両親以外の人が遺産を受け取る際に課される追加課税です。特別縁故者は、この加算の対象となり、通常の相続税にさらに2割が上乗せされます。

ただし、先述の通り相続税の基礎控除である3,000万円が適用されるため、相続を受けた合計が3,000万円以内であれば課税対象外です。

申告期限と評価時点の特殊性

特別縁故者が財産を引き継いで相続税がかかる場合、申告が必要です。通常の相続税申告期限とは異なり、特別縁故者の場合は「特別縁故者の財産分与の審判が確定した翌日から10ヵ月以内」が申告期限となります。

この点を見落とすと、延滞税や状況によっては加算税が発生するため、期限には特に注意が必要です。

特別縁故者制度を活用するためのコツ

特別縁故者制度を効果的に活用するには、事前の準備が欠かせません。特別縁故者として認定されるためには、生前の関係を示す確かな証拠が必要であり、また手続きには専門的な知識も求められます。ここでは、制度を活用する際に役立つポイントや注意点について詳しく解説します。

生前の関係性証明の重要性

特別縁故者として認められるには、被相続人との生前の関係を証明できることが重要です。裁判所が特別縁故者として認定するためには、申立書だけでなく、客観的な証拠が求められます。生前の関係を証明する資料が多いほど、認定される可能性が高まります。

関係性を示すための有効な証拠例は、以下の通りです。

1.被相続人と生計を共にしていた場合

・同居年数が確認できる住民票

・定期的な振り込みがあった通帳など

2.被相続人の療養看護に努めていた場合

・看護や介護のやり取りがわかるメール、LINE、SNS、手紙など

・医療費や介護費の領収書

・訪問や通院にかかる交通費の領収書

3.被相続人と特別な縁があった場合

・親密な関係を示すメッセージや手紙

・共に過ごした写真や日記

・無効になった遺言書など

これらの証拠がそろっていれば、被相続人と特別な関係があったことを強く示すことができ、特別縁故者として認定されやすくなります。生前の関係を証明する資料をしっかりと準備することが大切です。

法的支援の活用と専門家への相談

特別縁故者として認められるには、証拠の準備や多くの手続きが必要です。このため、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。専門家に相談すると、以下のサポートが受けられます。

・特別縁故者として認められる可能性についてのアドバイス

・必要な手続きの流れの説明

・相続税やその他の費用についての相談

・手続きの代理依頼が可能

さらに、相続手続きやトラブルの不安がある場合には、「相続診断士」への相談が効果的です。相続診断士は、親身に相談に乗り、必要に応じて専門家へとつなげる役割も果たします。たとえば、遺言書の内容に関するトラブルには弁護士を、戸籍や財産調査の手続きには行政書士を紹介することができます。

遺言書作成による意思表示

特別縁故者制度は、法定相続人も遺言書もない場合に適用される最後の手段です。

もし、自分に法定相続人がいない状況で大切な人に財産を残したいと考えるなら、法的に有効な遺言書を作成することが最も確実です。生前に公正証書遺言を作成しておくと、無効になるリスクも少なくなり、希望通りに財産を贈ることができます。

特別縁故者制度のリスクと課題

特別縁故者制度は、法定相続人がいない場合に遺産を受け取る手段として利用されますが、その認定には慎重な判断が行われます。また、法定相続人がいる場合や行方不明であっても権利が消えないケースもあり、制度の利用には多くの注意点があります。

以下、特別縁故者制度を活用する際に知っておきたいリスクや課題、確実に財産を引き継ぐためのポイントについて解説します。

相続人不明時の対応方法

被相続人の戸籍を調べた結果、法定相続人が見つかったものの、連絡が取れなかったり所在が不明であったりする場合があります。

ただし、「連絡が取れない=相続人がいない」とはならないため、この状態で特別縁故者が財産分与を請求することはできません。

法定相続人が行方不明である場合は、不在者財産管理人の選任や失踪宣告の手続きを行う必要があります。これにより、相続手続きの進行が可能になります。

法定相続人との権利関係

特別縁故者が遺産を受け取れるのは、「相続人がいない場合」に限られます。法定相続人である子どもや兄弟姉妹がいる場合、特別縁故者には財産を渡す権利はありません。

たとえ相続人が行方不明や音信不通であっても、相続権が消えるわけではありません。また、被相続人と不仲であっても相続権は有効です。権利者がいる限り、内縁の配偶者などの特別縁故者は遺産を受け取れないと考えておきましょう。

制度利用における潜在的リスク

特別縁故者は、誰でもなれるわけではなく、民法で厳しい基準が定められています。たとえば、亡くなった方が「内縁の妻は特別縁故者として財産を引き継げるだろう」と考えていたとしても、家庭裁判所が特別縁故者として認めない可能性があります。

裁判所は、提出された証拠に基づいて特別縁故者の適格性を判断します。たとえ被相続人と家族同然の関係であっても、それを証明する証拠がなければ、特別縁故者として認定されないリスクがあります。

特に内縁の妻や連れ子に確実に財産を残したい場合、特別縁故者制度に依存するのは不確実です。確実に財産を引き継がせたいなら、あらかじめ遺言を作成するのが効果的です。中でも「公正証書遺言」は法的効力が強く、財産継承の確実性を高める手段としておすすめです。

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