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年金なんて払うだけムダ…〈年金制度崩壊〉を信じてやまない「年収800万円・貯金2,000万円」55歳個人事業主の末路【FPの助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月9日 11時15分

年金なんて払うだけムダ…〈年金制度崩壊〉を信じてやまない「年収800万円・貯金2,000万円」55歳個人事業主の末路【FPの助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

経済産業省が発表する「中小企業白書」によると、2022年時点での起業者数は約466万人となっています。起業の理由はさまざまですが、もともと会社員だった場合、独立後は「年金」に注意が必要であると、株式会社FAMORE代表取締役の武田拓也FPはいいます。Aさんの事例をもとに、年金未納を続けた場合の「末路」と納付できない場合の対策についてみていきましょう。

マメで正確な仕事をするAさんの“目の上のたんこぶ”

Aさん(55歳)は、大学を卒業してから長年、リフォーム業を営むC社に勤めていました。顧客とのやりとりもマメで、「またAさんにお願いしたいです!」といわれるほど仕事も正確。自分でも「天職だ」と自信を持っていました。

そんななか、“目の上のたんこぶ”となったのが、Aさんが50歳のときに転職してきたBさんの存在です。

Bさんは、技術力はあるものの、コミュニケーションは適当。他責的で、施工後に顧客から来たクレームについても「いや、そんなこと言われていない。完成後に文句を言われてもやりようないから」と一蹴。

顧客との密なやりとりに重きを置いていたAさんは、そんなBさんと衝突してしまうことも少なくありませんでした。

「会社全体の評判が下がる。Bを辞めさせられないか」と社長に相談したこともありますが、「人手不足だからしょうがないだろ。口は悪いが仕事はできる人だし、こっちから解雇することはできない。申し訳ないが我慢してくれ」と言われてしまい、ストレスを溜めながら一緒に仕事をするしかありませんでした。

そんなある日のことです。AさんとBさん、顧客のあいだで情報共有がうまくいかず、リフォーム完了後にミスが発覚。その相手はとある企業で、受注している案件のなかでは比較的大きな会社だったことから、倒産危機に陥るほどの大きな問題となってしまいました。

「Bのせいだろ」と思ったAさんですが、そう本人に伝えると「俺は俺のやり方で完璧にやった。Aのせいだ」と返されます。思わず取っ組み合いの喧嘩に発展したところ、止めに入った社長に「どっちも悪いところがある。連帯責任だ」と言われてしまいました。

「技術力もコミュニケーション能力もあるのに、ずっとここにいたらいつまで経っても成長できない。こんなところ辞めてやる!」Aさんは、30年以上働いたC社を辞め、独立することにしました。

ついに独立…“第2の人生”をスタートさせたAさん

そして、個人事業主としてリフォーム業を始めたAさん。仕事を得ようとかつての知り合いにつないでもらい声をかけますが、「ああ、あのC社にいた人ね」と会社の評判を理由に断られてしまいます。

C社のツテ以外に人脈もなく、収入も少なく、独立当初は不安定な日々を過ごしていました。

しかし、Aさん個人の仕事ぶりを知っている同業者から声がかかり、現場作業を手伝っているうち、だんだんと仕事が増えていきます。開業から数年経ち、年収はおよそ800万円に到達。前職の頃とあわせて、貯金も2,000万円ほどに。

「年齢を理由に諦めることも考えたけど、独立してよかった……」ほっと胸をなでおろすAさんでした。

ある日、Aさんの自宅に届いた「赤い封筒」

順調に仕事を続けていたある日のこと、いつものように帰宅してポストを確認すると、1通の封書が入っていました。差出人は日本年金機構。

「なんだ、いつものやつか」と無視しかけたAさんでしたが、封筒の色が「赤色」であることに違和感を覚えたAさんは、家に入りその中身を確認してみることにしました。

Aさんのもとにはこれまでも何度か日本年金機構からハガキや封書が届いていたものの、Aさんには“ある理由”があったことから、あえて無視を決め込んでいたそうです。

しかし、書面の内容を確認してから、Aさんの顔は青ざめ、脂汗が止まりません。

期限までに保険料が納付されない場合は、強制徴収を開始することがあります」 「強制徴収が開始されると、延滞金が課されるほか、財産が差し押さえられます

Aさんはいったいなぜ、保険料を頑なに納めなかったのでしょうか。

Aさんが度重なる連絡を“あえて無視”していた理由

C社を退職してすぐ、独立にあたって必要な手続きを調べていたAさん。

「これまでは給料から天引きされていた税金も、これからは自分で納めなきゃいけないのか……高いし、少し面倒だな」

そう思いながらインターネットで情報収集していたAさんは、とある記事を読んで驚きました。その記事には“少子高齢化が進み、年金を払う人が少なくなっている。このままでは近い将来、年金制度が崩壊する可能性も”との見出しが。

「そう、なのか……」

独立してまだ日が浅く、収入が不安定ななか、国民年金保険料は月々1万6,980円と、ばかにならない金額です。

「これだけ高い金額を支払っても、将来制度が崩壊して年金がもらえない可能性があるなら、払うだけムダじゃないか?」

こうして「年金制度崩壊説」を信じるようになったAさんは、“あえて”年金を払わない選択をとっていたのでした。

「国民年金保険料」の納付は“国民の義務”

しかし、国民年金は、個人事業主や学生、専業主婦なども例外なく、20歳以上の国民すべてが加入しなければなりません。

年金保険料を支払うことは「国民の義務」です。どんな理由があろうとも、未納のまま放置してよいものではありません。

未納を続けていると、当然、国から年金保険料を支払うように電話や文書、そして自宅訪問などの方法で催促の連絡があります。これらの催促後も無視をしていると「特別催告状」が届きます。

「特別催告状」は、青→黄→赤の順で危険度が増す

「特別催告状」は、日本年金機構から送られてくる、年金保険料の支払いを催促する書面です。最初から赤色で届くわけではなく、最初は青、次は黄色、そして赤い封筒と、信号機の色のような順番で送られてきます。

青色の封筒には未納状況の説明が記載されていますが、赤色の封筒になると「財産を差し押さえることになる」という旨の記載がされています。

赤色の特別催告状が届いても手続きを行わなければ、「最終催告状」が届きます。令和5年度において、最終催告状は17万6,779件が作成されており、実際に財産の差し押さえにいたった件数は3万789件ありました。

このように、年金保険料は未納のままでいることはできません。納付しなければ、最終的には財産を差し押さえられてしまうのです。、ルールに従ってきちんと納付を行い、支払い催促があった場合には早めに対処しましょう。

また、財産を差し押さえられることのほかにも、年金保険料を納めないデメリットは、想像以上に多くあります。

1.将来の年金受給額が減る

老後に受け取れる老齢基礎年金は、保険料を支払った月数によって金額が変わります。つまり、未納の期間が長くなるほど将来に受け取れる年金額が減っていくのです。

2.障害年金や遺族年金を受け取れない

障害を負った場合に受け取れる「障害年金」や、年金受給となる対象者が亡くなった場合に遺族が受け取ることができる「遺族年金」も、保険料を納めていないと受け取れなくなることがあります。

とはいえ、納めるお金が無い…“救済策”は?

収入が少ないなど、なんらかの事情により年金保険料が払えない場合は、滞納するのではなく、役所で免除の手続きを行いましょう。

「保険料免除制度」は、本人や世帯主、配偶者の前年所得が一定額以下である、または失業した場合に申請することができます。申請書を役所に提出し承認された場合、所得に応じて保険料の「全額」「4分の3」「2分の1」「4分の1」が免除されます。

また、免除期間の保険料については、10年間の追納が認められています。したがって、免除申請が遅れても、10年の期間内であれば遡ってあとから納付することが可能です。

Aさんは知り合いのFPや税理士に赤い封筒が届いたことを伝え、「本当に財産を差し押さえられるのか?」「年金保険料を支払うべきか?」と確認してまわりました。すると、専門家たちは口をそろえて「当然、いますぐ支払ってください」といいます。

「このまま払わなくても大丈夫だよ」という人は1人もおらず、Aさんは渋々、年金保険料を納めました。「まさか、保険料を滞納したくらいで財産を差し押さえられることになるなんて。でも、今後もリフォームの仕事を続けるためにも、払っておくか……」Aさんはなんともいえない気持ちです。

しかし、人生100年時代といわれる昨今、亡くなるまで受け取ることのできる国民年金は老後の貴重な収入源となります。年金制度については“噂”を信じるのではなく、正確な情報を知り、上手に活用しましょう。

武田 拓也 株式会社FAMORE 代表取締役

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