弟が生まれたころ、母親が…35歳・パニック症に苦しむ福祉施設職員が、医師から指摘。病気の原因かもしれない「幼少期の出来事」
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年2月2日 15時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
厚生労働省の「患者調査」によると、精神疾患を有する総患者数は年々増加傾向にあります。平成29年(2017年)には約419万人だった患者数が、令和2年(2020年)には約420万人と微増傾向ですが、長期的な視点で見ると増加傾向は明らかです。特に、気分障害(うつ病、躁うつ病など)や不安障害の患者数が増加傾向にあります。背景には、社会の複雑化やストレスの増大、人間関係の希薄化、情報過多な社会などが複合的に影響していると考えられるでしょう。本記事では、精神科医・村上伸治氏監修の書籍『大人の愛着障害: 「安心感」と「自己肯定感」を育む方法』(大和出版)より一部を抜粋・再編集し、精神疾患を有する患者の過去を一緒にふり返ってみましょう。
思考のクセの背景を探る
人の顔色が気になって仕方ない、絶対に他人には頼れない、自分だけががまんすればいいと思う……。愛着形成に問題を抱えている人には特有の傾向が見られます。いまの自分について考えるためにこれまでの自分をふり返ってみましょう。
気づくといつも同じことに悩んでいませんか?
自己犠牲・自責思考になりやすい
あなたはいつも心の奥で「人に迷惑をかけてはいけない」と思っていませんか。問題が起きると「自分のせいだ」と、自分を責めてしまうのではないでしょうか。愛着の問題を抱えている人には、「自分が犠牲になればいい」「自分に全責任がある」といった思考のクセが見られます。
→自分を傷つけても働いている
体が動けないほど疲れていても、自分をつねったり、頭を叩いたりして、奮起して働こうとしてしまう。
・「がんばらないと」と自分に言い聞かせている
・泣いたら負けだと思っている(だが無性に泣きたくなることがある)
・子どもやパートナーの前では絶対に泣いてはいけないと思っている
・「自分ががまんすればいいんだ」と思っている
他人には徹底的に気をつかう
職場でも家でも、気づくといつも周囲に気をつかっていませんか。他人といるとき、つねに相手の機嫌を損ねないようにふるまったり、相手が居心地よく過ごせるよう配慮したりしていませんか。
以下のような傾向がある人は、小さい頃から親や先生、まわりの大人の表情や反応を見ては、「がっかりさせないように」「相手が喜ぶように」と、気をつかい続けてきたのかもしれません。
・職場ではテンションを上げて、いつも元気にふるまっている
・人の相談によく乗る
・困っている人を見るとつい声をかけてしまう(ほうっておけない)
・気をつかわなくて済む人などいないと思っている
・(小さい頃から)人には徹底的に気をつかう
・相手の話をひたすら聞くことが多い
・相談してもらえるのは嬉しいけど、すぐしんどくなる
・気をつかいすぎて人を引かせたり、イラつかせたりすることがある
・他人が叱られていると、自分が叱られている感覚に襲われる
自分を追い詰めがんばってきた
失敗して落ち込むことは誰にでもあります。でもそのたびに大きなダメージを受け、うつ病や不安症などの精神的問題が生じているなら、いつからいまの思考パターンができたのか、幼少期の記憶を思い出してください。自分を追い詰め、無理な“がんばり”を強いてきた理由を見つけていきましょう。
A山A子さんのケース
パニック症とうつ病で精神科にかかっていたA山A子さん。治療中に医師から幼少期のことを指摘され、幼少期からいままでのことをふり返ってみることに。あなたもA子さんの受け答えを参考に、自分自身についてふり返ってみよう。
いまのあなたは、どういう状態にありますか?
がんばらないといけないと思っています。でもすぐに調子を崩してしまって……。
薬で抑うつが落ち着いたものの…
結婚して出産し、育休を終えて職場に復帰しました。しかし、職場の状況が変わり、上司が病気で休職してしまいました。それまで頼りにしていた人がいなくなり、業務がうまく回らなくなりました。
私も仕事を抱え込み、精神的に追い詰められる日々。仕事と家庭の両立に疲弊し、精神的な負担は増すばかりでした。抑うつがひどくなり、限界を感じた私は精神科を受診し、薬物療法を受けました。薬を服用することで一時的には症状が落ち着き、少し安心しました。
過去に目を向けてみると
「このままじゃいけない、もっとがんばらなければ」と思い、再び気力をふるい立たせ、日常生活や仕事に戻りました。しかし、それから1ヵ月も経つと、またしても同じ症状が再燃してしまいました。頭が重く、心が沈む感覚が襲い、集中力も続かなくなりました。
医師に相談するなかで、医師から私の心の奥深くにある感情について指摘がありました。幼少期からのできごとについて、ふり返ってみたらどうかと言われました。
あなたはどうですか? いまのあなた自身の状態について言葉にしてみましょう。小さいとき、どんな子どもでしたか?
しっかりした子だと言われてきました。長女です。4歳のときに弟が生まれました。そのとき母から「もうお姉ちゃんなんだからね」「ちゃんとしてね」と言われたことを覚えています。母は学校の教師として働いており、つねに忙しくしていました。父も仕事が忙しく、夜遅く帰宅することがほとんどでした。両親とともに過ごす時間は週末くらいだったような気がします。実際はどうだったのかあまりよく思い出せません。
弟は少し手がかかる子で、母はさらに忙しくなりました。私も弟の面倒を見ないといけないのかなと思い、母のことを手伝いました。父は家事にあまり参加していなかったように思います。ちょっと遠い存在でした。困ったことがあっても、親に頼るのはダメなのかなと思っていました。
あなたはどうでしたか? 小さいときのあなたについて思い出してみましょう。親御さんは厳しかったのですか?
両親から怒られた記憶はあまりありません。親からも周囲の大人からも「お手伝いをしてえらいね」とほめられることが多かったと思います。母は仕事や弟のことで大変そうだったので、迷惑をかけないように気をつけていました。小学生のときはピアノを習っていて、ピアノを弾くと母は喜ぶので練習をがんばりました。
学校の勉強はできるほうでした。よく委員に選ばれました。「面倒見がよく、勉強もできる子」だと見られていました。ほめられてもあまり嬉しいとは思いませんでした。いつもほめられていたので、当たり前のことでした。逆に「もっとがんばらなければいけない」と思っていました。
あなたはどうでしたか? 小学生のときのあなたと親御さんとの関係について思い出してみましょう。小さいとき、どんなことが怖かったですか?
失敗することがとても怖かったです。母にがっかりされるのが怖かった。
小さいときに恐怖を感じたのは「ピアノで失敗すること」。初めてのピアノ発表会で、私の前に舞台に出た子が、緊張のため弾けなくなってしまい、泣き出してしまったのです。それを見たら怖くなり、足がガクガク震えたことを覚えています。母がその子を見て、残念そうな顔をしたので、私も弾けなかったら、がっかりされるのかなと思いました。
その後もピアノはがんばりました。小学5年生までやりました。その後は受験があるからやめてもいいと言われました。ピアノが好きだったのかどうかは自分でもよくわかりません。それをやるのが当たり前のことだったので、好きかどうかはあまり考えませんでした。
あなたはどうでしたか? あなたが小さいときにどんなことが怖くて、いやだと思っていたのか思い出してみましょう。
どんな10代を送りましたか?
ずっと勉強をがんばっていました。親の希望する大学を目指しました。
小学生から塾に通い始めて、偏差値も割と高かったので中学受験をし、中高一貫の進学校に入りました。成績は中の上くらいでした。親は昔から「〇〇大学くらい入ってくれたら」と言っていたので、そうしたほうがいいのかなと思っていました。まわりに頭のいい子が多かったので、私も後れをとらないようにがんばりました。
なにかをするより勉強しているほうがラク。高校生になって特進コースに進みました。部活やアルバイトをやっている子もいなかったので、私もやらずに勉強していました。勉強をしていると親は納得してくれました。うるさいことも言われなかったので、そのほうがラクだったのです。
あなたはどうでしたか? 中高時代の過ごし方についてふり返ってみてください。仲の良い友だちはいましたか?どんなつき合いをしてきましたか?
友だちはいました。ただ、なんでも話すほどではなかったです。遊ぶときや一緒になにかをするときに、自分の意見や希望を言うことが苦手で、いつも相手に合わせてしまうクセがありました。頼まれたり、誘われたりすると断ることができなくて、ときどき友だちといることにとても疲れました。
友だちからはいつも頼られていました。あまり親しくない子からも、ノートを貸してと頼まれました。でも自分から友だちに頼るのは苦手でした。頼ったら面倒だと思われるのではないかと思っていました。自分の悩みなどを相談することもありませんでした。その子たちとは大学に行ってからは疎遠になりました。いまはクラス会で会うくらいです。
あなたはどうでしたか? 10代の頃から現在まで、どういう友だちづき合いをしてきたかふり返ってみてください。どこで自分はつまずいたのだと思っていますか?
大学に入ってから、サークルもアルバイトも、就活もうまくいかなくなりました。うまくいかない原因がわからなかったです。
希望していた大学に入り、親は私に関心をもたなくなりました。やってみたかったアルバイトやサークル活動を始めました。でも、どちらにも馴染むことができませんでした。新しい人間関係を築くのが難しくてやめてしまいました。3年の後半から就職活動が始まりました。まったくうまくいかず、でも、なにが原因で面接で落とされるのかがわかりませんでした。
パニック症、うつ病に…
ある日、電車に乗っていたときに過呼吸になりました。呼吸ができなくなる恐怖を覚え、大学の保健センターに駆け込みました。心療内科への受診を勧められ、通院するようになりました。将来への漠然とした恐怖と不安で、4年生の夏にうつ病と診断されました。うつは治り、就職もしましたが、ストレスがかかるとたびたびパニック症を起こしていました。
あなたはどうでしたか? いまの状態はいつから始まったことだと思いますか? これまでのことを整理してみましょう。村上伸治
精神科医
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