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やりたいこと見つからず選択的無職…実家に頼りきる「他力本願な50歳兄」。年金月16万円、資産2億円の72歳母からの「強烈すぎる置き土産」【FPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月4日 10時45分

やりたいこと見つからず選択的無職…実家に頼りきる「他力本願な50歳兄」。年金月16万円、資産2億円の72歳母からの「強烈すぎる置き土産」【FPが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

2023年の総務省統計局労働力調査によると、15~64歳の非労働力人口は約1,394万人です。家族のなかに心身の不調以外の理由で働かない人がいる場合、親の相続の際にきょうだい間で揉めやすくなるケースも。本記事では、山田徹さん(仮名)の事例とともに、高齢親の資産管理と相続対策についてFP dream代表FPの藤原洋子氏が解説します。

大学卒業後、定職に就かず長年無職の兄

子どものころから学校の成績がよかった山田徹さん(仮名/50歳、無職)は、両親の勧めに従い大学進学を決め、地元の国立大学に入学。4年後、無事に卒業しました。ところが、「やりたい仕事が見つからない」という気持ちのまま大学生活を送り、就職活動の時期になっても身が入りませんでした。

そんな気持ちのまま入社した会社は、1年で退職しました。その後、就職した会社も長く勤めることなく退職。短い期間での入社・退職を繰り返しているうちに、とうとう就職することに嫌気がさし、無職のまま、実家で暮らすことになりました。

徹さんには妹がいます。徹さんの将来を心配した妹の佐々木久美子さん(仮名/47歳 専業主婦)は、徹さんの今後の生活をどのようにしたらいいのかわからなくなり、相談にみえました。久美子さんはゆっくりと話しはじめます。

妹の相談内容

「私と兄の徹は中国地方の地方都市出身です。父(享年70)は、祖父から継承した事業を大きく成功させた中小企業の経営者でした。5年前に持病である心臓病が悪化し、亡くなりました。

父の遺産は預金が5,000万円と、自宅マンション(相続税評価額3,000万円)です。父が亡くなったあと、兄と私は2,000万円ずつ相続し、母(72歳)は、預金1,000万円と自宅マンション、会社の売却益1億円を相続しました。

兄は父の遺産を相続したことで、多額の遺産相続の権利があることに気が付いたようです。母には、母方の祖母から相続した株式と投資信託が9,000万円あります。父から相続した現金を合計すると金融資産は2億円です。

兄は私にいいました『久美子、お母さんが亡くなって、遺産を相続するときがいずれ来るよな。久美子と2人でわけることになるから、僕が受け取る現金は1億円だ。就職なんてしなくても、そのお金があれば一生困らないぞ!』。

母の生活費となる遺族年金と足し合わせた年金額は、月に16万円です。しかし到底それだけでは生活できません。無職の兄の分と合わせた2人分の食費や日用品に、水道光熱費、マンションの管理費・修繕積立金などで、年金以外に月30万円かかっています。年間では360万円ほどだと思います。

兄は、以前と変わらず気楽に暮らしています。相続した遺産を使って自動車を買い替えたり、お酒を楽しんだり……。父が亡くなってから5年のあいだに半分の1,000万円は使ってしまっていると思います。

母は、兄の国民年金が途切れないように、兄が仕事に就いていないあいだも毎月支払っていたそうです。いまでも。おかげで65歳からの年金は、月7万円ほど受け取れるようです。

先日、1ヵ月ぶりに実家に行ったとき、母は、『私もお父さんも、徹を甘やかしてしまったわね……。こんな生活になるとは思ってもみなかったわ。お金があるといっても、私がいつまでも元気でいられればいいけど、いつかは誰かに頼らないと生活できない時が来るでしょう……。あてにされて、“お金が欲しい”といわれても困るわね』このごろ、すっかり気弱になったのか、そんなことをいっています。

同居しているからといっても、兄に母の世話やお金の管理は任せられません。なにかよい方法はあるでしょうか」

生前から財産の管理を頼む方法

ご自身の判断能力が低下したときに備えるための制度として、「家族信託」と「成年後見制度」があります。成年後見制度には、「法定後見制度」と「任意後見制度」の2つがあります。それぞれの特徴を簡単に紹介します。

家族信託

財産を所有ししている人が、信頼できる家族に財産を移し、管理や処分を任せることができる制度です。信託契約を結ぶ際に、詳細に内容を決めることができるため、本人の意思を反映しやすいことが特徴です。成年後見制度と比べて柔軟で幅広い管理ができます。たとえば、積極的な資産運用なども、契約内容によって可能になります。契約の作成などの手続きに一定の費用がかかりますが、その後の費用は抑えられます。信託財産の承継先を決めておくことも可能です。

法定後見制度

すでに判断能力がなくなった人を対象とします。家庭裁判所が選任した成年後見人等が、本人の財産の管理や身上保護を、法律で定められた範囲内で行います。定期的に報酬の支払いが発生します。

任意後見制度

将来の判断能力低下に備えて、本人が後見人にふさわしい人を選び、公正証書で契約します。本人の意思を反映しやすいというメリットがあります。本人の判断能力が低下すると、その時点で家庭裁判所によって任意後見監督人が選出され、効力が発生することになります。定期的に報酬の支払いが発生します。

今後のお母様と徹さんの生活が20年続くとすれば、すでに使った1,800万円に加えてあと7,200万円は生活費として必要になります。また、医療費や介護費用がかかる可能性もあります。制度を利用するという選択肢があることと、生前贈与や相続の制度についてもお伝えしました。

母が決めたこと

お母様は、久美子さんの子ども2人に、それぞれ1,000万円を教育資金として贈与し、残りの現金や金融商品などの管理を久美子さんに任せようと考えています。お母様が亡くなったあとの信託財産は、久美子さんが相続することにしたいそうです。

兄のこれから

徹さんには、マンションを相続すると遺言を残しました。現在の計算の上では、徹さんの遺産取得分の遺留分は3,000万円以下になるからです。話し合いをしましたが、徹さんは「でも、お金が……」とごねます。

お母様は、「徹、お父さんの会社の従業員だったAさんが、会社を経営しているの。できることからでいいと思うから、働いてみるのはどうかしら。お願いしておいたから」といったそうです。結局は徹さんも渋々ながら了承することに。

母からの念押し

徹さんは50歳。これからのことをしっかり考えていただく機会になればと思います。お母様は久美子さんに「これからも徹のことをよろしく頼むわね」とそっと伝えたそうです。

藤原 洋子

FP dream

代表FP

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