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親の収入を鑑みれば当然でしたが…関西の証券会社に堂々入社も上司ガチャでハズレ、新卒1年目で手取りゼロに。「月1万5,000円」23歳無職男性の少ない貯金が削りとられるワケ

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月5日 10時45分

親の収入を鑑みれば当然でしたが…関西の証券会社に堂々入社も上司ガチャでハズレ、新卒1年目で手取りゼロに。「月1万5,000円」23歳無職男性の少ない貯金が削りとられるワケ

厚生労働省の令和5年の労働安全衛生調査によると、過去1年間でメンタルヘルスの不調により連続1ヵ月以上休業した労働者、または退職した労働者がいた事業所の割合は13.5%に上る。企業によるハラスメント防止措置が拡充してきたとはいえ、依然として多くの労働者がハラスメントや職場環境を原因とした体調不良で休職や退職に追い込まれ、なかには社会復帰が困難である人も。収入が減少、またはなくなることによって生活が逼迫するなかでも、「奨学金の返済」は続いてゆく。本記事では、Aさんの事例とともに、奨学金返済の現状と社会的課題についてアクティブアンドカンパニー代表の大野順也氏が解説する。

「自分が働けなくなるなんて…」

中国地方出身のAさんは地元の大学を卒業後、関西地方の証券会社に営業職として就職し、キャリアの第一歩を踏み出した。3ヵ月間の研修期間を経て大阪市内の支店へ配属されると、同期の誰よりも早く成果を出そうと、朝早く出社して勉強し、日中は外回り、帰社後は事務作業をこなして終電近くまで無我夢中で働いた。

忙しくも充実した日々を送っていたが、人事異動で新しい上司がやってくるとその状況が一変。この上司に目を付けられ、上司による執拗なパワハラが始まったのだ。Aさんにだけ、ほかの社員がいる前で否定的な言葉を浴びせる、長時間怒鳴りつける、挨拶は無視、さらには書類を投げつけるといった行為が日常的に繰り返され、Aさんの心身は次第に疲弊していった。

休職や転職を考えたものの、「早期離職でキャリアに傷がつくのではないか」という不安や、「辞職を告げた際に上司になにをされるかわからない」という恐怖から、踏み切ることができなかったという。そのような状況が半年ほど続いたある日、Aさんはついにベッドから起き上がることができなくなった。

早期離職も、奨学金「月1万5,000円」の返済が重くのしかかる

医師の診断の結果、Aさんはうつ病と診断され、会社を退職し、23歳で無職となった。治療と休養に加え、大阪まで駆けつけてくれた家族のサポートもあり、Aさんは徐々に回復し転職活動を始めた。両親からは地元での就職を勧められたが、幅広い選択肢から新たなキャリアを選びたいと考え、大阪で働くことを決めた。

自己都合かつ1年未満での退職だったが、うつ病の診断を受けていたため、雇用保険の基本手当支給を受給できた。90日という給付日数とともにAさんを焦らせたのが、奨学金の返済である。約300万円の奨学金は返済が始まったばかりで、わずかな貯蓄から月1万5,000円が引き落とされる状況に、将来への不安が募った。どうにかならないかと貸与を受けた日本学生支援機構(JASSO)のサイトを確認してみると、返還を先送りすることができる返還期限猶予という制度があることを知った。早速申請し、失業中であることを理由に申請すると猶予が認められ、Aさんはほんの少し安心したという。

ある日、面接を受けた企業で、人事担当者から奨学金代理返還制度を導入しているという説明を受けた。選考が進み内定を得ると、Aさんは前職での経験を活かしつつ自分のペースで働ける仕事内容だったことと、奨学金返済の不安が軽減される環境であることを理由に、この企業への入社を決めた。前職と比較し給与が下がること、新しい環境に身を置くこと、不安はもちろんあるが、Aさんは新たなスタートを切ることができたのである。

奨学金の総貸与人数483万人のリアル

JASSOによると、2022年時点で奨学金の総貸与人数は483万人に上るという。そのなかには、Aさんのように予期せぬ事情で返済が困難になるケースも少なくない。

Aさんは大学進学時、これから約300万円の奨学金を借りることは認識しており、「働いていれば問題なく返せる額だろう」と考えていた。親の収入的にも奨学金を借りることが当たり前の選択であったという。

突然働けなくなるリスクは誰にでも存在する。多くの若者が、社会復帰が難しいまま傷病手当や生活保護を受給しながら生活しているのだ。Aさんのように奨学金の返済が難しい場合には一度、減額返還制度と返還期限猶予制度の利用を検討してほしい。減額返還では月の返還額を最長1年間(通算10年以内)、最大半分まで減額することができ、返還期限猶予は支払期限を最長1年間(通算10年以内)延長することができる。ただし、元金や利子の免除とはならないため、注意が必要である。

奨学金返済を社会全体で支える必要性

若者が奨学金を借りることに対して不安を抱かず、安心して高等教育を学び、社会で活躍できる環境を整えることは、社会全体の責任といえる。給付型奨学金の拡充や、学費の無償化といった政策の実現はもちろん重要だが、現在奨学金を返済している483万人に対する支援を今すぐに行うことが、結果として将来高等教育を受ける若者の不安を軽減し、より多くの学生の教育機会を生み出すことにつながるのではないだろうか。

奨学金が正しく返済され、次世代の学生の高等教育機会に活用される循環型の仕組みを構築するためには、奨学金団体だけではなく、民間企業も一体となって奨学金を支援していく必要がある。

大野 順也

アクティブアンドカンパニー 代表取締役社長

奨学金バンク創設者

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