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「湾岸タワマン生活」強制終了…世帯年収1,200万円・人生を満喫する「子のいない30代パワーカップル」、余裕のローン返済のはずが急転直下のワケ【FPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月6日 10時45分

「湾岸タワマン生活」強制終了…世帯年収1,200万円・人生を満喫する「子のいない30代パワーカップル」、余裕のローン返済のはずが急転直下のワケ【FPが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

丸の内や銀座、大手町、日本橋といったオフィス街へのアクセスがよく、大型の複合施設も揃い、タワーマンションが林立している都心の湾岸地区。若い世代を中心に根強い人気を誇る「湾岸タワマン」ですが、なかには無理のある住宅ローン返済計画を立ててでも住みたいと望む人もいるようで……。本記事ではAさんの夫婦の事例とともに、高収入夫婦でも陥る可能性のある住宅ローン破綻のリスク、住宅購入におけるリスク管理の重要性について、社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が解説します。※個人の特定を避けるため、事例の一部を改変しています。

「いつまでも恋人気分で人生を満喫しようね」

Aさん夫婦は共働き世帯。お互いの仕事を尊重しながら自由な生活を送っています。子どもは、欲しいと思った時期もありましたが、妻が「仕事と子育ての両立ができそうにない」と、話し合いを重ね、現在はDINKs(ディンクス)を望んでいます。妻は「いつまでも恋人気分を満喫しながら生活しようね」と、年末年始と夏季休暇は海外旅行へ行くなど、現状の生活を楽しんでいます。2人とも大手企業の総合職で働いていることから、30代前半で年収はともに約600万円。世帯年収で1,200万円以上です。

先日、妻が「インターネットで見かけたけれど、私たちのことを『パワーカップル』っていうのかしら。一般的に、パワーカップルは、世帯年収1,000万円以上で夫婦ともに高収入のカップルのことみたい。でも夫婦それぞれの年収が700万円以上ともいわれているから、それにはまだ届いていないね。数年後くらいには、本当のパワーカップルになっているかもしれないわね」と笑って話していました。確かにインターネットで検索すると、妻がいうような書き込みがあります。30代で世帯年収が1,200万円あるなら、パワーカップルといえそうです。

パワーカップルならタワマンに住みたい

タワマンに住んでいる人は一般的に高所得者層、資産家などといわれ、存する地域にもよりますが、購入価格は億を超える物件が多いようです。それゆえ、タワマンは「勝ち組」「富裕層」というイメージを持つ人が多いのではないでしょうか。

ある日、不動産会社から賃貸マンションの契約更新のお知らせが届いたことを機に、今後について2人で話し合いをします。いまのこのマンションも悪くはないけれど、そろそろ賃貸ではなく、マンションを購入してはどうかと提案します。すると、「一生に一度の買い物だから購入するならタワマンがいい!」と妻がいいだしました。Aさん夫婦は自分たちはパワーカップルだから、タワマンに住むのは相応だと思っています。

子どもがいないなら教育費もかからないし、給与も40代、50代の会社の先輩は年収1,000万円を超えているから自分も10年以内には同程度になるだろうと妻が提案します。Aさんも「そのとおりだな、一生に一度の買い物だから最高の買い物をしよう」と提案にのりました。

いままでの家賃と同等の住宅ローン

早速、不動産めぐりを始めます。不動産会社の営業の人から、住宅ローンについて説明がありました。住宅ローンの返済額の目安は、年間返済額が世帯収入の15~20%、総支払額が購入資金の65~80%、返済期間は30~35年が一般的です。ただし、目安だけを基準に決めるのではなく、自分に合ったプランや返済方法を選んだほうがよいとのことです。

説明を聞いたAさん夫婦は、いままでも家賃25万円の賃貸マンションに住んで余裕があったため、世帯年収の20%、月20万円の返済なら楽勝、むしろ月30万円の返済でも問題なさそうだと思いました。諸経費等は頭金として、貯蓄(500万円)を全部出します。貯蓄はまたすぐに貯めればよい、家をランクアップさせることで生活をより充実させようと「1億円借りられる金融機関を探してくれないかしら?」と担当者に懇願します。不動産会社の営業担当者も自分の成績につながるため、ペアローンできる金融機関を探してきてくれました。

〈Aさん夫婦の住宅ローンプラン〉

借入金額 1億円 返済期間 35年 金利 変動金利+ペア一般団信上乗せ(0.64%) 保障 ペアローン限定ペア団信 借入時 35歳以上 毎月の返済額 26万5,819円

余裕のローン返済のはずが…

Aさん夫婦は念願の湾岸タワマンを購入し、新生活を始めます。毎月の支払いはペアローンを組み、管理費等の諸経費を含め約30万円に抑えることができました(住宅ローンとは別に管理費が1万5,726円と修繕積立金が1万2,305円で約3万円)。

眺望もよく、毎日がホテルに宿泊する記念日のような生活を送ることができました。しかし充実した生活も束の間、妻の外資企業で突然のリストラがあり、妻もリストラの対象になっていました。

さらにAさんも友人とスノーボードに出掛けた際、衝突し足を複雑骨折したのです。Aさんは働けないあいだ、健康保険から傷病手当金をうけることになりましたが、いままでの給与全額が保障されるわけではなく、給与の3分の2程度の額となります。さらに入院費や生活費以外の予定外の出費などがかさみ、夫婦は窮地に追い込まれました。

頭金としてAさん夫婦は貯蓄をすべて出してしまったため、想定外のできごとに住宅ローンが重くのしかかるだけでなく、生活費も不足してしまいます。仮にAさんが休職中でなければ、妻は若くてキャリアもあるため、新しい仕事が見つかるまでの期間を耐え抜けば家を守り抜ける可能性もあったかもしれません。しかし、Aさん自身の分はなんとかなっても、妻の分までカバーできない状況となってしまいました。

住宅購入は万一を前提に

想定外な事態が続き、Aさん夫婦は余裕のローン返済が急転直下となり、タワマン生活を終える危機に直面しています。Aさん夫婦は2人の不運が同時期に重なってしまったことで家計に致命傷を受けました。不確実性の時代、日本の大企業であってもどうなるかはわかりませんが、外資系企業の場合、日本企業と比較しても解雇をされやすいことは当然知っていたことでしょう。

住宅を購入する際は、衝動買いや自分たちを過大評価せず、万一の場合にどのように対処できるかシミュレーションし計画的に取り組むことが重要です。

<参考>

※平成30年度マンション総合調査結果 管理組合向け調査の結果

https://www.mlit.go.jp/common/001287645.pdf

三藤 桂子

社会保険労務士法人エニシアFP

代表

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