兄さん、相続はどうするの?父が遺した〈遺産1億円〉を兄妹で相続も大部分が不動産…52歳・専業主婦の妹、どうしても〈代償金3000万円〉を欲しかった事情【相続の専門家が解説】<br />
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年12月28日 10時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
「実家は兄が同居しているので権利を主張するつもりはないが、自分の生活を考えると現金は欲しい」と主張する妹、財産の8割が現金ではなく家だった場合、武雄さんはどのように相続案を出せばいいのでしょうか。本記事では、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が事例をまじえて、できる対策について詳しく解説します。
父親が亡くなった
武雄さん(55歳・男性)が妹の恵さん(52歳)と相談に来られました。
先月、88歳の父親が亡くなり、これから相続の手続きをしないといけないため、相談したいということです。
相続人は母親(82歳)と子ども二人の3人です。父親には遺言書がありませんので、3人で遺産分割協議をすることになります。
自宅が財産の8割
父親の財産は評価が約8,000万円の自宅で母親と武雄さんは同居しています。預貯金が2,000万円あり、父親の財産は約1億円となりました。
基礎控除4,800万円を超えていますので、相続税の申告が必要になりますが、自宅の小規模宅地等の特例を適用すれば土地の8割、約6,000万円の評価減ができるため、納税は必要ありません。小規模宅地等の特例を適用できるのは、母親か武雄さんとなります。
二次相続を考えると
母親の固有財産は預貯金1,000万円程度と生命保険1,000万円ということなのですが、自宅を相続すると二次相続でも課税対象となり、相続税の申告が必要となります。
また、母親は父親が亡くなったあと一挙に老化がすすみ、認知症の一歩手前のようで、預貯金の管理なども煩わしくなっているようで、今回の相続も自分はいらないと武雄さんと妹に言っているそうです。
妹の事情
相続の話が持ち上がって以来、妹の恵さんは武雄さんにたびたび「相続はどうするの?」と連絡をしてくるようになりました。武雄さんは「確かに相続が気になるのはわかるけれど、妹は悠々自適な専業主婦で特にお金には困っていないはず……なぜ執拗にお金のことを言ってくるのだろう?」と不思議に思っていたそうです。
元々仲がよかった兄妹だったこともあり、武雄さんが詳しく話を聞いてみると、実は半年前に妹の夫の浮気が原因で離婚していたということでした。慰謝料や財産分与はあるものの、ずっと専業主婦だった妹は一人で生きていくことに不安を感じていると明かしたということです。
分割案は?
財産の構成は自宅80%、預金20%で、4対1の割合です。母親が相続しないとなれば、相続分が50%ずつとなり、相続額は5,000万円ですので、武雄さんが妹に自分のお金を3,000万円用意して代償金として払わなければなりません。
困っている妹のため、武雄さんもできることなら代償金を払ってあげたいところでしたが、負担が大きいため、その金額を決めるために提案してもらいたいということでした。
現実的な分割案は?
父親の財産だけで分割するために、いちばん無理がないのは、自宅を武雄さんが相続し預金は全部妹が相続することです。4対1の割合でバランスは取れていませんが、武雄さんの持ち出しはなく、負担はありません。
不動産は武雄さん、預金は妹にという方向性は合意ができているため、妹の譲歩が得られたら実現する内容です。
母親の預金も含めて
しかし、武雄さんの相続分が多いのは明らかですので、次の提案は「母親の相続時に残る預貯金は妹にし、武雄さんが相続するものはない」という内容です。
生命保険の受取人を武雄さん500万円、妹500万円と指定し、預貯金は妹に相続するとすれば、母親の相続発生時は妹が多く受け取れることになります。
武雄さんも妹もそうした考え方で検討したいということで、引き続き提案してもらいたいと委託を頂きましたので、サポートしていきます。
◆相続実務士のアドバイス
●できる対策
小規模宅地等の特例を適用すれば納税はなしにできる。
母親の二次相続を考えると父親の財産は相続しないことが得策。
●注意ポイント
子どもが小規模宅地等の特例を適用するための選択肢は同居していることで、武雄さんしかないため、妹に理解を得ることが必要。
母親の財産も確認したうえで分割案を決めることが望ましい。
※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。
曽根 惠子 株式会社夢相続代表取締役 公認不動産コンサルティングマスター 相続対策専門士
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp)認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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