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年金月12万円〈70歳の母〉が末期がんで〈45歳の娘〉緊急帰国。遺品整理で訪れた20年ぶりの「実家の市営団地」で泣き崩れたワケ

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年12月29日 8時15分

年金月12万円〈70歳の母〉が末期がんで〈45歳の娘〉緊急帰国。遺品整理で訪れた20年ぶりの「実家の市営団地」で泣き崩れたワケ

(※写真はイメージです/PIXTA)

子どもの心配ばかりしている親。しかし年を重ねていくと立場は逆転し、親の心配は尽きなくなるものです。近くに住んでいればこまめに様子を見に行けるものの、遠距離だとどうしても普段の様子はわからないもの。そんな親のいつもの様子を知ったとき、ショックを受けることも珍しくありません。

立場が逆転…年老いていく親を心配する子ども

結婚とともにアメリカに渡った中山トーマス智子さん(仮名・45歳)。日本を離れてからすでに20年になるといいます。外務省『海外在留邦人数調査統計』によると、2023年、海外に住む日本人は約129万人で、永住者は約55.7万人。特に、北アメリカに住む日本人が最も多く、約27万4千人が永住者として生活しています。

智子さん、同級生と比べると結婚が早く、しかも結婚相手は外国人、結婚後は海外住まいということで、周囲はとてもざわついたとか。慣れない海外の暮らしに、当初はホームシックになったといいますが、今では日本での暮らしのほうが違和感を覚えるようになったといいます。

そんな智子さんが常に気にしていたのが、母・美智子さん。智子さんが幼かった頃に離婚。以来、ダブルワークで智子さんを大学まで進学させてくれたといいます。それなのに、大学を卒業し、社会人になって3年もしないうちに結婚→海外に行ってしまったことに対して、「なんて親不孝なんだろう」と、後ろ髪ひかれる思いがあったとか。ただ「あなたの人生なんだから、私には関係のないこと」と、気持ちよく送り出してくれた母・美智子さん。どんなに感謝を伝えても足りないくらいだといいます。

そんな母も70代。以前は美智子さんが智子さんに「そっちの生活はどう?」「病気していない?」「きちんと食べてる?」などと心配していましたが、今はすっかり逆転。「きちんと食べてる?」「病気してない?」「きちんと運動もしないと、足腰が弱るよ」などと、口うるさく尋ねていたといいます。

セコム株式会社『離れて暮らす親に関する意識調査』によると、別居している親の生活について「不安に感じる」と答えた人は86.6%。具体的な不安要素として最も多かったのは「病気や怪我」で66.1%。次いで「認知機能の低下」が47.3%。「車の運転」29.6%、「火の不始末」26.3%、「オレオレ詐欺などの特殊詐欺」25.7%、「会話機会の減少」22.3%、「空き巣や強盗などの犯罪」21.4%と続きます。

こうした不安を和らげるために48.0%が実践しているのが「連絡の頻度を増やす」という方法。親との連絡頻度で最も多いのは「1週間に1回程度」で27.7%。「1日に1回程度」と合わせると43.8%が「週に1回」は連絡を取っていると回答しています。

ただ智子さんの場合、頻度が多く、また連絡のたびにぐちぐちというものだから、「ちょっとあなた、うるさいのよ」と煙たがられることも。

――そんなに心配しなくても大丈夫。楽しく暮らしているわ

美智子さんの口癖だといいます。

緊急帰国から3ヵ月後に母死去…20年ぶりの実家へ

いつまでも親が元気なわけではありません。美智子さん、70歳で帰らぬ人に。原因はがん。見つかったときには手遅れだったといいます。それを聞いた美智子さんは緊急帰国。3ヵ月ほど病院と、近くにとったホテルを往復する生活を送り、美智子さんを看取ったといいます。

こんなに早く、母との永遠の別れが訪れるとは……結婚してから、何度かアメリカに来てくれることがあったとか。一方、智子さんが帰国したのも数える程度。毎回実家に帰ることはなく、美智子さんが東京に出てきて一緒に観光してまわるというのがお決まりのパターンだったといいます。美智子さん、「あんたが家に来るとうるさそうだから」と、智子さんが家に来るのを遠ざけていたという事情もあります。そのため、遺品整理で訪れた実家は、実に結婚以来の20年ぶり。

ただ想像していた以上に、美智子さんがひとり暮らしをしていた市営団地はきれいでした。というよりも、必要最低限のものしかなく、散らかしようがなかった、というほうが正しいでしょうか。そんな部屋で見つけたのは、美智子さんの預金通帳と1冊のノート。通帳はこまめに記帳され、美智子さんの普段の暮らしを垣間見ることができました。

年金は2ヵ月に一度、24万円が振り込まれていました。月12万円。手取りは10万円を上回る程度です。年金だけではとても生活が苦しかったことでしょう。それでも智子さんの子どもたちの誕生日やクリスマスのときには、必ずプレゼントを送ってきてくれました。アメリカで買ったほうがずっと安いものだったので、「わざわざ送らなくてもいい」といったことがありましたが、「気持ちだから」と智子さんの意見を受け入れることはなかったといいます。

ノートはレシートを貼るだけの家計簿。それをみると、美智子さんの普段の生活が鮮明になってきます。

――本当に必要最低限のものしか買っていない、何ひとつ無駄なものを買っていない……最近は特に苦しかったんじゃないかな、生活……

何ひとつ親孝行をしてやれなかった後悔が押し寄せて、智子さん、気づくと嗚咽していたといいます。

内閣府『国民生活に関する世論調査(令和6年8月8日~9月15日)」』によると、「あなたのご家庭の生活は、去年の今頃と比べてどうでしょうか。」との問いに対して、「低下している」が前回の35.9%から33.0%と減少。一方で「同じようなもの」が58.3%から61.9%に増加しました。生活が向上したというよりも、浮上できずにいる、といったほうが適切かもしれません。

そんななか「充実感を感じるとき」を尋ねる設問で、「家族団らんのとき」と回答したのは全体の47.3%。ただ年齢別でみていくと、「70歳以上」は33.5%と、全世代で最低でした。これは、おひとり様高齢者が増加の一途を辿っていることも影響しているでしょう。

日本とアメリカ。あまりに遠すぎるものの、もっとしてあげられることはあったはずなのに……後悔の念は日に日に大きくなっているといいます。

[参考資料]

外務省『海外在留邦人数調査統計』

セコム株式会社『離れて暮らす親に関する意識調査』

内閣府『国民生活に関する世論調査(令和6年8月8日~9月15日)」』

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