もう、揺れて揺れて…「晴海フラッグ激戦」に敗北も、諦めきれず湾岸タワマン最上階を購入の世帯年収2,500万円・30代「エリートサラリーマン×公認会計士」パワーカップル。低層階に引っ越したワケ【FPが解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月8日 10時45分
(※写真はイメージです/PIXTA)
東京オリンピック選手村跡地の「晴海フラッグ」は、高倍率の抽選が話題になるほどの人気ぶり。晴海フラッグをはじめとして、タワーマンション価格の値上がりは人気を反映しています。しかし一方で、実際に住んだ人からは意外な声も。本記事では、Aさん夫婦の事例とともにタワーマンションの思わぬ落とし穴について、FP1級の川淵ゆかり氏が解説します。
晴海フラッグの人気と値上がり
東京オリンピック選手村跡地に建設された巨大マンション群の「晴海フラッグ」は大人気。最近ではタワーマンション「SKY DUO」の抽選倍率が640倍に達して話題になりました。しかし、こういった異常な高倍率は、転売を狙う業者や個人投資家や外国人といった購入希望者が多く、「完全なマネーゲームではないか」ともいわれています。
現に、ある不動産の中古マンションのサイトで先行販売された晴海フラッグ板状棟の部屋はすでにいずれも1億円を超えて売り出されており、当該サイトでは1坪当たり587~823万円となっています(2024年12月23日現在)。第一期分譲時の1坪当たりの価格は300万円前後となっていたため、かなりの割安でした。現在は大きく値上がりしていて、一介のサラリーマンではなかなか手の出ない価格まで上昇しています。
確かに売却できれば大きな利益を得ることができますが、高額の物件の買い手は限られてしまいます。今年(2024年)に入ってからは、金利の上昇や衆議院選挙の結果など先行きの不透明感が増しており、海外の景気にも左右されることから晴海フラッグのような流動性の高い物件の動向には注視が必要です。
4ヵ月ぶり、首都圏新築マンション販売価格が下落
株式会社不動産経済研究所が12月19日に発表した2024年11月の首都圏 新築分譲マンション市場動向によると、平均価格7,988万円と4ヵ月ぶりに下落したと発表しています。ちなみに前月の平均価格は9,239万円となっています。
11月に発売された東京23区の新築マンションの平均価格は1億889万円と前年同月と比べて15%下落しましたが、7ヵ月連続で1億円を超え。2025年も東京都心では再開発が進み、新築高級マンションの供給は増えるといわれています。建築資材や人件費のアップもあり、物件価格も上がるでしょうが、マンションを投資対象としている人は、売るタイミングなども重要になってきます。
どうしてもタワマンがよかった世帯年収2,500万円の30代パワーカップル
晴海フラッグ板状棟の激戦に敗れた大手企業に勤務するエリートサラリーマンの38歳夫と公認会計士である30歳妻は、23区内の別の湾岸地区にあるタワーマンションを購入した世帯年収2,500万円のパワーカップルです。それまでは、賃貸マンションの2階で暮らしていましたが、ステータスの表れや投資目的のほか「やっぱり眺望のいい部屋に一度住みたいのよ」という妻の意見から、話が進みます。いい物件との縁もあり、思い切ってタワーマンションの最上階を購入することに決めたのです。
さぞや優雅な毎日を送っているだろうと思われましたが、なんと入居して数ヵ月も経たないうちに売りに出したというのです。売却理由は意外にも妻の体調の悪化でした。
「入居してしばらくは快適だったんですが、もう揺れて揺れて……。たぶん揺れに敏感になってしまったようです。近ごろは寝つきも悪くなった気もするんです」
タワマンは強風で揺れるのか
一般的にタワーマンションとは、20階以上、高さが60mを超える超高層マンションを指します。タワーマンションには耐震・制震・免震といった地震対策が施されており、非常に厳しい基準で建てられていますから、地震に弱いということはありません。
一方で、建物自体の倒壊は防ぎやすいものの、高層階になるほど揺れが大きくなる構造となっています。高階層に住んでいてもなんともない人も多いのですが、Aさんの妻のように体調を崩してしまうケースもあるようです。
なお、地震が発生した場合の高層建物で発生する周期の長いゆっくりとした大きな揺れを「長周期地震動」といいます。気象庁のホームページでは、長周期地震動について次のように説明しています。令和5年(2023年)2月より、新たに長周期地震動に関する観測情報のオンライン配信もスタートしています。
地震が起きるとさまざまな周期を持つ揺れ(地震動)が発生します。ここでいう「周期」とは、揺れが1往復するのにかかる時間のことです。南海トラフ地震のような規模の大きい地震が発生すると、周期の長いゆっくりとした大きな揺れ(地震動)が生じます。このような地震動のことを長周期地震動といいます。建物には固有の揺れやすい周期(固有周期)があります。地震波の周期と建物の固有周期が一致すると共振して、建物が大きく揺れます。高層ビルの固有周期は低い建物の周期に比べると長いため、長周期の波と「共振」しやすく、共振すると高層ビルは長時間にわたり大きく揺れます。
また、高層階の方がより大きく揺れる傾向があります。長周期地震動により高層ビルが大きく長く揺れることで、室内の家具や什器が転倒・移動したり、エレベーターが故障したりすることがあります※。
健康的に子どもを産むために…夫婦の決断
気圧や環境といった問題もあるのでしょうが、病院に行っても妻の不調の原因はわからずじまい。「マンションにできるだけいたくない」と妻は、帰宅が遅くなったり休日も外出したりするようになりました。
そろそろ子どもを作ろうか、と話し合っていた2人ですが、妻の体調が悪いようでは子どもどころでもありません。マンション内にあるプールやキッズルームも気に入って購入した2人ですが、揺れに敏感になってしまった妻のことを考え、Aさんも「見晴らしもよかったけど、もう飽きちゃったからいいよ、引っ越そう」と言ってくれたそうです。現在は妻の体調と出産・育児のことを考えて、低階層の物件で暮らしています。
〈参考〉
国土交通省 長周期地振動
https://www.data.jma.go.jp/eqev/data/choshuki/choshuki_eq1.html
川淵 ゆかり
川淵ゆかり事務所
代表
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