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「思わず声を荒げてしまいました。」妻の浮気で離婚…普段は我慢強く温厚なシングルファザー、42歳で“月収ゼロ”→最終手段の生活保護申請も、福祉事務所職員からの〈まさかのひと言〉【FPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月9日 10時45分

「思わず声を荒げてしまいました。」妻の浮気で離婚…普段は我慢強く温厚なシングルファザー、42歳で“月収ゼロ”→最終手段の生活保護申請も、福祉事務所職員からの〈まさかのひと言〉【FPが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

「ひとり親」というと、母子家庭が取り上げられるケースが少なくありません。しかし、その影に隠れて経済的に厳しい状況に置かれている父子家庭も存在するようです。本記事では、Aさんの事例とともにシングルファザーの実情と利用できる支援制度について、FP1級の川淵ゆかり氏が解説します。

全国14万9,000世帯の父子家庭

厚生労働省「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査」では、母子世帯数は119万5,000世帯、父子世帯数は14万9,000世帯で、平均年間収入(母または父自身の収入)は母子世帯が272万円、父子世帯が518万円と発表しています。14万9,000世帯の父子家庭のうち、離婚が原因で父子家庭になったケースが75.6%を占めています。また、シングルファザーの就業率は85.4%と高く、仕事と子育ての両立に励んでいる父親が多いことがわかります。

なお、父子世帯の平均年収は518万円となっていますが、あくまでも平均です。なかには子育てしていくには厳しい収入水準の人もいらっしゃいます。そんな人のためにシングルファザーには支援制度は欠かせません。

妻の不貞で離婚…シングルファザーに

小さな会社で長年デスクワークを行ってきたAさん(42歳)は、妻の浮気が原因で離婚。現在はシングルファザーとして10歳の息子と2人暮らしをしています。しかし、勤めていた会社も経営悪化の末、とうとう倒産となってしまいます。

再就職先を探すも、シングルファザーという立場やAさん自身の年齢もネックになり、なかなか希望どおりの仕事は見つかりませんでした。若いころ、アルバイトの経験から調理師免許だけは持っていましたが、過去に接客で嫌な思いをしたことがあることと、いままでどおりのデスクワークを希望していたことから、新しい仕事はなかなか決まらず、途方にくれます。

我慢強いAさんでしたが、知人から「生活保護を受けてみたら?」といわれ、福祉事務所の窓口に相談へ行くことに。ちなみにシングルファザーの生活保護の受給状況は次のようになっています。

注:1)令和3年度の調査結果は推計値であり、平成28年度の調査結果の構成割合との比較には留意が必要。なお、 比較に当たっては、政府統計の総合窓口(e-Stat)に掲載している実数値の構成割合と比較を行う必要があることに留意。 注:2)総数は不詳を除いた値である

子どものための保険なのに…

生活保護は経済的に困窮している人が受けられる制度です。そのため、預貯金をはじめとする資産となるものを所有している場合は、原則受給することができません。

預貯金などほとんどなかったAさんですが、「生命保険や学資保険には入っていますか?」と問われ、「もちろん、子どもがいますから入っていますよ」と答えると、金額などを質問されました。すると「解約すれば生活できますよね」と言われてしまい、ビックリしてしまいます。「子どものためにいろいろなものを我慢して、無理をしてまでここまで続けてきた保険なんですよ! なぜ解約しないといけないんですか!?」Aさんは思わず声を荒げてしまいました。

生活保護の受給を申請したときに貯蓄性のある生命保険や学資保険の加入が発覚すると、一定の条件に該当しない場合の保険は解約を求められます。解約返戻金などによって、生活の維持が可能だとみなされるからです。

また、生活保護の申請をすると、

・生活状況等を把握するための実地調査(家庭訪問等) ・預貯金、保険、不動産等の資産調査 ・扶養義務者による扶養(仕送り等の援助)の可否の調査 ・年金等の社会保障給付、就労収入等の調査 ・就労の可能性の調査

といった調査が入ります。クレジットカードなども処分が求められることや、ローンの残っている住まいも処分しなければ生活保護を受けることができない、といったケースもあります。

ひとり親世帯が利用できる手当や支援制度

なお、生活保護を受給できなくても、ひとり親世帯が受給できる手当や支援制度には次のようなものがあります。制度を活用して子育ての負担を軽くしてください。

児童手当(ひとり親に限りません。2024年10月改正)

0~3歳未満:月額1万5,000円(第3子以降は3万円) 3歳~高校生年代:月額1万円(第3子以降は3万円)

児童扶養手当

高校生年代までのお子さんを養育しているひとり親家庭が対象です。所得により支給額が変わります。  

全部支給:4万5,500円 一部支給:4万5,490円~1万740円

※加算額(第2子以降1人につき)令和6年11月~

全部支給:10,750円  一部支給:10,740円~5,380円

ひとり親家庭等医療費助成

ひとり親家庭の父または母とそのお子さんが医療機関を受診した場合、医療費の自己負担分の一部または全部を助成される制度です。各自治体により制度内容が異なります。

就学援助

学用品費、給食費、修学旅行費などが援助される制度です。各自治体により制度内容が異なります。

家賃補助

各自治体により制度内容が異なります。東京都世田谷区の場合は「ひとり親世帯向け家賃低廉化補助事業」として、家賃が最長10年間で最大4万円減額されます。

自立支援教育訓練給付金

就職に必要な資格や技能を身につけるために対象の教育訓練講座を受講した際、受講費用の60%(講座により上限あり)が支給される制度です。

ほかにも各自治体により制度内容が異なりますが、次のようなものがあります。

・保育料負担軽減制度 ・交通費助成 ・上下水道の減免制度

また、控除や減免については、次のようなものがあります。

ひとり親控除

合計所得が500万円以下といった条件などに該当する場合、35万円の所得控除が受けられます。

国民健康保険料・国民年金保険料の減額/免除

所得の状況などに応じて、国民健康保険料や国民年金保険料の減額や免除を受けられる場合があります。それぞれの自治体の国民健康保険担当窓口、年金事務所窓口で手続きを行います。

シングルファザーAさんのその後

デスクワークをあきらめたAさんは、福祉施設の調理員として働き始めることにしました。接客がないので精神的には楽ですが、休日も仕事が入ったり朝が早い時もあったりで、子どもと遊ぶ時間も減ってしまいました。また、若いわけでもありませんし、体力を使う仕事ですからいままでのようにはいきません。

ですが、「子どものためだと思うと力が湧いてきます。子どもも理解してくれているので助かります。早く仕事に慣れるように頑張っているところです」と、以前よりは穏やかな顔でお話してくれました。

〈参考〉

※厚生労働省「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査結果」

https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/f1dc19f2-79dc-49bf-a774-21607026a21d/9ff012a5/20230725_councils_shingikai_hinkon_hitorioya_6TseCaln_05.pdf

川淵 ゆかり

川淵ゆかり事務所

代表

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