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小学校4年生からほとんど学校には行っていません…平均月収60万円、15歳の少女が歩んできた想像を絶する人生【Z世代ネオホームレスの実態】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月5日 8時15分

小学校4年生からほとんど学校には行っていません…平均月収60万円、15歳の少女が歩んできた想像を絶する人生【Z世代ネオホームレスの実態】

「お金がない」「家がない」「頼れる人がいない」…そういった事情とは別の理由でホームレス状態になっている、いわば〝ネオホームレス〞とも呼べる存在の若者が増えているといいます。本記事では、元芸人でYouTube登録者数24万人超えの青柳貴哉氏の著書『Z世代のネオホームレス 自らの意思で家に帰らない子どもたち』(KADOKAWA/2023年4月発売)より一部抜粋し、著者が新宿歌舞伎町のトー横界隈で出会った15歳の少女についてご紹介します。

「2年家に帰っていない」平均月収60万円の15歳

僕は、自分が何者であるかを説明した上で、モカさんに取材交渉を試みた。彼女は悩んだり考えたりする素振りは一切見せず、それまでと同じトーンで「いいですよー」と了承してくれた。

「もう2年くらい家には帰っていません。良く言えばホテル暮らし、悪く言えば家出少女」

取材を始めると、彼女はそう切り出した。僕は家出少女の〝少女〞の部分が気になった。雰囲気から彼女が若いことは察知していた。肩まであるミディアムヘアの毛先は赤く染められていて、その赤に合わせるかのように黒いパーカーには、紫やピンクという刺激的な配色のキャラクターが所狭しとプリントされていた。黒のスカートの丈は短い。

髪を後ろで束ねるリボンも黒、足元のスニーカーも黒い厚底、彼女の小さい顔の半分を覆うマスクも黒だ。いわゆる〝地雷系〞と呼ばれる出で立ちだった。僕は「かなり若いな。19歳、いや18歳くらいか?」と予想しながら「今、何歳ですか?」とあらためて年齢を確認すると、モカさんはまたもやはっきりと淀みなく、こう答えた。

「15歳です」

彼女は中学3年生だった。頭の中が真っ白になったあと、僕は大混乱に陥った。「え? 中学生ってYouTube に出ていいんだっけ?」「え? 中学生って撮影したら捕まるんだっけ?」などという素っ頓狂(すっとんきょう)な疑問が頭を駆け巡った。彼女の年齢を10代後半と予想していた僕の認識はグニャリと歪んだ。

モカさんの年齢を聞いて僕は分かりやすく動揺し、会話もしどろもどろになりかけていた。そんな僕にお構いなしの様子で、彼女はつらつらと自分の生い立ちを語り始めた。

モカさんが初めて歌舞伎町に来たのは小学4年生(10歳)の頃。両親はいるが二人とも本当の親ではないこと。その両親の虐待から逃げるように出た実家には、2年ほど帰っていないこと。血の繋がった本当の父親からは性的虐待を受けていたこと。現在はパパ活で生計を立てていること。平均して月60万円は稼いでいること。

そして、昔も今も、ずっと〝死にたい〞と思っていること―。

彼女の話は、そのすべてが驚きと衝撃の連続だった。15年という人生の中でモカさんの経験したことは、その倍以上生きている僕の理解をはるかに超えていた。

両親の虐待から逃げ込んだのは歌舞伎町

モカさんの両親は、離婚・再婚を繰り返し、彼女の父親や母親はその都度替わっている。母親が最初に結婚した男性との間にモカさんのお兄さんが産まれた。その後、二人は離婚。お兄さんを連れた母親は別の男性と再婚し、その再婚相手との間にモカさんが産まれた。

そして再び母親は離婚することになり、モカさんとお兄さんは今度は父親の方についていった。この時点でお兄さんと父親の間に血の繋がりはなくなっている。さらにその父親が別の女性と再婚し、またもや離婚。この時はモカさんだけが母親に連れられ、お兄さんは家を出ていった。その母親がさらに再婚し、現在に至る。よって、モカさんと現在の両親との間に血の繋がりはない。

あまりにも複雑すぎる家庭環境。この話をしながら、モカさんは笑っていた。その表情は、自分の生い立ちに呆れているようにも見えたし、「私ってめんどくさいでしょ?」と訴えかけるような自虐的な笑みにも見えた。

彼女は今まで幾度となく、他人に自分の境遇を話してきたのだろう。この話を打ち明ける時、耳を傾ける相手には血の繋がった本当の両親がいて、温かい食事や温かい布団があって、というケースも多かったのではないだろうか。

ちょうどこの時の僕と同じように、モカさんの話に相槌を打つのが精一杯、という引きつったような相手の表情を、彼女は何度も見てきたのだろう。そのたびに「あなたは普通じゃない」と突きつけられたような、あるいは「かわいそうだね」と同情されたような、そんな気持ちを15歳の少女が抱いたとしても不思議ではない。自分の生い立ちを話すモカさんの笑顔は、僕にそう思わせた。それほどに、15歳とは思えない悟りきった笑顔だった。

そんな特殊な環境の中で育ったモカさんにとって、同じ境遇でともに育ったお兄さんだけが唯一の理解者であり、拠り所であったようだ。

「お兄ちゃんと私はお父さんが違うんです」

「お兄ちゃんが家を出たのは15歳。今の私とちょうど同じ歳でした」

モカさんはたびたびお兄さんを引き合いに出しながら、自分の過去を語っていった。彼女が歌舞伎町に通うようになったのも、お兄さんがいたからだという。

「私、両親は嫌いだけど、お兄ちゃんだけはすごい好きだったから、お兄ちゃんのいる歌舞伎町に行こうと思ったんです」

血の繋がりがない両親との生活は想像を絶するものだった。彼女は両親から毎日のように虐待を受けていた。そんな両親から逃げるように初めて千葉の実家を飛び出したのは10歳、小学4年生の頃。モカさんが向かった先はお兄さんのいる歌舞伎町だった。

歌舞伎町に来た10歳の妹を兄が追い返さなかった理由

15歳で家を出たお兄さんはさまざまな仕事を転々としたあと、歌舞伎町でホストとして働くようになっていた。モカさんは「歌舞伎町」「ホスト」などのキーワードだけを頼りに、なんとかお兄さんの働くホストクラブにたどり着く。10歳の女の子が初めて目にする歌舞伎町はどのように映ったのだろうか。僕はお兄さんから「早く家に帰れ」と言われなかったか聞いてみた。

「言わないですね。両親がやばい人だって知ってるんで」

お兄さんも同じ境遇で育ち、両親から逃げるように15歳で家を出ていた。モカさん曰く、再会した時にお兄さんは店でも人気の売れっ子ホストになっていたという。過酷な生活環境から15歳で飛び出したお兄さんは歌舞伎町にたどり着き、言うなれば歌舞伎町に救われていたのだ。

そんなお兄さんが同じように両親のもとから逃げてきた妹に対して、家に帰るよう促すはずがないし、モカさんを家に帰すよりも歌舞伎町に留まらせる方が安全だと考えたのかもしれない。とにかく、10歳のモカさんは歌舞伎町に入り浸るようになった。

中学3年生のモカさんに学校について尋ねてみると、こんな答えが返ってきた。

「私、小学校4年生からほとんど学校には行ってないんですよ」

ホストのお兄さんの仕事が終わるのはいつも朝方で、モカさんはそれまでの時間を歌舞伎町の路上やネットカフェで過ごしていた。時には、ホストクラブのバックヤードでお兄さんの仕事が終わるのを待たせてもらうこともあるそうだ。

もちろん警察に補導されて、実家に連れ戻されることも何度もあった。しかし、そのたびに実家を抜け出し、お兄さんのいる歌舞伎町へと舞い戻る。そんな日々を繰り返してきた。結果、歌舞伎町にたどり着いた10歳から今まで、学校にはほとんど行っていないという。

青柳 貴哉

※本記事は『Z世代のネオホームレス 自らの意思で家に帰らない子どもたち』(KADOKAWA)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

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