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最後に家に帰ったのは2年前…13歳から道端に立ち、パパ活で「1回2万円」を稼ぐ少女の実像【Z世代ネオホームレスのドキュメント】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月6日 15時15分

最後に家に帰ったのは2年前…13歳から道端に立ち、パパ活で「1回2万円」を稼ぐ少女の実像【Z世代ネオホームレスのドキュメント】

「お金がない」「家がない」「頼れる人がいない」…そういった事情とは別の理由でホームレス状態になっている、いわば〝ネオホームレス〞とも呼べる存在の若者が増えているといいます。本記事では、元芸人でYouTube登録者数24万人超えの青柳貴哉氏の著書『Z世代のネオホームレス 自らの意思で家に帰らない子どもたち』(KADOKAWA/2023年4月発売)より一部抜粋し、著者が新宿歌舞伎町のトー横界隈で出会った15歳の少女についてご紹介します。

15歳の少女「両親がいる家に帰ったのは2年前」

僕は、彼女と会った直後に交わした会話を思い返した。両親がいる家に近寄らず「一番最後に帰ったのは2年前」だとモカさんは話していた。

歌舞伎町で10歳から現在まで約5年間もの期間を過ごし、直近2年間は一度も家に帰っていないと語った彼女。「さすがにご両親から連絡があるのでは?」と聞くと、モカさんは食い気味に「ないです」と答えた。その瞬間だけ、彼女の目が少しだけ曇って見えた。

取材中にどんな質問を投げかけても、飄々と、淡々と、時にはにこやかに答えてくれた彼女が、この時だけは胸の内に渦巻く激しい感情を露わにしたように僕には思えた。両親からの連絡は「ない」と言い切ったモカさんは少しの沈黙のあと、こうつぶやいた。

「どうでもいいと思う……」

これを聞いて僕は、両親が自分の娘のことをどうでもいいと思っている、という嘆きの言葉だと理解したのだが、もしかしたら彼女が両親のことを「どうでもいい」と突き放していたのかもしれない。

現在の両親はモカさんに対して無関心だという。

モカさんは精神科病院に5ヶ月間ほど入院した経験がある。僕が話を聞いたのが2月で、前年の年末まで入院していたという。つまり、両親のもとに帰らずにいるこの2年の間に起きた出来事だった。当然、両親にもモカさんの入院を知らせる連絡が入ることになったが、その時の両親の振る舞いをモカさんはこんなふうにばっさりと切り捨てた。

「心配なフリだけして、迎えに行くフリだけして、終わり」

両親は病院の職員に対して世間体を気にして「心配なフリ、迎えに行くフリ」をしているのだと彼女は淡々と話した。そうした大人に対する諦めや、ある種達観したような観察力は、彼女が親から虐待を受けていたことと無関係ではないように僕は感じる。

こんな話を聞いたことがある。

虐待を受けながら育つ子どもは、自分の身を守ろうとする防衛本能によって「どうすれば愛されるのか? 愛してもらえるのか?」ということに注意を向けるようになる。その結果、周囲の大人に対する観察力が異常に発達するという。

さっき出会ったばかりの間柄に過ぎない僕の質問に対して、複雑すぎる家庭環境や入院歴といったプライベートな事情をモカさんは語ってくれた。彼女は達観した観察力によって、僕のことを「危ない大人ではない」と判断してくれたのかもしれない。僕の方も、モカさんの過剰に赤く塗られたアイシャドウに慣れてきた気がした。

続けて、モカさんは実の父親との間に起きた出来事を僕に打ち明けてくれた。

虐待の事実も「父親からの愛情」

「実の父親から性的虐待を受けていたんです」

モカさんの実父は、母親に性的虐待を、モカさんに対しては殴る蹴るなどの暴力を振るっていたという。そんな生活が続いたあと、両親は離婚。父親に引き取られたモカさんは、これまでの殴る蹴るの暴行に加えて、性的虐待も受けるようになった。

父親からの性的虐待という過去を、取材しながらある程度は想定していたので、モカさんの告白した内容を僕は静かに受け止めた。だが、僕にとって衝撃的だったのは、彼女が辛そうな様子をほぼ見せなかったことだ。

「普通ではないと思ってたけど、これがお父さんから私への本当の愛情なんだなと思った」

モカさんは、まるで父親と遊園地に行った記憶を思い出すかのように、軽やかな表情でそう語った。幼少期から殴る蹴るなどの虐待を受けて育った彼女にとって、唯一父親が〝優しく〞接してくれた時間だったのではないだろうか。だからこそ、客観的に見れば性的虐待でしかない出来事が、彼女にとって〝父親との楽しかった思い出〞に変換されている。

そんなふうに思考を巡らせると同時に、僕は心の底から違和感を覚えずにはいられなかった。父親からの性的虐待について話すモカさんの顔には、中学生らしいあどけない表情が浮かんでいたからだ。

13歳からパパ活で生計を立てる

実父からの性的虐待という体験を、モカさんは成長するにつれて〝異常な出来事〞として認識するようになる。そして、中学1年生になった彼女は、自分が同性愛者だと気づき始めた。父親による性的虐待に加えて、モカさんは歌舞伎町に入り浸るようになってからは〝パパ活〞で生活費を稼いでいた。

〝パパ活〞とは、経済的に余裕のある成人男性といっしょに時間を過ごし、その対価として金銭を得る活動のことを指す。得られる金額は内容によって異なり、食事だけなら1万円、性行為があれば3万円など、パパ活というカジュアルで便利なパッケージの裏でさまざまな取引がなされている。

モカさんはトー横界隈の仲間たちと数人でホテルやネットカフェを泊まり歩いているが、そのたびに宿泊費として最低でも1,000円はかかる。寝る場所だけで一日1,000円、月で考えれば3万円。さらに食費や携帯料金などもかかる。こうした費用をまかなうためにモカさんはパパ活で生計を立てていた。

「(私、)男の人(に対して)は、自分の体さえあればなんとかなるんだなって思っちゃってる」

これが、モカさんが一連の経験から出した答えだった。

「そう思うから男の人を好きになれないのかな」「自分は、そういうことをされるから価値があるし、そういうことをされなかったら価値がないんだなって思う」

モカさんがパパ活を始めたのは13歳の頃。自分が同性愛者だと悟ったのも、同じく13歳の頃だった。おそらくこの時期までに、男性の〝いろいろな部分〞を見すぎてしまったことが、モカさんの恋愛観に大きな影響を与えたのだろう。念のためにはっきりと記しておくが、同性愛者であると自覚することは悪でもないし罪でもない。

道端に立つ10代の女の子たち

モカさんは1回のパパ活で約2万円を稼ぐ。月で計算すると月収は平均60万円。大手企業の部長クラスに等しい金額を中学生が稼いでいることに、僕は驚きを隠せなかった。

最近では、パパ活をしたい女の子と経済的に余裕のある男性とのマッチングをサポートするアプリやサイトが多数存在している。こうしたサービスを活用するのがパパ活の主流となっているが、どのサービスも成人であることを証明する身分証の提示が必要だ。

中学生であるモカさんは身分証を持っているわけもなく、そもそも彼女は成人ですらない。この手のサービスを利用できない彼女は、もっぱらSNSと路上でパパを見つけているらしい。

これはモカさんに限ったことではなく、近年はTwitterやInstagramといったSNSを通してパパ活に勤しむケースは決して珍しくない。モカさんによれば、SNSを使って出会うパパの年齢は20〜30代、路上で声をかけてくる人は30〜50代が多いのだという。

彼女がパパ活について話す際、印象的だったことがある。それは、路上で出会うパパのことを「声をかけてくださる方」と表現していたことだ。「くださる」という敬語は、路上で未成年に対して声をかけて買春を行おうとする卑しい男、という目線では使わないはずだ。

敬語としては不適切だが、そこには、彼女なりの「お客様」に対するサービス精神が込められているのかもしれない。おそらく彼女は、僕を含む世間の大人が思っている以上にパパ活を〝仕事〞として捉えており、彼女なりの責任感やサービス精神でパパ活に取り組んでいるのかもしれない。

こうしたプロ意識について尋ねると、モカさんは「歌舞伎町で学んだこと」だと答えた。〝学び〞という言葉に引っかかりつつも、僕はさらに踏み込んだ質問をしてみる。

「路上でパパを探す際は、歌舞伎町で立ちんぼをしているんですか?」

中学生の女の子にはふさわしくない単語が並んだが、ここまで数時間以上モカさんの話を聴き続けて、衝撃のエピソードの連続に僕の感覚も徐々に麻痺してきていた。モカさんは後ろめたい様子もなく、当たり前のように淡々と答えた。

「はい。そういう子、結構多いですよ。ほら、あそこに立っている子とか」

そう言われて、モカさんが指差したゴジラビルの前に目をやる。ゴジラビルとドラッグストアの間の通りにはポツン、ポツンと数メートルおきに間隔を空ける形で、4、5人の女の子が立っていた。その中には通りがかった男性と立ち話を始める子もいる。

僕はモカさんに言われるまで、彼女たちがそこに立っていることを意識していなかった。というのも、歌舞伎町には昼から営業するキャバクラや風俗店も多く、昼間でも客引きの女の子たちが道端に立っている。歌舞伎町ではこうした光景は昼も夜も関係なく、ごく普通の日常なのだ。

だが、客引きだと思っていた女の子たちがパパ活をしているとは思いも寄らなかった。

「え? あの子たちはキャバクラやガールズバーの客引きじゃないんですか?」

「違いますよ。あれはみんなパパ活です」

青柳 貴哉

※本記事は『Z世代のネオホームレス 自らの意思で家に帰らない子どもたち』(KADOKAWA)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

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