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ほら!だから言ったじゃん!…世帯年収1,100万円・共働きの30代仲良し夫婦「待望の第一子」妊娠で“親に甘えて”マイホームを購入→わずか2年で「離婚の危機」に陥ったワケ【CFPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月10日 11時15分

ほら!だから言ったじゃん!…世帯年収1,100万円・共働きの30代仲良し夫婦「待望の第一子」妊娠で“親に甘えて”マイホームを購入→わずか2年で「離婚の危機」に陥ったワケ【CFPが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

結婚や出産など、ライフステージが上がるにつれて「マイホーム」を検討する人は多いでしょう。住宅販売業者に勧められて“借りられる額の範囲内”で住宅ローンを組んだとある夫婦でしたが、購入してから2年後、念願のマイホームが原因でまさかの「大喧嘩」となってしまったのでした。牧野FP事務所の牧野寿和CFPが、具体的な事例をもとに住宅購入時の注意点を解説します。

待望の第一子、理想のマイホーム…「幸せの絶頂」にいたA夫婦

夫「ほら! だから言ったじゃん! やっぱり賃貸のほうがよかったんだよ」

妻「なによ! あなただってノリノリだったくせに!」

この夫婦は、いったいなぜこんなに揉めているのでしょう。話は、2年前に遡ります。

夫のAさんは34歳で、年収は700万円。同い年の妻Bさんは年収400万円で、それぞれ都内の別々の会社に勤める、共働きの夫婦です。妊活を始めて3年目、Bさんはようやく待望の第一子を妊娠しました。

2人は子どもができたことから、マイホームについて話し合うように。当時住んでいたのは、家賃16万円の賃貸マンションでした。

Bさんは「せっかくなら持ち家にしましょうよ。どうせ家賃を払うのなら、この子に残せる財産として家を買ったほうがよくない?」と、賃貸マンションより、住宅を購入するメリットを強調します。

一方のAさんは「マイホームを買っても、結局毎年固定資産税がかかるし、長いあいだ住宅ローンを返さなくちゃならない。修繕費もばかにならないし、賃貸のほうがいいんじゃないか?」と、住宅購入のデメリットを懸念している様子です。

話し合いの結果、Bさんの熱気に圧され、2人はマイホームを購入することになりました。また、決め手となったのは、Bさんの次の言葉です。

「前にね、ウチのパパとママに家の話をしたら、『頭金は俺たちに任せろ』って言ってくれたの。一生住むんだし、せっかくならお金で我慢しないで、住みたいところに住みなさいって」

「えっ、そうなの? そうか、お義父さんたちが頭金を出してくれるなら……」

こうして、Aさんは購入を決心。それからというもの、2人はマイホーム探しに奮闘しました。

Bさんが産休に入ってからは特に熱が入り、1年かかってようやく「庭付き戸建ての理想のマイホーム」を見つけたA夫婦。同じ時期に「待望の第一子」も誕生し、最高に幸せな日々が始まるはずでした。

念願のマイホーム生活で起こった「予想外」

現実はそう上手くいきません。子どもの誕生と慣れない土地での生活が重なり、日常生活でのストレスが2人を追い込んで行きました。

また、金銭面でも「予想外の出費」が多発。新居の外構や室内の装飾には、100万円単位で出費がかかりました。また、毎月の住宅ローンは約26万円です。たとえBさんが育児休業中で収入が減っても、返済は待ってくれません。

しだいに金銭的な余裕がなくなるなか、不安と子育てのストレスも重なって、ささいなケンカが増えるようになりました。

Bさんから愚痴を聞いた両親は、マイホーム購入の背中を押してしまった罪悪感もあり、「どうすれば娘夫婦の金銭的な悩みが解決するか」と知り合いのファイナンシャルプランナーである筆者に相談。その後、A夫婦に筆者を紹介し、2人はFP事務所に相談に訪れたのでした。

マイホーム購入で毎月10万円の負担増

A夫婦は「住宅ローンの負担が重く、この先滞りなく返済が続けられるか心配です」といいます。

Aさんの話によると、マイホームは下記のような経緯で購入にいたったそうです。

2人が購入したのは、9,800万円の新築の建売物件。Bさんの父親から「相続税精算課税制度」を利用してBさんが1,000万円の生前贈与を受け、全額頭金に充当。銀行からは8,800万円を借り入れました。購入価格以外の諸費用は、夫婦の貯蓄を取り崩して支払いました。

夫婦は、住宅購入時、不動産業者の担当者や別のFPから勧められたことから、変動金利で30年の「ペアローン」を組んで借入金を返済することにしました。

※ ペアローン……住宅ローンの一種。1つの物件に、夫婦などで持ち分割合を決め、そのぶんの住宅ローンを契約して、お互いの債務者となる。住宅ローン控除や団体信用生命保険(団信)にもお互いの持ち分が適用される。

住宅の持ち分割合は、給与収入と同様に6.5対3.5とします。9,800万円の住宅を6.5対3.5に分けると、Aさんが6,370万円、Bさんが3,430万円となります。このうち、Bさんは1,000万円を頭金としてすでに支払っているため、2,430万円を借り入れることにしました。

そして、毎月のローン負担額はAさんが19万0,500円、Bさんが7万2,700円、合計26万3,200円となりました。

「いくらなら借りられるか」よりも重要な“当たり前”のこと

住宅を購入する際は「自分の年収ならいくらまでなら借りられるか」という目安を「返済比率(または返済負担率)」で計算します。返済比率とは、年収に占める年間返済額の割合のことで、次の計算式で求めることができます。

年間返済額÷年収×100

まず、上記式の「年間返済額」とは、住宅ローンの返済額だけでなく、スマートフォンの分割払いやクレジットカードのリボ払いなど、住宅ローン以外の借入返済額も含めます。

また「年収」は、サラリーマンなら社会保険料や所得税などを差し引く前の「税込み(額面)年収」を指します。

ちなみに、住宅金融支援機構「フラット35」の返済比率は、年収400万円未満の場合は30%以下、400万円以上の場合は35%以下となっています。また、民間金融機関の住宅ローンの返済比率はさまざまですが、おおむね30~35%程度までといわれています。

しかし、本当に重要なのは、「いくら借りられるか」ではなく、「いくらなら完済まで滞りなく返済できるか」です。筆者の業務経験上、ストレスなく完済できる返済比率は「20%以下」が妥当と考えます。

また、住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査【住宅ローン利用者調査(2024年4月調査)】」でも、返済負担率の平均値は19.2%となっています。

A夫婦は「家計破産」の危機に陥っていた

A夫婦の場合、Aさんは32.6%、Bさんは21.8%と“借りられる範囲”には収まっていたため、審査も難なく通り、無事に住宅購入資金を借り入れることができました。

ただし、かつて住んでいた賃貸の家賃は16万円です。10万円も住居費の負担が増えています。また、今後、子どもが大きく育つにつれて、教育費などの子どもに関連する費用負担も増えていくでしょう。

仮に、子どもが保育園から小中高は公立に、大学は理系の私学に下宿して通った場合、筆者の試算で約1,800万円ほど必要です。

※ 文部科学省「私立大学等の令和5年度入学者に係る学生納付金等調査結果」「「子どもの学習費調査」学校種別の学習費(令和3年度)」、独立行政法人日本学生支援機構「令和4年度学生生活調査結果」、厚生労働省「地域児童福祉事業等調査結果の概況令和3年」などをもとに、筆者が試算。

この増えた分の負担額は、Bさんの育休終了後、給与が元の額に戻ったとしても補い切れません。

このまま夫婦が昇給しながら65歳の定年まで勤めても、また、現在変動金利で返済している住宅ローンの金利がこのまま変わらなかったと仮定しても、Aさんが54歳になったとき、つまり子どもが大学に入学したタイミングで家計が破産しかねない計算です。

A夫婦の「家計破産」を救うには

A夫婦によると「購入したマイホームはできるだけ手放したくない」とのこと。そのため、現在のA家の家計で、新居を保持するために、次の3つの改善策を早急に実施するように提案しました。

1.現在の無駄な支出を見直す

2.副業や転職をして収入を増やす

3.返済をしている銀行に事情を話して、善後策を協議する

まずは、「家計収支の黒字化」が急務です。上記1と2は同時に行い、支出が収入に収まるようにします。

また、利息の支払額は増えますが、銀行に返済期間を延長してもらい、毎月の返済額を減らすというのもひとつの手です。

あるいは、2人の気持ちが変われば、銀行の合意を得て住宅の任意売却をしたり、賃貸住宅に引越していまの自宅を賃貸に出したりすることで、家賃収入を得ながらローンを返済していくといった方法もあります。

夫婦は「いまの状況が可視化され、具体的な対策がわかってよかったです。焦りとストレスから2人の仲も険悪になっていたのですが、2人でよく話し合って対策を考えてみます」と、幾分ほっとした表情でその日は帰っていかれました。

A夫婦の「妥当な住宅購入価格」とは?

筆者が考えるA夫婦の「妥当な住宅購入価格」は、およそ7,200万円です。

夫婦の返済額は、Bさんが1,000万円の頭金を負担したとして、6,200万円を夫婦の持ち分割合で返済すると、当初の毎月の返済額は、Aさんは13万9,900円、Bさんは4万5,500円、夫婦で18万円5,400円となり、現在より毎月7万7,800円返済額が減ります。この試算は、変動金利で6年ごとに125%ずつ金利が上昇した時も考慮した計算です。

※ 変動金利で借り入れたときに、金利が上昇しても、5年間は毎月の返済額が変わらないのが「5年ルール」。さらに、5年経過後の6年目からの毎月の返済額は、いままでの返済額の125%の金額までしか上げられないのが「125%ルール」。このルールはすべての金融機関で行われているわけではない。

また、住宅ローン控除が適用される新築の場合、13年間で、Aさんは270万円、Bさんは97万円それぞれ所得税が控除されます。

よって、A夫婦の給与と返済比率から妥当な住宅購入価格を試算した結果「7,200万円」となりました。

住宅は、いうまでもなく高価な買い物です。住宅ローンを組む場合には、たとえ「大丈夫!」という人がいても、その借入額が適正かどうかを慎重に見極め、生涯マイホームとともに生活していけることを自身で確認のうえ、購入を決断することが大切でしょう。

牧野 寿和

牧野FP事務所合同会社

代表社員  

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