あんたは他人なんだから…4年間の介護の末に義父を看取った57歳“長男の嫁”、海外から一時帰国した義姉の「心ないひと言」に悔し涙→誰よりも激昂した“意外な人物”に拍手喝采【FPの助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月7日 11時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
司法統計によると、家庭裁判所に申し立てられた令和4年の事件総数は114万7,682件と、相続に関するトラブルは後を絶ちません。特に、義父母の介護を担うことが多い“長男の嫁”は、法律上不利な立場にあるようで……。FP Office株式会社の工藤由美子FPが、具体的な事例をもとに解説します。
義父の死後、義姉から放たれた「衝撃のひと言」
57歳のAさんは、同い年である夫Bさんの実家の敷地内に建つ自宅で、専業主婦として暮らしています。いわゆる「長男の嫁」として嫁いだAさんは、2人の子どもが巣立ったあと、自然と義父母の世話をする役目を任されるようになりました。
4年前に義父が足を悪くしてからというもの、特に献身的に面倒をみてきたものの、4年間の介護の末に義父は息を引き取りました。
優しいAさんが苦手な“ある人物”
義父が亡くなってバタバタと葬儀の準備をするなか、Aさんは内心穏やかではありませんでした。それは、夫の姉Cさんの存在です。
夫よりも2つ年上の姉Cさんは海外で働く、いわゆる“バリキャリ”でした。そんなCさんは専業主婦のAさんを見下している節があり、以前会ったときも「Aちゃん、いつも家事に介護に大変ねえ。たまには外で働くとリフレッシュできるかもよ?」などと嫌味を言われたことから、AさんはCさんに苦手意識がありました。
葬儀のために久々に帰国したCさんは、葬儀が終わり実家に着くや否や、「遺産相続」の話を持ち出しました。
当然自分にも関係があると思い、Aさんが話に参加しようとすると、Cさんは言いました。
「あ、Aちゃんはお茶だけ入れたらあっちの家に戻っていいわよ」
「あれ、お義父さんの話ですよね? 私も聞かなくちゃと思って」とAさんが言うと、「あら、ごめんなさいねえ、言いづらいんだけど、あなたは法律上“他人”なの(笑)だからね、この話には参加しないでもらえるかな?」
元来気の強い性格であったCさんに対して夫も言い返すことができず、だんまりを決め込んでいます。
「義父が息を引き取るそのときまで、献身的に面倒をみていたのは私なのに。あんたは他人なんだからってなに? なんにもしてくれなかった義姉さんと夫で遺産を分け合うってこと? 納得できない。どうして……?」
悔しい気持ちを抑えることができなかったAさんは、以前から付き合いのあったファイナンシャルプランナーに、遺産相続について相談してみることにしました。
“長男の嫁”に遺産相続権がない理由
AさんはFP事務所に着くと、これまでの一連について話したあと、次のように訴えました。
「義父の介護をしていたのは私ですが、遺産をもらう権利がないということでしょうか?」
それを聞いたFPは、渋い顔をしながらこう告げます。
「なるほど。それはお辛かったですね。しかし、残念ながらAさんのように義父母を献身的に介護していた場合であっても、相続人の配偶者であるAさんには法律上、義父の遺産を相続する権利はありません」
義父母を介護する義務はないが…
そもそも法律上、相続人の配偶者が義理の親を介護しなければいけないという義務はありません。これは、嫁は子どもの配偶者であり、「姻族」(婚姻によってできた親戚)に分類されるためです※。 ※ ただし、民法第752条には「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と定められているため、夫が義理の両親の介護で困っている場合には、“協力”して妻がその介護を手伝う必要はあるかもしれません。
しかし、厚生労働省の調査によると、同居している家族が介護を行う場合が全体の46%で、そのうち「配偶者」が23%となっています。そのため、今回のケースのような場合、実際には同居している人が介護を求められる傾向が高いという現状があります。
このように、実際には“長男の嫁”が義父母を献身的に介護しているケースが多いため、義父や義母が亡くなったときには当然、自身も遺産相続できるものだと思ってしまいがちです。
しかし、先述のように、相続人の配偶者には遺産相続権が認められていません。つまり、今回のAさんのように、献身的に義父母の面倒をみてきた場合であっても、法律上遺産を手に入れるのは義父とほとんど関わりのなかった親族(Cさん)ということになってしまうのです。
相続人の配偶者としてはとうてい納得できないでしょうが、実際にこうした相続トラブルは少なくありません。
それでも納得できない長男の嫁に残された“奥の手”
こうした現状を受け、平成30(2018)年7月、被相続人の介護や看病に貢献をした親族には「特別寄与料」として金銭請求権が認められるようになりました。
これにより、相続の対象者が「被相続人の親族」にまで広がったことで、“無償の貢献”に対する公平性が図られることになったといえます。
ただし、介護や看病に貢献したときに金銭請求権が認められるのは“一定の範囲の親族”です。介護による特別寄与が認められる親族とは、下記の範囲の人を指します。
・被相続人の6親等以内の血族
・被相続人の3親等以内の姻族
「血族」とは、自分の親や子ども、兄弟姉妹などの“直接血のつながりのある親族”です。この場合には、6親等まで特別寄与料が認められます。
Aさんは直接血のつながりがないため、「姻族」にあたり、姻族の場合は3親等まで特別寄与料が認められます。つまり、Aさんは1親等の姻族に該当するため「介護による特別寄与料の金銭請求権」が認められるというわけです。
一方、“事実婚の妻”の場合は法律上「親族」ではないため、どんなに献身的に介護をしても特別寄与料の請求はできません。
“長男の嫁”に遺産を渡したいなら「生前対策」が必須
両親の立場として、お世話になった実子の配偶者に「遺産」を渡したいと考えた場合、主に下記のような方法があります。
1.遺言書
2.生命保険
1.遺言書
遺言内容は法定相続に優先するため、被相続人(今回のケースでいう「義父」)が、あらかじめ亡くなる前に「自分の財産を誰に、どのように遺したいか」を遺言書の形で意思表示することで、法定相続人以外にもしっかりと遺産を渡すことができます。
ただし、遺言書は民法所定の方式に従っていなければ無効となるため注意が必要です。
2.生命保険
次に「生命保険」です。生命保険であれば死亡保険金の受取人を自由に設定できます。
また、死亡保険金は原則遺産に含まれないため、他の相続人に死亡保険金の一部を渡す必要がなく、遺産分割協議に参加する必要もありません。
死亡保険金を利用すると、財産を渡すことができるだけでなく、遺産相続トラブルを避けることにもつながります。
そのほか、養子縁組や生前贈与といった方法もありますが、これまで説明した方法はいずれも被相続人が生前に対策しておかなければなりません。
ここまで説明を受けたAさんは、渋々ながら自身の置かれた現状を理解した様子。「遺産を受け取るには、お義父さんがあらかじめ対策をとっておく必要があったってことですね。なるほど……」とつぶやき、肩を落として帰られました。
パチーン!…遺産分割協議の場に響いた“痛快な音”
後日、Aさんから連絡が。
「先日はありがとうございました。あのあと、びっくりすることがあって……」
聞けば、遺産分割協議は1日で終わらず、FPに相談した次の日もCさんが実家に訪れたのだそうです。
義母の家事手伝いと義父の遺品整理のため、実家でテキパキ作業をするAさんに、Cさんは言いました。
「ああ、いたんだ。ごめんねAさん、今日も出てもらえるかな?」
怒りと悔しさであふれる涙を隠しながらAさんが台所へ向かったそのとき……
――パチーン!
驚いて振り返ると、義母がCさんの頬を平手打ちしたようです。
「いいかげんにしなさい! あんた何様なの! Aちゃんはうちに嫁いでから、いままでずっと私たちの世話をしてくれてるのよ。 海外でずっと好き勝手やっているあんたより、Aちゃんのほうがよっぽど家族なんだから」
それとね、と言って、義母は戸棚から「遺言書」を取り出しました。
「お父さんの遺言には、『Aちゃんにもきちんと遺産を相続するように』って書かれてありますから。C、あんたはお父さんの遺産を目当てに帰ってきたのかもしれないけど、あんたに渡すお金はありません」
義父母はAさんのために、生前から対策をしてくれていたようです。おかげで、Aさんにも遺産が相続されることになりました。
“長男の嫁”には遺産相続権がないため、財産を渡すためには遺言書や養子縁組、生命保険、生前贈与などをうまく組み合わせて利用する必要があります。
将来、遺産を受け取れないのではないかと不安な人や、遺産相続権のない人に財産を承継させたい人は、専門家に相談しながらあらかじめ対策を講じておきましょう。
工藤 由美子 FP Office株式会社 ファイナンシャルプランナー
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