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重い税負担を軽減するため「給料を事業所得として受け取りたい」という求職者が増加…そのメリット・デメリットとは【人材のプロが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月7日 11時15分

重い税負担を軽減するため「給料を事業所得として受け取りたい」という求職者が増加…そのメリット・デメリットとは【人材のプロが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

転職を目指す求職者の中で、プライベート・カンパニーを設立し、そこに事業所得の形で収入を計上したいと考えている人が増えているといいます。プライベート・カンパニーは1円からでも設立可能で、税制上の大きなメリットを受けられることをご存じの方は多いかもしれません。一方で、実は求職者に発生するデメリットもあります。今回は、サーチ・ビジネス(ヘッドハンティング)のパイオニアである東京エグゼクティブ・サーチ(TESCO)代表取締役社長の福留拓人氏が、求職者がプライベート・カンパニーを設立するメリット・デメリットについて解説します。

事業所得として収入を計上したい人が増加

昨今、求職者の中でプライベート・カンパニーを設立し、そこに事業所得の形で収入を計上したいと考える人が増えています。これまで個人が受け取っていた給与所得を自分の法人に入れてほしいということです。

この背景は非常に単純なことです。最大の理由は会社設立のハードルが低くなり、ほぼゼロになったといっても過言ではない状態だからです。

ご存じかと思いますが、有限会社の新設はできなくなり、株式会社はかつて設立に高額な資本金が必要でした。しかし、今では1円でも設立可能(設立のための事務手数料は別途必要)になりました。「一家にひとつの法人格」のようなことも難しくない状況になっています。

要するに独立自体が容易になってきたわけです。この流れは20年ほど前から存在していたのですが、一気に普及してきたのは、この5~6年ではないでしょうか。その流れを振り返ってみましょう。

法人格を持つことによるメリット

第一に挙げられるのは「新型コロナウイルス感染症」の流行です。このコロナ禍の時期に多くの企業が雇用調整助成金を受け取りました。労働者を長期にわたり強制的に休ませた業界も多かったと思います。その際、従業員が食べていくために副業への従事を緩和し、むしろ推奨するような例もよく見かけました。

ところが、みなさまもご存じのとおり、2ヵ所以上の事業所から所得を得た場合、確定申告をしなければなりません。副業禁止の会社に勤務している多くの人がそうであるように、勤める1社からしか収入のない場合は一般的に「特別徴収」という形で企業が納税を担います。ですから、確定申告とは縁のない人が多いわけです。

しかし、勤務先の承認を得た上で、いろいろな副業に取り組む人も増えてきました。そのせいで確定申告がかなり普及してきたのではないかと思います。法人格をつくらないまでも、青色申告の形をとれば税法上のメリットを享受できます。

最近は連日のようにメディアを賑わせていますが、税金も高額になってきました。昔は「大台」といわれた年収1,000万円にサラリーマンとして到達しても、可処分所得を見ると「こんなに引かれるのか」というほど手取りが少なくなって、お嘆きの方も多いのではないかと思います。このような背景で副業(パラレルキャリア)の推進が主流になってきました。

こうした時代背景もあり、少し勉強すれば1社で給料をもらうより自分の法人格を持つことの利点が大きいことがわかります。事業所得の形で勤務している企業から法人に入金してもらうために、自分の法人から請求書を発行します。一見給与の形に見えますがそうではなく、法人が顧客から入金してもらうのです。

これで収入は給与ではなく事業所得になります。法人の事業所得ということは、法人の運営上認められている経費の計上ができるようになります。そうなると、サラリーマンではなかなか認めてもらえない経費を使えるようになります。

例えば自宅の面積を事業用と居住用に按分し、一定の面積を事務所等に使用することで経費として計上できます。またいろいろな備品が必要経費として認められるという利点もあります。そのような節税上のメリットが多いのです。

会社にとっては手続きが煩雑に…それでも獲得したい人材かどうかがポイントに

このところ、ハイパフォーマーの人材において年収がインフレーションしていることはこのコラムで何度かお伝えしました。例えば、想定年収が2,000万円を超えるような場合は、法人格を利用した方がはるかに可処分所得が増え、税法上のメリットが多くなります。簡単に言うと金銭面で求職者のメリットが増加するわけです。

その一方で、企業としては管理コストが増大します。人事部門のマターから経理財務部門のマターに移行するのです。そうなると窓口も変わることになりますし、法人間で契約書を交わすような形になります。もちろんサラリーマンも労働契約のようなものを交わしていますが、それについて毎年契約書を更新するようなケースは少ないと思います。

それに比べると法人間では厳格な手続きが発生します。この煩雑な手続きをしてもなお、この人にぜひ会社の戦力となって活躍してほしい、こう思わせる人材であるか否か。ここが法人格での仕事を認めてくれるかどうかの唯一の関門といっても差し支えないでしょう、煩雑な手続きを経ても獲得したい人材であるかどうか、これまでの実績と活躍がモノをいいます。

求職者が法人を設立するデメリットも

そして忘れてならないことですが、求職者にもデメリットがあります。一般的に取締役は委任契約ですが、それ以外の会社幹部は労働契約に基づいて勤務しています。つまり無期で期間の定めのない立場にあります。むやみに解雇権を濫用できない立場となって保護されています。

ところが先ほどから申し上げている法人間の契約になりますと、契約期間にもよりますが、1年単位で契約が厳しく見直されるのが一般的です。パフォーマンスがよくなかったり、思いのほか活躍できなかったりした場合は、その立場が一気に不安定になることもあります。また法人間とはいえ、競業避止や会社のガイドライン抵触、また契約する会社以外への見えない影響などにも留意しなくてはなりません。

有識者を近くに擁していたり、自分自身がその方面に明るかったりするのであれば問題ありません。税制上のメリットは非常に大きなものですから、検討してみるのもよろしいのではないでしょうか。

余談ですが、かつて高額所得ランキングや高額納税ランキングが公表されていたことがあります。そこで「超有名芸能人なのに思いのほか所得額や納税額が少ないな」と思われたことはないでしょうか。そのケースはいまご紹介した法人格で事業所得として収入を得る手法に類似したものです。

大手芸能事務所に所属はしているけれども個人事務所が認められていて、芸能事務所からのギャランティはさらに個人事務所に流れ、そこから役員報酬や給与の形で本人に払われています。そこで払われている額が所得や納税のランキングとして公表されていました。これは法人の所得ではないのでずいぶん圧縮されています。

この形を思い浮かべていただくと、いかに税制上のメリットが大きいか想像がつくと思います。この給与を事業所得で受け取る手法は、収入の多い方にいろいろなメリットがあるので検討してみてはいかがでしょうか。

福留 拓人

東京エグゼクティブ・サーチ株式会社

代表取締役社長

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