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〈年金月15万円〉〈貯金2,300万円〉老人ホーム入居の78歳の母が憔悴。「もう我慢の限界」と突然の胃の痛みで救急搬送、たった1ヵ月で退去のワケ

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月2日 8時15分

〈年金月15万円〉〈貯金2,300万円〉老人ホーム入居の78歳の母が憔悴。「もう我慢の限界」と突然の胃の痛みで救急搬送、たった1ヵ月で退去のワケ

(※写真はイメージです/PIXTA)

年を重ねていくと、家の住み心地も変わっていくもの。さらに維持するのも大変になっていき、「住み替え」も選択肢になるでしょう。その住み替え先として存在感を増しているのが「老人ホーム」。しっかりと見学をすることが後悔のない老人ホーム選びのコツですが、見学しても見抜けないことはあるようです。

夫の逝去で妻抜け殻に…自慢の家も庭も荒れ放題に

菊池信子さん(仮名・78歳)。老人ホームへの入居を決めたのは半年ほど前のこと。ひとり娘の寛子さん(仮名・50歳)からの提案だったといいます。

住んでいたの郊外ながら、広い庭が自慢の一戸建て。元々田舎育ちの信子さんは、生まれ育った実家も広く、「裏山が自分のうちの庭みたいなものだったの(笑)」というスケール。そんな信子さんのために、3年前に亡くなった夫が愛する妻のためにと見つけてくれたのが、広い庭が自慢の一戸建てだったのです。

ただ夫が亡くなってからは、喪失感からか何もやる気が起きず、ガーデニングを楽しんでいた自慢の庭は荒れ放題に。家のなかに閉じこもることが多くなり、体を動かくことが減ったからでしょうか、足腰に痛みが生じ、医師からも「運動をしましょう」といわれるように。それでも行動に移せない状態でした。

また足腰に痛みがある状態では、外の階段や室内の階段を上るのも億劫になり、掃除や洗濯も疎かに。キレイに整っていた家も庭も荒れ果てていく姿に、遠くに住む寛子さんは帰省した際にショックを受けたといいます。

――お母さん、このままだと本当に歩けなくなってしまうよ

とはいえ、これからもっと高齢となれば、ますます体の自由は制限されるようになり、この広い家、広い庭は維持できなくなる……そう考えると、この家での生活は限界だったのかもしれません。

次の帰省のタイミングで寛子さんが持参したのは、大量の老人ホームのパンフレット。寛子さん自身も「老人ホーム=姥捨て山」というイメージを持っていたといいますが、最近の老人ホームは多種多様。ホテルライクな生活が叶うような施設もあるといいます。「きっとこのなかに、お母さんが気に入るホームがあると思うの」と寛子さん。いくつかピックアップし、見学して回ることに。そして1つのホームへの入居を決めました。

決め手となったのは、まず費用。年金月15万円と貯金2,300万円をベースに月々の取り崩し額を算出して決定した「月額費用は25万円まで」という予算感にぴったりと合致しました。そして何よりも緑豊かな環境でガーデニングが楽しめるサークル活動があるのが決め手でした。

――このホームであれば、同じ趣味の友人と楽しく過ごせそう

入居者やスタッフに悩まされる日々

入居前、住み慣れた我が家を出るのは悲しいけれど、期待感でいっぱいだった菊池さん。しかし入居早々、想像していなかったことが。初日から気になったのは入居者たちの話し声。食堂や談話室、廊下など、どこも賑やかで活気に満ちていましたが、逆に、落ち着ける、静かな場所はありません。また隣の部屋との壁は厚いものの、トビラのほうからは音が漏れ伝えてきます。賑やかな声が自室にいても聞こえてくるのです。

また楽しみにしていたガーデニングサークルも期待外れでした。指導してくれるスタッフは特に知識があるわけではないことは明らかで、「土を触るのは良いことです」」と、どちらかといえば、リハビリや健康増進を目的としたもの。本格的にガーデニングを楽しんでいた菊池さんには物足りないものでした。そのようなサークルだったので話があう入居者もおらず、サークル活動は1回参加しただけで、出席しなくなったといいます。

また要介護の入居者も多いからか、スタッフの対応はどこか子どもを相手にするような雰囲気。「菊池さん、いっぱい食べましたね」「菊池さん、今日も頑張りましょうね」……話しかけられるたびに気分が暗くなっていくのを感じたといいます。

――生まれてからずっと、家族しかいない一戸建てだったので、「他人と同じ屋根の下に暮らす」ことがきちんとイメージできていなかったのかもしれません。自分がこんなにもストレスを感じるとは思いませんでした

1ヵ月ほどストレスのたまる環境に耐えましたが、精神的な苦痛は体調面にも大きな影響を与えていました。菊池さん、突然の胃痛で救急搬送。医師からはストレスが原因の急性胃炎といわれました。退院後、ホームに戻ることなく、一度、荒れたままの自宅に帰ったといいます。

内閣府『令和6年版高齢社会白書』によると、「住み替え意向あり」の高齢者は30.4%。年齢を重ねるごとに、その意欲は低下していく傾向にあります。また単身者と2人以上世帯で比べると、単身者のほうが住み替え意向は高くなっています。

住み替え意向を持つようになった理由として最も多いのが、菊池さんのように「健康・体力面で不安を感じるようになったから」で24.8%。「自身の住宅が住みづらいと感じるようになったから」18.9%と合わせて、ネガティブな理由がトップ2を占めます。

高齢者の住み替えで有力な選択肢となる「老人ホーム」ですが、たった1回で「理想の住まい」が見つかるとは限りません。「相性が悪ければ次を探す」くらいの気持ちでいたほうがいいかもしれません。

[参考資料]

内閣府『令和6年版高齢社会白書』

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