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もっと“攻めの経営”ができたのに…50代経営者が感じる「事業承継」の後悔【経営コンサルタントが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月14日 7時15分

もっと“攻めの経営”ができたのに…50代経営者が感じる「事業承継」の後悔【経営コンサルタントが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

少子高齢化などを背景に、経営者の高齢化が深刻な日本。実際、年間3万社以上の企業が廃業しており、その主因は「後継者不在」にあると、株式会社タナベコンサルティングの藤井健太執行役員はいいます。経営戦略のひとつとして「事業承継」が急務となるなか、成功のカギはどこにあるのでしょうか。2社の事例とともに、詳しくみていきましょう。

70代以上の経営者漸減も…依然として若い経営者が少ない日本

まずは、下記の3つの図表をご確認いただきたい。

2023年時点の経営者の平均年齢は60.5歳であり、過去最高を更新している。さらに、70代以上の経営者の割合も継続して増加している。

一方で、70代以上の経営者の割合の増加率は漸減しており、後継者不在率も低下傾向にあることからも、事業承継には一定の進展が見られる。しかしながら、日本は50代以下の経営者の割合が他国と比較して依然低く、60代以上の割合が高い状況にある。

年齢が若いほど売り上げ高の伸びが大きい…経営戦略として「事業承継」が急務

経営者年齢と売上高に注目すると、経営者年齢が若いほど売上高の伸びが大きくなる傾向にある。50代で経営者になった方からは、「あと10年早く、30~40代の頃に会社を引き継いでいれば、もっと攻めの経営ができた」といった話を聞くことも多い。

事業承継には「最低10年」必要

経験上、事業承継が遅れる要因は主に以下3点と考えられる。

1.2~3年で承継できると考えている

2.後継者の選定が遅い

3.権限と責任を委譲しない

真因は「事業承継計画の策定・実行が遅い」ことである。事業承継は株式の承継だけではなく、もっとも大切なのは、「人・組織」の承継である。

したがって、承継完了までに少なくとも10年は必要である。具体的な目安としては、人脈を承継し、後継者に経営者としての帝王学を教える(5年)、両代表取締役として後継者と伴走する(3年)、代表権を外して見守る(2年)という流れである。

次期後継者を支えるブレーンの育成も同時に行わなければならない。加えて、現経営者のブレーンの処遇も決める必要がある。これらは場当たり的にはできない。計画的に進めるべき企業の最大の経営戦略である。

なお、2015年のコーポレートガバナンス・コード制定以来、上場企業にはサクセッションプランに関する取り組みが強く要請されている。2018年に改訂されたその内容を整理すると、以下のとおりである。

<補充原則4-1③>

取締役会は、会社の目指すところ(経営理念等)や具体的な経営戦略を踏まえ、最高経営責任者(CEO)等の後継者計画(プランニング)の策定・運用に主体的に関与するとともに、後継者候補の育成が十分な時間と資源をかけて計画的に行われていくよう、適切に監督を行うべきである。

しかしながら、プライム上場企業においても、サクセッションプランを策定している割合は約40%と少ないのが実情である。

だが、上場・非上場に関わらず、サクセッションプランはすべての企業への指針である。特に経営者の高齢化が進んでいる日本企業においては、経営者になにかが起きた場合、突然経営が立ち行かなくなる。

後継者においても同様で、選定からやり直しとなる。筆者も経営コンサルタントとして多くの企業と対峙するなかで、経営者の突然の体調不良等により事業承継せざるを得なくなったものの、準備不足により承継に苦労する後継者を幾度も見てきた。経営には「マサカ」の坂があるのだ。

【事例】「早期着手」が功を奏す…中堅企業2社の事業承継

A社…15年かけた長期事業承継計画を実行

ここからは2社の事例を紹介する。

中堅企業A社では、15年ビジョンおよび事業承継計画を策定し、それを実直に推進している。経営者のご子息は他社に就職したばかりであるが、ご子息へ事業を引き継ぐ意思を確認したうえで、ご子息にバトンタッチするまでの間はプロパーの社員に社長を任せることにした。

持ち株会社を設立し、現状の国内2事業と海外事業の3本柱でグループ経営を行う構想を描き、それを推進する組織体制(5年後、10年後、15年後)を整備している。

次の経営ブレーン候補のみならず、次々世代のブレーン候補の人材育成もあわせて実施している。もちろん、ご子息とはプランを共有しながら、引き継ぎの意思について随時確認を取り、心変わりしないようコミュニケーションを取っている。

ご子息の経営能力向上や経営者としての適性の見極めは今後の課題であるが、次々世代のブレーンを育てることで、組織で経営できる体制が構築できるだろう。

もしご子息の経営者適性が弱くても、持ち株会社のオーナーとして引き継ぎ、優秀なプロパー人材に事業会社の経営を任せればいい。人材育成は将来の社長・役員候補のアセスメントも担っているのだ。

B社…「ジュニアボード」を導入し、「経営者人材プール」の仕組みをつくる

B社では、15年前にジュニアボード(次世代の経営幹部育成プロジェクト)を導入し、将来の経営者人材のプールを継続的に行っている。ジュニアボードとは中堅幹部による模擬役員会であり、主にビジョン策定やビジョン実装のための経営システムとして取り入れている企業が増えている。

各部門から1~2名メンバーを選抜してチームを編成し、中長期ビジョンのドラフトを作成し、随時役員会に上申してアドバイスをもらう。出来上がったビジョン(ドラフト)は役員会で審議・意志決定の上で完成させる。

ジュニアボードからの提言はおおむね正式なビジョンに取り入れ、提言したメンバーがリーダーとなり次年度よりビジョンを力強く推進していく。

実施難易度が高いテーマは、次年度以降に随時ジュニアボードのチームを編成し、実装の具体策を作成する。役員会への上申、翌年度の方針への落とし込みは、ビジョン策定プロセスと同様である。

同社におけるジュニアボードの実装は約15年前に遡る。当時のジュニアボードでは後継者(現社長)がリーダーを務めた。数年前に事業承継を実施したが、当時のプロジェクトメンバーから役員・執行役員を輩出している。まだ新体制へとシフトしている最中ではあるが、現時点では承継は成功しているといえる。

そのポイントは、現社長が自身のブレーン候補の見極めをできたこと、そして共にビジョンを策定した仲間としてコミュニケーションが増えたことで、メンバーを適時要職に抜擢することができ、計画的に自身の経営体制の基盤を作り込めたことだろう。

後継者が若くして会社全体を俯瞰して未来を考える体験ができたこと、承継後の経営体制確立のスピードが格段に速まったことがジュニアボードの成果であるが、もっとも大切なことは、先代の経営者が承継の10年以上前に後継体制づくりに着手したことである。

「財を遺すは下、事業を遺すは中、人を遺すは上なり」

関東大震災後に内務大臣兼復興院総裁として東京の復興計画を立案し、現在の東京の原型を築いた後藤新平氏の有名な言葉である。同氏は、「最大の経済対策は人を育てることにある」と喝破している。

企業には、継続・売却・倒産・廃業の4つの選択肢しかない。もちろん、継続を前提に企業経営をしているが、現実は年間3万社以上の企業が廃業しており、その主要因は後継者不在である。これは人を遺せなかった結果である。

筆者も「もう少し早くお声がけいただいていたら……」というケースに何度も遭遇している。そして、経験上、早期着手で廃業を回避できるケースは多いと痛感している。極論をいうと、社長を引き継いだ日から次の事業承継は始まるのだ。

上場企業はサクセッションプランの策定を行い、非上場企業も左記に準じて10年事業承継計画を策定し、加えて後継者が40代のうちに承継を進めるべきである。「人を遺す」ことに早期に着手いただきたい。

藤井 健太

株式会社タナベコンサルティング

執行役員

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