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俺に投資の才能があったとはな…退職金2,500万円の60歳元校長〈新NISA〉の運用益にご満悦→定年後1年で1,500万円を失う悲劇。元凶となった「同僚からの誘い」に後悔が止まらない【FPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月16日 11時15分

俺に投資の才能があったとはな…退職金2,500万円の60歳元校長〈新NISA〉の運用益にご満悦→定年後1年で1,500万円を失う悲劇。元凶となった「同僚からの誘い」に後悔が止まらない【FPが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

令和3年総務省の「地方公務員給与実態調査結果」によると、令和3年時点で25年以上勤続した場合の教員の退職金平均額は約2,257万円でした。定年はまとまった資金が手に入るタイミングですが、ここで浮かれた結果“取り返しのつかない失敗”をしてしまう人も……。具体的な事例をもとに、老後破産危機に陥る原因と回避策についてみていきましょう。株式会社FAMORE代表取締役の武田拓也FPが解説します。

自分のことは後回し…周りに尽くした校長先生のセカンドライフ

Aさんは大学を卒業後、教員として38年間を学校のなかで過ごしてきました。明るく情に厚い性格のAさんは、生徒や保護者、他の先生たちからも人気で、50代前半で校長先生に。60歳で定年を迎えた際、離任式では皆から惜しまれながら送り出されました。

教員となってからというもの、休みも子どもたちのことを考え、相談に乗ったり授業の準備をしたりと多くの仕事をこなしていたAさん。自分のことは後回しでした。

たまに職員室に訪れる保険外交員の勧めで生命保険には加入していたものの、周囲には投資などの本格的な資産運用を行っている人はおらず、話を聞く機会はありませんでした。

そんなAさんは、退職金として受け取った2,500万円の使い道に頭を悩ませます。世間は投資ブームのようでしたが、これまで経験のないAさんにとってはまるで他人事です。

「これからは毎日が日曜日だ。どうやって過ごそうか……」

そんなある日のこと。同じ時期に退職した同僚Bさんと喫茶店で話をしていると、「退職金を使って新NISAを始めた」ことを知ります。

「ほら、CMとかでもやってるだろう? 今年から制度が新しくなったそうなんだけど、NISAってのはすごいぞ! なにもしなくても勝手にお金が増えるんだ!」

「でも、NISAって投資だろ? 俺には怖くて手が出せんな」

これまで、投資はギャンブルのようなものだと考えていたAさんは、同僚の思わぬ発言に耳を疑います。

「いや、まあ投資ではあるんだけど、そんなに怖いものじゃないんだ。俺はNISAを使って投資信託っていうものを買ってみたんだけど、投資のプロが値上がりしそうな銘柄を集めて運用してくれるんだ。プロが選んだ銘柄だからリスクも少ないし、やってよかったよ」

「へえ……そんなものがあるのか」

Bさんと話したことで投資に興味を持ったAさんは、帰りに図書館で本を借り、自分でも調べてみることに。

「働いていないのにお金を使うのは気が引けるが、これで安定した利益を出せるなら少しくらい贅沢してもいいかもな」

Bさんの話を聞いて前のめりになっていたこともあり、本を読み終わるころにはすっかり投資に興味津々のAさん。本のなかで「初心者におすすめ!」と書かれていた先進国株式のインデックスファンドに投資することに。すると、運用成績は予想以上に好調。数ヵ月で10%以上の評価益となりました。

なんだ、楽勝じゃないか…運用に“目覚めた”Aさんの暴走

「なんだ、楽勝じゃないか。まさか俺に投資の才能があったとはな……こんなことならもっと早くに始めておけばよかった」

Aさんは予想以上の運用成績にご満悦です。

その後「投資で重要なのは分散投資だ」と考えたAさんは、より高い利回りを求めて「新興国債券」にも幅を広げます。

さらに、同僚のBさんがSNSで見つけたという投資グループにも加入。「優秀なプログラマーが組成した自動売買ツールだから必ず儲かるらしい」というBさんの言葉を信じ、FXにも手を出しました。しかし……。

ちくしょう、だまされた!…“目覚めた”Aさんの致命的な失敗

最初のうちは順調に利益が出ていたものの、高い利回りを謳う銘柄には「リスク」がつきもの。新興国債券は含み損が膨らみ、Aさんは「聞いていた話と違う」と慌てて損切りしました。

また、FXについては「必ず儲かる」といわれて始めたにもかかわらず、ロスカットになってしまいました。グループのメンバーとも連絡が取れなくなり、その後も成績は振るわず、2,500万円あった退職金はどんどん目減りしていきます。

Aさんは、残っていた資金をFX口座から出金しようと手続きを行いましたが、いつまで経っても出金が完了しません。

「くそっ、退職金を受け取ってまだ1年も経っていないだぞ! これからどうすればいいんだ……ちくしょう、だまされた!」思わぬ老後破産危機に、Aさんは夜も眠れません。

「FX詐欺」に遭うシニア層が増えている

近年、さまざまなメディアで資産運用に関する情報が流れています。超高齢社会の日本においても、老後の生活に備えて資産運用を検討することはよいことでしょう。しかし、投資家人口の増加にともない、欲をかいて冷静な判断力を失い「大切な資産を溶かしてしまった」という悲劇も増えています。

特に、FX取引については注意が必要です。今回、AさんはSNS上の投資グループの人物に誘われるがままFX取引を始めてしまいましたが、シニア層がこうしたFX詐欺に遭うケースが増加しています。

実際、独立行政法人国民生活センターによると、2023年度における全国の消費生活センター等に寄せられたFX取引に関する相談件数は、前年度の同時期と比べて約1.5倍に増加。また契約者の年代別にみると、2020年度以降若干の増減はみられるものの、2020年度と比べて30歳代以下の割合が減った一方、50歳代以上の割合が増加しています。

さらに、日本弁護士連合会の報告によると、2020(令和2)年の破産事件は7万8,105件となっており、そのうち投資を原因とするものが1.53%ありました。

投資を始めるなら押さえておきたい「5つ」のポイント

リスクとリターンは比例します。お金が増えるからとハイリスクな金融用品に飛びつくと、Aさんのように老後破産危機に陥る危険性が高まります。

最悪の事態を回避するため、最低限、次の項目については注意しておきましょう。

〈投資を始める際に注意したいポイント〉  

  1. 商品の内容をしっかり確認する
  2. 投資信託は「交付目論見書」の内容を必ずチェックし、理解したうえで投資する
  3. 振込先に個人名義の口座を指定された場合、絶対に振り込まない
  4. 無登録業者との取引は行わない(金融庁のホームページで確認する)
  5. 仕組みのわからない商品に投資はしない

拭いきれない後悔…Aさんのこれから

Aさんは定年後わずか1年足らずで約1,500万円を失ってしまいました。お金が溶けるように無くなっていく感覚はトラウマになるほどゾッとするといいます。

「いま思えば、最初はあんなに慎重だったのに、どうしてこうなったんだろう。子どもたちには『お金は大切だ』と教えていたのに、自分は大切なお金をこんなにも軽々しく扱って……恥ずかしい。絶対儲かるなんて、そんなうまい話あるわけないのに」

深く反省したAさんは、まず家族に誠心誠意謝罪しました。妻はショックと驚きで寝込んでしまったものの、なんとか許してもらえたそうです。またAさんは「同じような被害者を増やさないように」と、自分の失敗談を積極的に話しました。

「そりゃあAさん、あんたが悪いわ」「賢いAさんがなんでそんな詐欺に引っかかるかね」などとお叱りを受けながら、冷静さを保つことの重要性を発信しているとのことでした。

退職金やボーナスでまとまったお金を手に入れると気持ちが大きくなりがちです。しかし、そんなときこそ冷静に、投資を始める場合もまずは少額から始めましょう。投資にはさまざまなリスクがあります。経験を積みながら分散投資をしつつ、徐々に投資額を増やすといいでしょう。

武田 拓也 株式会社FAMORE 代表取締役

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