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当時は「世帯年収2,000万円」職場結婚パワーカップルだったが…60代で「老後破産」。都営団地の抽選結果を粛々と待つ理由【CFPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月13日 10時45分

当時は「世帯年収2,000万円」職場結婚パワーカップルだったが…60代で「老後破産」。都営団地の抽選結果を粛々と待つ理由【CFPが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

出会いの場の多様化などの理由から近年減少傾向にある職場結婚。とはいえ、ひと昔前までは「お膳立て」があるなど、割と多いケースでした。職場結婚は共通の話題や価値観を持ちやすく、理解し合えるパートナーとして良い面も多くありますが、老後においては特有のリスクも……。本記事では、井田さん(仮名)の事例とともに、「実家」を火種とした相続トラブルについてFP相談ねっと・認定FPの小川洋平氏が解説します。

職場結婚、世帯年収2,000万円超の夫婦

井田義男さん(仮名/65歳男性)は都内で長年住んだマンションで妻の聖子さん(仮名/65歳)と暮らしています。井田さん夫婦は中堅の建築会社の営業職としてともに働いており、20代のころに職場で出会い結婚しました。2人とも営業成績は上位のほうで、現役のころの世帯年収は2,000万円を超え。

50代半ばで3人の子供たちは全員独立。夫婦は子育てから解放され、これまで子供たちの教育費等で支出を制限していた分、日々の生活で少しだけ贅沢を楽しむように。子供たちが独立したのにあまりお金が貯まらない状態ではありましたが、「2人分の退職金が入るし……」と楽観的に考えていました。

しかし、それから月日が流れて63歳の定年まであと1年とちょっとというタイミングで、大事件が起きてしまったのです。

勤務先の倒産

井田さん夫婦は60歳を過ぎたころには管理職になっていて、井田さんは営業マンのマネジメントを、聖子さんは不動産事業のマネージャーになっていました。

そんなある日、出勤すると会社のドアの前には社員が集まり、なにやら騒がしい様子でした。

「何事だ?」井田さんが集まっている社員に尋ねると、社員からは張り紙を見るようにいわれました。

すると、張り紙には「会社の倒産」という信じがたい言葉が……。その後、総務担当からこれまで働いた賃金を支払う旨と、失業給付についての説明があり、収入は減ってしまうものの定年退職までは失業給付を受けることができると知り、ひとまずは安堵。しかし、老後の資金にとアテにしていた退職金3,000万円は受け取れないことに。

急いで節約を試みるも、現役時代から続いた支出のペース、特に固定費を抑えることがなかなかできません。もともと2人で高い収入を得ていた時期ですら都内で子ども3人を大学まで学費を支払い続けてきたことから、ほとんど貯蓄ができない状態でした。失業給付を受けて収入が減ってしまうと状況はより深刻に。日々の支払いが足りないときには、クレジットカードの分割払いを多用するようになってしまったのです。

都営住宅に応募

そして、ついに限界を感じ、マンションを手放すことを検討し、いまは都営住宅に応募しています。マンションを売却できれば維持管理費等の固定支出が抑えられ、売却益を手に入れることが可能です。家賃の安い都営住宅に引っ越せば、売却益で蓄えもでき、多少なりとも生活は楽になります。

失業給付が終わり、夫婦2人で月額24万円程度にもなる年金を受け取っていても、井田さん夫婦にとっては到底足りるものではありません。夫婦ともに働きながら収入を得て、貯蓄もできないまま不安な老後の生活を送ることに。都営団地の抽選結果をいまかいまかと待っています。

職場結婚のリスク

今回の井田さんのように、倒産などの理由で退職金を受け取れなかったという事例は少なからずあります。倒産した場合に給与の優先順位は高く、これまで働いた賃金の分は優先的に守られます。しかし、退職金については優先順位は低く、もし倒産という事態になってしまうと受け取れないケースもあるのです。中小企業のいくつかのケースでは、今回のように業績不振を知らず、社員には一切伝えられないまま、朝出勤したら倒産していたなんてことも。

夫婦ともに同じ会社に勤めている場合、収入源がその会社に集中してしまいます。そのため、倒産に限らず、会社の業績悪化やリストラなどが起こると、夫婦同時に収入を失うリスクがあります。これは、片方が専業主婦(夫)の場合よりも、家計への打撃が大きくなる可能性もあるのです。退職金制度も同じ会社のものに依存するため、制度の変更や減額があった場合、老後資金計画に大きな影響が出ます。

井田さん夫婦はこうしたリスクを抱えていたにもかかわらず、現役時代に高い収入を得ていながら家計管理ができていませんでした。貯蓄がほとんどなかったことも大きな問題です。高い収入に甘んじて支出をコントロールできなかったがために、老後の生活が破綻してしまったのでしょう。

子供たちが独立し、お金が掛からなくなったあとは絶好の資産形成のタイミングです。当然、人生を充実させるために多少贅沢してこれまでできなかったことをするのもいいですが、将来自分たちの生活にどの程度資金が必要になるのかは、最低限のラインとしてしっかり認識する必要がありました。

いまの時代、勤務先の倒産という不慮の事態も考えられない話ではありません。2024年上半期に倒産した中小企業の数は、帝国データバンクの調査で4,990件。東京商工リサーチの月次データを見ても増加傾向にあることから、相当数の倒産が発生していると考えられます。退職金を老後の資金の柱としている人も多いでしょう。しかしそれだけでなく、しっかり資産形成を行い、公的年金の制度を活用しながら自分たちだけのマネープランを構築していきましょう。

不測の事態に直面しても老後破産は防げる

今回は、勤務先の倒産と家計管理の不備が重なり、老後破産に至ってしまった井田さんご夫婦の事例をご紹介しました。

日本弁護士連合会の2020年の調査によれば、破産債務者のうち60代が16.37%、70代以上が9.35%と、破産者の約25%が60歳以上というデータがあります。その多くは、支出管理の不徹底と将来設計の欠如が原因です。特に現役時代の収入が高いほど、支出も増加する傾向にあるため、老後、公的年金のみの収入になった際には注意が必要です。

勤務先の倒産という不測の事態に直面しても、適切な対応策を講じることで、老後破産を回避できる可能性があります。たとえば、定年後も働けるように就労期間を延長したり、老後も無理なく続けられる仕事を探したり、年金の繰下げ受給を検討するなど、状況に応じてマネープランを修正することが重要です。

ライフプランは、自分らしい人生を送るための設計図であり、マネープランはその実現を支える基盤です。早期にお金の見える化に取り組み、家計管理を習慣化し、将来を見据えたライフプランを構築していくことをお勧めします。

小川 洋平

FP相談ねっと

CFP

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