アパートから追い出されました…月収32万円“質素で堅実”だった33歳・都内在住の男性が「借金地獄」に陥ったまさかの理由【ルポ】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年2月10日 11時15分
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(※写真はイメージです/PIXTA)
ギャンブルとは無縁で、堅実な性格だった高野さん。しかし、ふとしたきっかけで競馬に手を出し、ビギナーズラックで大儲け。気づいたら、取り返しのつかない借金地獄に陥ってしまいました……。ルポライターである増田明利氏の著書『今日、借金を背負った 借金で人生が狂った11人の物語』(彩図社)より、「借金地獄」に陥った男性の実例をみていきましょう。
「質素で堅実」な性格だった高野さんが犯した“たった一度”のあやまち
高野厚志(33歳)
出身地/山梨県
現住所/東京都足立区
職業/会社員
収入/月収32万円
家賃/4万7000円
主な借金/消費者金融4社140万円、クレジットカードキャッシング枠30万円、デパートカードキャッシング枠30万円、銀行カードローン80万円、延滞利息など合計300万円
借金の残高/某銀行のおまとめローンに1本化し300万円+利息
月々の返済額/元利合計で12万円
「土曜、日曜にテレビやラジオ、スポーツ新聞などに触れないようにしようと思いまして。それなら短時間のアルバイトでもやってみようかと思ったわけです。働けばお金になるしそのお金で借金も返せますからね」
2018年1月からの1年5ヵ月の間で完全に休んだのは、食あたりで下痢と嘔吐が止まらなかった3日間だけで、大晦日も元旦も働いていたという高野さん。こうなったのは競馬にのめり込み、あちこちに借金を作ってしまったからだ。
「多額の借金を抱えている自分が言うのは憚られますが、社会人3年目頃までは地味に、質素にやっていたのですよ」
最初は“節度を持った推理ゲーム”の感覚だった
ギャンブルとは無縁でパチンコ、パチスロなどもやったことがない。麻雀は打ち方もルールも知らないほどだった。そんな堅実な性格だったのに、付き合いで嫌々やった初めてのレースで25倍超の高額配当を手にしたことで競馬中毒になってしまった。2年足らずの間に作った借金はざっと280万円。改めてギャンブルは怖いと思う。
「どういうわけか自分の部署の同僚や上司に競馬好きな人が多くいて、騎手のファンだという理由でたまに馬券を買っている女子社員もいました。自分は興味も関心もなく、周りの人たちの話に適当に相槌を打ったりしてました。はっきり言うと、馬鹿じゃないかと思っていた」
先輩社員に「お前も一丁どうだ」と誘われて初めて買ったのが14年3月の高松宮記念。本命、対抗なんて分からないから適当な数字の馬連馬券を買ったのだが、これがまさかの的中で2,860円という高配当だった。
高配当馬券を“当ててしまった”高野さんのその後
「1,000円買ったので配当は2万8,600円。これですっかりギャンブラー扱いされました。大きなレースの前になるとスポーツ新聞片手に、お前はどれを買うんだとか要注意はどの馬だなんて聞いてくるんです。こっちはまったく分からないから住んでいるアパートが3階の7号室なので3-7とか、実家の住所が6丁目13番地だったので馬連で6-13なんて適当に話していたんです」
こんないい加減な予想なのに3回に1回くらいの割合で的中し、15~20倍の高配当がついた。儲かった先輩からお昼に鰻を奢ってもらったこともある。
「こんな簡単に儲けられるのなら自分でやったらいいじゃんと思っちゃうわけです。中央競馬会のCMなんか若い人気俳優を起用したりしていて、競馬=ギャンブルという印象も薄くなっていたし。節度を持って推理ゲームをするという感覚で自分も馬券を買うようになってしまいました」
当初はやっても月に1、2回。馬券は1レース500円までというようにブレーキが利いていた。ひとつのレースで買うのは100円の馬券を3~5通り。全部外れることもあったが、たまに当たって6、7倍の配当。こんな感じで遊びの範疇だった。
1万円が45万円に…たがが外れ、遊びが遊びでなくなった
たがが外れたのは15年5月のヴィクトリアマイル。この日はついていて新馬戦から始めて4R、5R、7R、9Rとすべて当てていた。どのレースも複数の馬券を買っていたが、当たった馬券の配当が10倍、15倍ということもあって収支は大きなプラスだった。
「3万円と少々の小銭を持って家を出たのですが、9Rが終わったときは10万円以上になっていました」
なぜだか気分が大きくなり、儲けた金から5万円を分散してメインレースに投入してしまった。
「専門紙に波乱があるとすればこれという組み合わせが出ていて。面白そうだと思いその馬券を1万円買ったんです。それが来ちゃいましてね」
馬連で買った当たり馬券の配当が4,510円。1万円分注ぎ込んだから手にしたお金は約45万円。もう舞い上がってしまった。
「最終の12Rに買った数通りの馬券にも当たりがあったので、競馬場を出たときには財布の中に50万円あまりの現金が入っていた。もう家までタクシーで帰りましたよ」
負け続けても辞められない…競馬にハマる恐ろしい“メカニズム”
翌週、翌々週のレースもやってみたらこれも収支はプラス。これで一気に熱くなってしまった。
「まず、ひとつのレースに注ぎ込むお金が増えました。以前は予想紙に順当とか本線不動と書いてある確率の高そうな馬券を中心に買っていたのですが、中穴、大穴狙いの馬券を買うようになった」
当たったときに配当が高い3連単、3連複にもかなり注ぎ込むようになり、ひとつのレースに1万円、1万5,000円も費やすこともあった。
「たまに当たることもあったけど大半は負けでしたね。1開催で収支がプラスになることは5回に1回ぐらいだった」
一時は「こりゃ駄目だ」と馬券買いを控えていたが長続きしない。
「馬券は買わなかったけど自分が予想した組み合わせが当たって、それが万馬券だったりしたら大損した気分になってしまうんです」
我慢できたのは2ヵ月間だけ。あとは破綻へ一直線だった。
「ひとつのレースで買う点数や賭ける金額がどんどん大きくなってしまった」
全部外れれば目が覚めるのだが、何回かのうちには当たることもある。これがあるから止められない。
「それまで10万円以上も負けていたのに最終レースで買った1点が15万円になったということもあって。これでまた風が吹いてきたなんて思っちゃうんです」
こうなると、今日は負けたけど明日は取り戻そうということになり、土日は競馬三昧という生活に陥ってしまった。地方競馬は荒れるという話を信じて大井、浦和まで遠征して万馬券狙いをしてみたこともあるが、大儲けしたことは皆無。お金をばら撒いているだけだった。
「手取りの給料の半分が2週間で消えちゃったこともあった。コツコツ貯めた預貯金も8ヵ月間ぐらいでほとんど無くなっていました。それでも止められなかった」
次の給料が振り込まれるのは10日も先なのに財布の中には1万円もない。朝食は100円ローソンで売っている5個100円のミニあんパン。昼は給料から天引きされる社食を食べられるが、夜はインスタントラーメンやご飯にマーガリンとお醤油を垂らしたものですませる。体重は減るし、周囲が黄色っぽく見えることもあった。こうなるともう借金するしかない。
「家賃の引き落としが危なくなって消費者金融で用立てたのが借金地獄の入口でした」
「質素で堅実」だったが…初めて借金した際の“意外な感想”
無駄遣いとは無縁だった人が消費者金融通い。さぞかし恥ずかしかっただろうと思うが本人は何も感じなくなっていた。
「生活費の補填のため、競馬の軍資金のため、前に借りた消費者金融へ返済するため。雪だるま式に増えてしまいました」
利息分だけ払っていたところもあったが、それもできなくなる。
「入金が1日遅れただけで会社に督促の電話をしてくる金融屋もあった」
こういう場合は架空の会社名を名乗り、高野さんが電話口に出ると「早く入金しろ」と迫ってくる。友だちと名乗って電話してくる業者もいた。
「アパートの方にも郵便で督促状が送られてきました。延滞利息が付くぞ。遅延損害金を加算する。この日までに入金がない場合は給料の一部を差し押さえる。こういう感じでプレッシャーを掛けてくるんです」
早朝、深夜の取り立ては法律で禁止されているが、電報を送りつけてきたり、相談と称して電話してくる業者もあったそうだ。
「こうなるともう頭がおかしくなっちゃうんです。クレジットカードで新幹線の回数券を買い、それを金券屋に持ち込んで換金する。そのお金を持って馬券売り場へ行く。大穴を当てれば返せるなんて馬鹿げたことしか思い浮かばなくなって。それが3分ほどで紙屑になる。こんな状態だった」
結局、2年半ほどの期間に消費者金融4社、クレジット会社、デパート系のカード、銀行のカードローンなどから借入れた合計は約280万円。
「最後はアパートの家賃も引き落とせなくなって。管理会社から、どうなっているんだ! 何日後までに必ず入金しろと矢のような催促が来た」
家賃の滞納が2ヵ月分になったところで連帯保証人になっている父親のところへ督促が行き、借金まみれになっていることが知られてしまった。
「何をやっているんだ、馬鹿タレと怒られた。自分でも情けなくて涙が滲んできました」
競馬なんてどうでもいい、とにかく返済をしなければと我に返ったが、借金総額は、延滞利息などが加算されたものもあってほぼ300万円。目眩がしそうな金額だ。
「金利は平均すると15%ぐらいです。銀行の大口定期が米粒くらいの金利なんだからべら棒だと思う。だけどそれを承知で借りたのは自分なのだから仕方ない」
「約300万円の借金を背負った人」の生活とは
2018年1月からはひたすら借金を返す生活。
「毎月、どこにいくら返すか。ちゃんと入金したか。返し忘れはないか。こういうことで忙殺されるのは辛いので○○銀行のおまとめローンというものに借り換えて、今はそこへ毎月返済しています」
借入れ期間が長くなればそれだけ利息が派生するのだから、できるだけ早く完済したい。
「何とか3年で完済するのが目標なので、毎月の返済額は12万円です」
このペースで返し続けても返済総額は420万円以上になるのだから頭が痛くなる。
「借金を作って失ったのは精神的な健康と社会的信用ですね。借金額が200万円を超えたときから、今日だけでこれだけの利息が付くのかと暗澹(あんたん)たる思いで過ごしていました」
返済のことを考えると食べ物も喉を通らなかったし眠れないこともあった。
「家賃滞納2ヵ月という事故を起こしているので、住んでいたアパートからも追い出されてしまいました」
2年の契約が終了する4ヵ月前に管理会社から更新は不可、契約満了日の2週間前までに完全退去しろという通告が来た。固定費を抑えるために家賃相場が安い23区最北端の足立区に転居した。
「何が何でも借金を返さないと。今はそれしか考えていない。だから生活はキツいです」
「奨学金返済のため」と偽って、土日はアルバイトで生活費を補填
給料の手取りは24万円前後。家賃と管理費で6万4,000円、水道光熱費と通信費が2万円。借金返済は12万円なので残るのは3万6,000円ほど。これで食費、医療費、被服費、保険などを賄うのは土台無理な話。だから土日にアルバイトをしているわけだ。
土日のアルバイトは生活費の補填が目的だが、競馬を断つためという意味もある。
「土日はラジオ日本とテレビ東京、フジテレビで競馬中継をやっているんです。もう競馬は懲り懲りだけど変な虫が湧かないとも限らない。土日も働いていれば触れなくて済むと思うので」
アルバイトは宅配寿司店のデリバリー。三輪スクーターであちこちに出前するのが仕事。時給は1,000円。勤務時間は正午から夕方5時までなので帰宅するのは5時半頃。この時間なら最終レースも終わっているので競馬のことは考えない。
「身体の方は今のところ大丈夫みたいです。金曜日は早寝してアルバイトに行く1時間前まで寝ています。日曜日も同じ。疲れるなんて暢気なこと言っていられないですから」
会社は特別な事情があり、業務に関係しないものであれば副業を認めているので奨学金返済のためと偽って許可をもらった。
「競馬で作った借金を返すためなんて言えないでしょ。上司は大変だなあと同情してくれていますよ」
アルバイトの収入は4週8回やって3万2,000円。祝日のある月は追加で働いているから4万円ということもある。この副収入があるから多額の借金返済をしながらも人並みに暮らせているわけだ。
「今は競馬とはまったく無縁です。絶対に首を突っ込まないようにしています」
“競馬を楽しもう”…CMを目にした高野さんの「率直な思い」
会社にはお遊び程度で競馬をやっている人が何人かおり、大きなレースの前にはスポーツ新聞を見ながらああだこうだと話しているが、そういう話題には入らないように気を付けている。
テレビのバラエティー番組に人気ジョッキーが出ていたり、夜のスポーツニュースで明日は天皇賞、菊花賞という話題になったらチャンネルを変えるか、テレビの電源を切るかして目に入ってこないようにしている。
「つい先日も平成時代を回顧するみたいな番組があって、その中でオグリキャップの出現で競馬はギャンブルからスポーツに昇華したみたいなことを話していたんです。それは違うだろと思った。お金を賭けるわけだから博打だよ」
重賞レースが近付くと中央競馬会がテレビCMを流し、競馬を楽しもうなんて言っているが「ふざけるなよ、馬鹿」と思う。
「正社員で働いているから少ないけど賞与は出ます。去年夏の賞与は滞納した家賃を肩代わりしてくれた父への弁済と、今のアパートへの引っ越し代でほとんど使ってしまいました。副業の収入を生活費の足しにすれば十分なので、去年の暮れは賞与もほぼ全額繰り上げ返済に回しました」
しかし、順調に返済したとしても総額は430万円以上になる計算、とんでもない無駄金だと思う。
「もし、同じ額を貯金していたらなと想像してしまいますね。将来マンションを買うことになったら頭金としては十分な金額だ。資格取得のための学費に充ててもいい。老後に備えて個人年金に加入するのもありだな……。こんな風に考えちゃいますよ」
これまでに返済したのは19回分で228万円。ようやく半分返したところだが、まだ17回、204万円の借金を抱えている。
「競馬は勝っても負けても泥沼に落ちる可能性が高いと思います。勝っているときはもっと勝ちたいとお金を注ぎ込みますし、負けているときは取り返したいとオッズの高い馬券を買うようになるから」
今になって分かったのは、苦しい思いや後悔、不愉快な緊張感をお金で買っていたということ。いかに愚かだったかと反省しても費やしたお金と時間は戻ってこない。
増田 明利 ルポライター
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